スインプロイクの服薬指導

スインプロイクの服薬指導
今回は2017年6月に発売された「オピオイド誘発性便秘症」を効能とする新薬であるスインプロイク(ナルデメジン)錠の服薬指導をまとめました。

スインプロイクは「消化管穿孔」や「オピオイド離脱症候群」に注意が必要な薬剤です。

また、消化管閉塞(疑い含む)だけでなく、「消化管閉塞の既往歴を有し再発のおそれの高い患者」も禁忌となる珍しい薬剤です。

スポンサーリンク

スインプロイクの特徴

スインプロイク錠は,国内初の末梢性μオピオイド受容体拮抗薬です。

オピオイド鎮痛薬の投与量にかかわらず,オピオイド誘発性便秘を改善したとされています。また、オピオイド鎮痛薬の鎮痛作用に影響する可能性は低いとされています。

スインプロイク(ナルデメジン)の概要

服薬指導難度

効能

オピオイド誘発性便秘症

用法・用量

通常,成人にはナルデメジンとして 1 回 0.2mgを1日1 回経口投与する。

名前の由来

Control Symptoms of OIC(OIC:オピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation))が名前の由来となります。

指導せん

「スインプロイク錠で便秘の治療をお受けになるみなさまへ」という冊子タイプの指導せんと、「スインプロイク錠を服用される患者さんへ」という綴りタイプの指導箋が存在します。

指導せんにも関わらず、重要な基本的注意の項目の「消化管穿孔」と「オピオイド離脱症候群」の内容が記載されておらず、内容としては不十分な印象があります。

記載内容について

指導せんには「お薬をかみ砕いたり,割ったりしないでください」と記載がありますが、製薬会社に確認したところこれは特にスインプロイクが特殊なコーティングをされているわけではなく、錠剤全般の一般的な説明のようです。

また、「オピオイド鎮痛薬による治療を受けている間は,毎日服用を続けてください。」、「このお薬を服用すると,下痢になることがあります。徐々に回復する場合が多いですが,症状がひどいときや,よくならないときは,医師・薬剤師・看護師にご相談ください。」と記載があります。

製薬会社に記載意図を確認したところ、これは「便秘が改善しても継続する」、という意味合いであり、また、「軽い下痢であれば飲んでるうちに回復することが多いため、少しゆるいくらいであれば継続して服用し、続いたり程度がひどい場合は医師に相談する」という意味合いのようです。

また、指導用冊子にのみ(綴りタイプには記載が無い)、その他の副作用である「下痢、腹痛,吐き気,食欲減退、だるさ」の記載があります。

スインプロイクの服薬指導で確認すること

①消化管閉塞の既往の有無【禁忌】

消化管閉塞若しくはその疑いのある患者,又は消化管閉塞の既往歴を有し再発のおそれの高い患者は消化管穿孔を起こすおそれがあるため禁忌となります。

消化管閉塞(疑い含む)だけでなく、「消化管閉塞の既往歴を有し再発のおそれの高い患者」も禁忌となる珍しい薬剤です。

そのため、今まで胃や腸の閉塞を起こしたことがあるかを確認します。

既往があった場合でかつ、再発のおそれの高い場合は禁忌となりますが、「再発のおそれの高い」かどうかは明確な指標がないため、薬局では把握することはできません。結局のところ「再発のおそれが高い」かどうかは医師の判断となってしまいます。

そのため、既往に該当する場合に疑義照会すべきか判断するのが難しく、どういった場合に疑義照会するかは個々の薬剤師が考えておく必要があるかと思います。

個人的には少なくとも下記のケースでは疑義照会したほうがよいかと思います。
1.閉塞の既往を医師に伝えていない
2.複数回の閉塞歴
3.閉塞予防で大建中湯などを服用している

<インタビューフォーム>
承認時までの国内及び海外における臨床試験では,消化管穿孔は報告されていない。しかし,海外で発売されている末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(国内未承認)の投与により,消化管穿孔が発現したとの報告がある。

また,一般的に,腸管に閉塞のある患者又はその疑いのある患者への下剤の投与は,腸管蠕動運動の促進により腸管の閉塞による症状が増悪し,腸管穿孔に至るおそれがあることが知られている。

以上のことから,消化管閉塞若しくはその疑いのある患者,又は消化管閉塞の既往歴を有し再発のおそれの高い患者に投与した場合,消化管穿孔を起こすおそれがあるため,このような患者へは本剤を投与しないこと。

閉塞の既往を医師に伝えていない場合の問い合わせ例

スインプロイクの処方を頂いているのですが、この患者様、先生には伝えていないようなのですが、一年前に腸閉塞を起こしたことがあり、再発のおそれが高くない場合は禁忌ではないのですが、「再発のおそれの高い」場合は禁忌となってしまいます。

再発のおそれが高いかどうかはこちらでは判断できなかったので念のためご確認をと思いまして。

複数回の閉塞歴がある場合の問い合わせ例

スインプロイクの処方を頂いているのですが、この患者様、以前腸閉塞を起こしたことがあり、再発のおそれが高くない場合は禁忌ではないのですが、「再発のおそれの高い」場合は禁忌となってしまいます。

