ロコアテープの服薬指導

ロコアテープ
今回は2016年1月に発売された新薬であるロコアテープの服薬指導をまとめました。貼付剤でありながら経口NSAIDと同じような禁忌や相互作用を有するため、非常に注意が必要な薬剤です。

ロコアテープは基剤を工夫することによって経皮吸収性を高め、より標的組織への移行性を高めた変形性関節症における鎮痛・消炎を効能とするNSAIDsテープ剤です。

経皮吸収性が高く2枚貼付時の全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達することから、1日に貼付可能な枚数が2枚までと明記されています。

このことから貼付剤でありながら経口NSAIDと同じような扱い(禁忌や相互作用等)となることが最大の特徴でしょう。 これはロコアテープの添付文書がフルルビプロフェン経口剤の添付文書を参考に作成されているためです。

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ロコアテープの概要

服薬指導難度

効能

変形性関節症における鎮痛・消炎

用法・用量

1日1回患部に貼付する。同時に2枚を超えて貼付しないこと。

名前の由来

変形性関節症(OA)患者のQOLを向上させたいという願いを込めQOLとOAを組み合わせたアナグラムとしてLOQOAと命名されています。

医療事故に注意

個人的には医療事故のもととなると懸念している製剤の一つです。

というのも、潰瘍を診断した医師や服薬指導の際に潰瘍であることを聴取した薬剤師が患者から「名前がわからないが痛みどめのシップを使っている」と言われた際に貼り薬なら問題ないだろうと患者に対して伝えることがあると思います。

従来であれば問題ないのですが、これがロコアテープである場合は禁忌を見過ごすこととなってしまいます(今後このような事例が実際にでてくると想定されます)。今後はこのような場合に名前不明の貼り薬の併用がある時はロコアテープではないことを確認する必要があります。

なお、名前不明の消炎鎮痛剤の貼り薬がある場合の具体的な対応に関しては下記をご参照ください。

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ロコアテープの服薬指導で確認すること

内服NSAIDと同様の確認が必要です。

①消化性潰瘍の有無【禁忌】

貼付剤のNSAIDでありながら潰瘍が禁忌となるため、上述したようにこの製剤を知らない医師や薬剤師が見落としやすい禁忌となります。後述してますが潰瘍の有無の確認だけでなく、今後潰瘍となった場合のことも想定して、潰瘍の場合には使えないことを患者に説明します。

②喘息の有無【アスピリン喘息禁忌】

アスピリン喘息禁忌に関しては他のNSAID貼付剤と同様の記載となります。

アスピリン喘息の場合は禁忌となるので、喘息がある場合にはアスピリン喘息でないかを確認する必要があります。

なお、アスピリン喘息を否定する場合は、必ず「喘息発症後」のロキソニンやボルタレンなどの「アスピリン喘息誘発性の強い解熱鎮痛薬」の服用歴と副作用の有無を聴取します。

カロナールやCOX2選択性の薬剤、PL顆粒などは誘発性が弱いため、副作用なしに服用できてもアスピリン喘息を否定できないため注意が必要です。

具体的な対応については下記の記事を参照下さい。

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③妊娠の有無【妊娠後期禁忌】

妊娠後期のラットに投与した試験で母動物の死亡、分娩遅延、出生率の低下及び死産児数の増加が認められたこと、フルルビプロフェンを妊娠後期のラットに投与した実験で、胎児の動脈管収縮が高度であったと報告されていることから設定されています。

なお、外用剤のなかではモーラスも妊娠後期が禁忌となります。

④肝障害・腎障害・血液異常・心不全・高血圧【重篤な場合禁忌】

いずれも重篤な場合が禁忌となります(何を持って重篤とするかは記載がないため非常に抽象的な表現です)。全ての患者に対してこれら5つを聞くかどうかは判断が分かれるところです。

