今回は新卒の薬剤師に伝えておきたい「ミスに対しての認識と心構え」をまとめました。あくまで個人的な考えとなりますが、私自身が新卒の薬剤師の指導の際に話している内容となります。
ミスに対しての認識と心構え
①新人薬剤師でも責任が問われる
薬剤師経験が浅いうちはミスがどうしても出てしまうものと甘えがちですが、薬剤師免許証の登録が済んでかつ保険薬剤師の登録が済んでからは一人前の薬剤師としての責任が生じます。
何かミスがあった際には上司が対応を手伝うことはできますが、ミスそのもので生じた健康被害などについては薬剤師の免許証をもつ以上は経験年数に関わらずミスをした薬剤師の責任が問われるということです。
新卒の時期は薬剤師人生の中で知識や技術的な面だけでなく、薬剤師としての意識的な面でも最も無防備な時期であることを認識する必要があります。
②服薬指導の際の説明不足や確認不足も責任が問われる
薬剤師のミスというと調剤や監査でのミスだけだと思われがちですが、服薬指導での禁忌などの確認不足、伝えることの説明不足も含まれます。
禁忌の確認不足の例
例えばロキソニンの服薬指導の際に「潰瘍でないことを患者から聴取せずに患者に渡してしまい、実は潰瘍を持っていて消化管出血を起こした」といった事例では訴えられると負ける可能性があります。
伝えることの説明不足の例
例えばブスコパンやメジコンの服薬指導の際に運転を避けることを伝え忘れてしまい、患者が運転事故を起こした場合なども「説明不足」ということで訴えられると負ける可能性が高いと思います。
③薬歴を書く目的
薬歴を書く目的は指導の内容を記載し次回に活かすとか外部監査で突っ込まれないためなどいくつか挙げることができます。
これらに加え、私は服薬指導の際に確認及び伝えたことを記載(記録)し、訴えられた際に自分の服薬指導に落ち度がなかったことを証明するために記載しています。
服薬指導でしっかり確認・説明をしていても薬歴に記載していないことは確認・説明していないとみなされます。
そのため、「○○を記載していないと万一訴えられられた際に弱みになる」といった視点で穴のないように記載します。
④想定していないミスは防げない
想定していない種類のミスは気付くことが難しいためどういった種類のミスが起こりうるかをあらかじめ想定しておく必要があります。
さらに言うと想定しておくだけでは不十分で、それを防止する具体的な手順を自分なりに考えて組み込むことが重要となります。
具体的な防止手順
例えばリンデロンVG軟膏とリンデロンV軟膏の取り違えを防ぎたい場合を考えます。
防止策として「意識して監査する」という抽象的なものよりも、投薬時の現物確認で口頭で下記の内容を声に出して確認しする手順を加えます。
VG軟膏:「このオレンジ色のキャップのものがリンデロンVG軟膏という薬で」
v軟膏:「この青色のキャップのものがリンデロンV軟膏という薬で」
自分が間違えたくない内容や想定されるミスに対して、このような具体的な手順考えて加える癖をつけることでより確実にミスを防ぐことができます。
⑤情報が誤っていた場合の責任
何か迷った際には上司などからアドバイスや指示を受けることはできますが、最終的にどう行動するかとその結果の責任は自分自身となります。
もしも、上司や周りの薬剤師から教えてもらった情報が誤っていた場合でも、それを鵜呑みにした自分自身に責任が生じます。
引用元の確認
そのため、自分以外の周りの情報(書籍やインターネットなども含む)・意見・指示は自分が判断・決断するための参考情報として考える必要があります。
他の薬剤師からの口頭での情報やインターネットで入手した情報は誤っている場合もあるため、言われた情報を鵜呑みにするのではなく情報のソースとなった原文を自分の目で確認する必要があります。
まとめ
「懐疑的」や「怖がり」といった言葉はあまり印象がよくありませんが、こと薬剤師の業務に関してはむしろ必要な要素となります。
びくびくしながら仕事をしろと言うわけではないですが、訴えられないように怖がる意識を持って業務にあたるほうが結果として穴のない調剤や服薬指導ができると思います。
コメント