NSAIDの服薬指導では患者に対して潰瘍やアスピリン喘息をもっていないことを確認する必要があります。今回はアスピリン喘息を持っていないことの確認方法をまとめました。
NSAIDはスルガムなどの一部の薬剤を除き喘息自体が禁忌というわけではないですが、禁忌であるアスピリン喘息を否定するために喘息の有無を聴取します。喘息の有無により以下のように対応を分けて考えました。
喘息がない場合の対応
喘息がない場合はアスピリン喘息もないと判断できます。薬歴に「喘息なし」と記載します。実際には同時に潰瘍もないことを確認する場合がほとんどなので「潰瘍・喘息なし」などと記載します。
喘息がある場合
喘息がある場合は喘息発症後のNSAIDの服用歴を聴取します。アスピリン喘息はほとんどの場合「喘息発症後」に発症するため、「喘息発症前」に安全に服用できていてもアスピリン喘息を否定することはできません。そのため、必ず「喘息発症後」のNSAID服用歴を聴取します。
また、アスピリン喘息を否定するために聴取する薬剤としてカロナールやNSAIDのセレコックスなどの発作誘発作用が弱い薬剤は安全に服用できていてもアスピリン喘息を否定することはできないため、ロキソニン、ボルタレン、ブルフェンなどのNSAIDの服用歴を聴取します。
以上を踏まえて喘息がある場合の対応は以下に分けて考えることができます。
①喘息発症後にNSAIDを安全に服用できている場合
この場合はアスピリン喘息を否定してもよいかと思います。薬歴に残す場合は「喘息発症後のロキソニン服用で喘息誘発なし」などと記載するとよいかと思います。
②喘息発症後のNSAIDの服用がない場合(喘息が軽い場合)
アスピリン喘息を否定も肯定もできない状態です。この場合は喘息の併用薬が少ないなど喘息が軽度であれば患者に注意促した上で薬を受け渡すのが現実的な対応かと思います。
個人的な指導例ですが、私は「重い喘息の方の一部に解熱鎮痛剤で喘息発作が誘発されてしまう体質の方がいるため、万一初回服用時に数時間で激しい鼻症状や喘息症状が出てくる際はすぐ受診すること」等と説明しています。
③喘息発症後のNSAIDの服用がない場合(喘息が重い場合)
喘息治療剤の併用薬剤数が多く症状が重いと判断できる場合は鼻ポリープや嗅覚の低下を聴取し、該当する場合はアスピリン喘息である可能性が上述の例よりも高まります。
場合によっては発作誘発性の低い代替薬があれば疑義照会し変更を提案することも検討します。(アスピリン喘息に比較的安全に使うことができる薬剤については後述を参照)
この場合の疑義紹介例は以下のようになるかと思います。
「今回ロキソニンが処方されてますが、患者は重い喘息でまた、鼻ポリープも持っているとのことです。今までこの患者はこういった解熱鎮痛剤を飲んだことがないので合う合わないは分からないのですが、一般的に重い喘息で鼻ポリープをもつ場合はアスピリン喘息の可能性もあるので、アスピリン喘息の場合でも比較的安全に使えるカロナールなどに変更する方法もあるので確認をと思いまして」
アスピリン喘息に使える解熱鎮痛剤
アスピリン喘息に使用することのできる解熱鎮痛剤は多くありません。代替を提案する際には解熱目的なのか鎮痛目的なのかで代替薬が異なるため、どちらの用途で使うかを患者からはっきり聴取してから疑義照会する必要があります。
アスピリン喘息に使える解熱剤
医療用医薬品としてアスピリン喘息に対して禁忌でない解熱剤はありません。そのため、原則として熱は薬剤は使わずに氷で冷やす対応となります。どうしても薬剤を使う場合は禁忌ではあるものの、アスピリン喘息に比較的安全に使うことができるカロナール(1回300mg以下)が選択肢としてあげられます。
なお、一般用医薬品として生薬の地竜製剤であれば解熱の効能でアスピリン喘息に禁忌でない薬剤となります。
アスピリン喘息に使える鎮痛剤
鎮痛の場合にはさらにどの領域(歯痛、腰痛など)の痛みであるかという点と、消炎作用も必要かという点で薬剤が異なるため、これら患者からはっきり聴取してから疑義照会する必要があります。
鎮痛でアスピリン喘息に対して禁忌でない薬剤としてはペントイル、キョーリンAP2、漢方の立効散、ノイロトロピンなどがありますが、どの領域の痛みに対して効能があるかはそれぞれ異なります。
また、アスピリン喘息に禁忌でない外用薬としてMS温(または冷)シップがあります。
なお、禁忌ではあるもののカロナール(1回300mg以下)やセレコックス、ソランタールなどの薬剤も比較的安全に使うことができるとされていますが、アスピリン喘息と判明している場合に疑義照会して代替を提案する際は禁忌でない薬剤を優先して提案するほうが良いと思います。
ペントイル
腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症、会陰裂傷、外傷などの消炎・鎮痛に効能があります。
キョーリンAP2
は腰痛症、症候性神経痛、頭痛、月経痛、炎症による咽頭痛・耳痛、歯痛、術後疼痛に効能があります。ペントイルに比べ頭痛、喉痛、歯痛にも効能があります。
立効散
抜歯後の疼痛、歯痛といった歯科領域のみ効能があります。
ノイロトロピン
帯状疱疹後神経痛、腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症に効能があります。
MSシップ
捻挫、打撲、筋肉痛、関節痛、骨折痛の消炎・鎮痛に効能があります。
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