抗インフルエンザ薬の異常行動に関する注意改訂に対する対応

抗インフルエンザ薬の異常行動に関する注意改訂に対する対応
今回は2018年8月に抗インフルエンザ薬の異常行動に関する添付文書の記載が一斉に改訂され、全ての抗インフルエンザ薬の記載が統一されたことの内容とその対応についてまとめました。

主な内容は下記の4点となります。

1.タミフルの警告が削除
2.転落等の事故に対する防止対策を講じることの説明が明記された
3.未成年以外にも異常行動に関する説明が必要となった
4.「治療開始後少なくとも2日間、小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること」の記載の削除

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1.タミフルの警告が削除

従来では警告の項目に10歳以上の未成年の患者においては、原則として本剤の使用を差し控える旨などの記載がされていましたが、これが削除となりました。

インフルエンザ罹患時には、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類に関わらず異常行動が発現することが確認されたため、各製剤共通で異常行動に関する注意喚起を継続して実施することが適切と結論付けられ、これに伴い、「警告」が削除となり、「重要な基本的注意」に各製剤共通の注意事項が記載されました。

<重要な基本的注意>(各製剤共通)
抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。

異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、
①異常行動の発現のおそれがあること、
②自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。

なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。

2.転落等の事故に対する防止対策を講じることの説明が明記された

この内容は前年11月に厚生労働省から通知された内容(転落等の事故に対する具体的な防止対策を説明すること)が添付文書に反映されたかたちになるかと思います。

服薬指導時に指導せんを用いて、異常行動および転落等の事故に対する具体的な防止対策を説明します。

抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する注意喚起の徹底について
11月27日に、厚生労働省から抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する注意喚起の徹底について通知がされました。 これにより、従来の「少なくとも2日間は、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することを原則とする旨の説明」に...

3.未成年以外にも異常行動に関する説明が必要となった

異常行動に関する注意説明の記載が従来では「小児・未成年者については」という記載がされていましたが、この部分が削除になりました。

これに伴いすべての年齢で転落等防止対策を含む異常行動に関する説明が必要となりました。

この点はあまりアナウンスされていませんが、タミフル、イナビル、リレンザの製薬会社に確認したところ異常行動は成人でも起こることはあるのですべての年齢で説明が必要とのことでした。

異常行動の指導せんの改訂対応状況

上記の改訂により、「異常行動と転落等防止対策について」の指導せんが改訂になります。

従来では、異常行動に関する指導せんは「小児・未成年者は」という限定された記載がされていましたが、この部分が成人にも対応できるように改訂となります。

2018.11月現在でタミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザともに改訂されました。そのため、改訂版の指導せんを取り寄せて、古いものと差し替えたほうがよいでしょう。

ただし、このうちゾフルーザの指導せんだけは、内容は改訂されたもののタイトル部分がいまだに「ゾフルーザを処方された患者さんの保護者の方に知っていただきたいこと」、と小児限定の記載となっており、タイトルの改訂がもれたようです。

製薬会社には連絡したので、再度タイトル部分が改訂されるかと思います。

4.「治療開始後少なくとも2日間、小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること」の記載の削除

今回の改訂で従来記載のあった「治療開始後少なくとも2日間、小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること」の記載が「少なくとも発熱から2日間、転落等の事故に対する防止対策を講じること」に変更となっています。

では、今後は「治療開始後少なくとも2日間、小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること」の説明は不要なのかいくつかの製薬会社に確認したところ製薬会社により見解が分かれました。

<リレンザの製薬会社>
改訂後の記載の「転落等の事故に対する防止対策」に従来の「小児・未成年者が一人にならないよう配慮する」対応も含まれるという見解

<イナビルの製薬会社>
「小児・未成年者が一人にならないよう配慮する」というのは具体的な防止対策ではないので、「玄関及び全ての窓の施錠を確実に行うこと」や「 ベランダに面していない部屋で療養を行わせること」などの具体的な対策を優先して説明するのがよいという見解

薬剤師としての対応

個人的には「小児・未成年者が一人にならないよう配慮する」内容は「転落等の事故に対する防止対策」に含まれるという、リレンザの製薬会社の見解が適切かと思います。

そのため、「小児・未成年者が一人にならないよう配慮する」説明は従来どおり行うのがよいかと思います。

抗インフルエンザ薬に関連する記事

下記は抗インフルエンザ薬に関連する記事となります。確認の意味で一読しておくとよいかと思います。

特にタミフルドライシロップの用量が乳児(1歳未満)かどうかで用量(mg/kg)が異なることやイナビル・リレンザの乳製品アレルギー患者へ対応などは近年改訂された内容であり見落とし勝ちであるため注意が必要です。

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