というのも、「重篤」な場合は多くの場合併用薬として使用している薬剤から各疾患を疑うことができるため、併用薬を聞くことで事足りるという考え方もあります。

⑤併用薬の有無【併用禁忌】

併用により痙攣を起こす可能性があるため一部のニューキノロン系抗菌剤が併用禁忌となります。

具体にはエノキサシン、 ロメバクト・バレオン(ロメフロキサシン)、バクシダール(ノルフロキサシン)、スオード(プルリフロキサシン)の4種類が併用禁忌となりますが、エノキサシンはすでに販売中止となっているため実際には3種類となります。

また、その他のニューキノロンも 重要な基本的注意には「他のニューキノロンとの併用は避けることが望ましい」とされており併用注意となります。

⑥併用薬の有無【併用注意】

ロコアテープは外用剤ですが内服のNSAIDと同様の相互作用を起こすおそれがあるため、多くの内服NSAIDと同様にリチウム・ワーファリン・メトトレキサートの併用が併用注意となっています。これらの併用がある場合には再度これらの薬剤の副作用の説明を行ったほうがよいかと思います。

リチウムはリチウム中毒の症状・ワーファリンは出血(消化管・脳出血など)・メトトレキサートは多岐にわたるため指導せんを使うのが現実的でしょう。

なお、メトトレキサートの服薬指導に関しては下記をご参照ください。

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⑦NSAID内服の併用の有無【用法及び用量に関連する使用上の注意】

ロコアテープの添付文書では「ロコアテープ使用時は他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けることとし、やむを得ず併用する場合には必要最小限の使用にとどめ患者の状態に十分注意すること」と記載があります。

そのため、内服NSAIDの併用がある場合には疑義照会対象となります。この場合は、内服NSAIDが短期処方か長期処方かも踏まえて問い合わせしたほうがよいでしょう。(短期処方であれば内服終了後ロコアテープ開始の選択肢があります)

ロコアテープの服薬指導で伝えること

①貼付枚数の説明

1日の貼付枚数を医師から指示されているかを患者より聴取し、指示があればその枚数を守ることを、指示がなければ2枚までであることを説明します。

②潰瘍禁忌の説明・他科受診時の説明

上述したように潰瘍禁忌であることは見過ごされやすいため、今後潰瘍と診断された際は使えないことを説明します。

また、貼り薬だが飲み合わせの悪いものがあることを説明し他科受診時には必ず伝えることを指導します。

③過度の体温下降の説明

過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等があらわれるおそれがあるので、特に高熱を伴う高齢者又は消耗性疾患の患者においては投与後の患者の状態に十分注意すること。と記載されています。

万一過度の体温低下、手足が冷たくなるなどの症状があらわれる場合は受診するように説明します。

④皮膚症状の説明

「ロコアテープの貼付により皮膚症状が発現した場合には、休薬又は中止するなど症状に応じて適切な処置を行うこと」と添付文書に記載されています。

そのため、かぶれてしまうなど肌に合わない場合は受診することを説明します。

これはロコアテープの臨床試験でにおいて、適用部位皮膚炎(8.0%)、適用部位紅斑(3.2%)、適用部位湿疹(2.3%)が発現しており、皮膚症状の発現には十分に注意する必要があることから設定されています。

⑤貼付部位【適用上の注意】

損傷皮膚や湿疹に使用しないことを説明します。また剥離する際は皮膚の損傷を避けるため、ゆっくりと剥がすことを説明します。

ロコアテープの薬歴例

S)ひざに使う。1日2枚までと聞いてる。
O)併用なし。潰瘍・喘息なし。妊娠なし(女性の場合)
A)貼付枚数を守ること説明。潰瘍の場合使えないこと説明。他科受診時には伝えること説明。
万一過度の体温低下、手足が冷たくなるなどでる際は受診指示。

かぶれてしまう場合は受診指示。損傷皮膚や湿疹に使用しないことを説明。剥離する際はゆっくりと剥がすこと説明。

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