今まで3回、時期は5年前、3年前、1年前と腸閉塞を起こしており「再発のおそれが高い」ほうに該当する可能性があるのでご確認をと思いまして。

②オピオイドの併用の有無【用法・用量に関連する使用上の注意】

スインプロイクはオピオイドの末梢性作用に拮抗しオピオイド誘発性便秘症に効果を発揮する薬剤であることから,オピオイド投与中止とともに本剤の投与も中止することとされています。

そのため、オピオイドの併用がない場合は疑義照会対象となります。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
オピオイドの投与を中止する場合は本剤の投与も中止すること

③リファンピシン、イトラコナゾール、フルコナゾール、シクロスポリンの併用の有無【併用注意】

併用禁忌ではなく、併用注意となりますが併用によりスインプロイクのAUCが下記のように変動する報告があるため疑義照会対象と考えたほうがよいかと思います。

ただし、スインプロイクは固定用量で減量幅がない薬剤であり、相手側もスインプロイク自体も代替するのが難しい薬剤のため疑義照会してもそのまま投与になる可能性が高いかもしれません。

・リファンピシン:スインプロイクのAUCが83%低下
・イトラコナゾール:スインプロイクのAUCが2.9 倍に増大
・フルコナゾール:スインプロイクのAUCが1.9 倍に増大
・シクロスポリン:スインプロイクのAUCがは 1.8 倍に増大

併用注意によるAUC増大の影響

過量投与の項目によると,承認用量の 2 倍である 1 日 1 回 0.4 mg を 2 週間又は 4 週間投与した患者群において,胃腸障害の副作用発現頻度の増加が認められています。

また、承認用量の 5 倍である 1 mg を単回投与した患者において,高度な悪心,胃痙攣を含む薬剤離脱症候群が 9 例中 1 例に発現したとされています。

このため、併用注意でAUCが増大する場合は通常よりも下痢,腹痛等の胃腸障害やオピオイド離脱症候群が発現するおそれが高くなる可能性があると考えられます。

海外臨床試験(0.01 ~ 3 mg 単回投与)において,1 mg を投与した場合に,重度の悪心,胃痙攣を含むオピオイド離脱症候群が認められている。

また,国内及び海外臨床試験において,0.4 mg を 1 日 1 回 2 週間又は 4 週間投与した場合に,投与初期に胃腸症状の副作用発現頻度の増加が認められている。

スインプロイクの服薬指導で伝えること

①消化管穿孔の副作用説明【重要な基本的注意】

海外で類薬の投与により,消化管穿孔の報告があるため、腹痛が続いたり、程度がひどい場合は医師に連絡し受診するよう説明します。

海外で類薬の投与により,消化管穿孔を来し死亡に至ったとの報告がある。
激しい又は持続する腹痛等,消化管穿孔が疑われる症状が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

なお、添付文書には何故か記載がありませんが、インタビューフォームには「また,本剤を投与する患者に対して,このような場合には直ちに医療機関を受診するよう指導すること」と記載されています。

②オピオイド離脱症候群の説明【重要な基本的注意】

非特異的症状であるため、説明しにくい内容となります。

通常であれば、このような内容は指導せんに記載されるのが普通かと思いますが、スインプロイクの指導せんにはなぜかこの内容の記載がありません。

不安、吐き気、筋肉痛、涙や汗が出る、下痢、発熱、不眠などみられる場合は医師に連絡するよう説明します。ただし、下痢に関しては別項目で説明するため省いてもよいかもしれません。

オピオイド離脱症候群(一般的には,投与後数分あるいは数日以内に起こる次の症状の複合的な発現:不安,悪心,嘔吐,筋肉痛,流涙,鼻漏,散瞳,立毛,発汗,下痢,あくび,発熱,不眠)を起こすおそれがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

<インタビューフォーム>
承認時までの国内臨床試験では,ICH 国際医薬用語集(MedDRA)の標準検索式(SMQ)の「薬剤離脱」に該当する副作用は報告されていない。

また,海外の第 3 相臨床試験(3 試験)では,本剤 0.2 mg 併合群における「薬剤離脱(SMQ)」に該当する副作用の発現頻度は 0.9%(10/1163例)であった。

しかし,本剤の薬理作用を勘案すると,オピオイド離脱症候群が発現する可能性を完全に否定することはできない。したがって,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,患者の状態に応じて対症療法を行うなど適切な処置を行うこと。

③重度な下痢【重大な副作用】

ひどい下痢になる場合は医師に連絡するよう説明します。

指導せんにも記載がありますが、軽い下痢であれば飲んでるうちに回復することが多いため、少しゆるいくらいであれば継続して服用し、続いたり程度がひどい場合は医師に連絡し相談するように説明するのがよいかと思います。

重度の下痢(1%未満):重度の下痢があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

<指導せん>
●このお薬を服用すると,下痢になることがあります。徐々に回復する場合が多いですが,症状がひどいときや,よくならないときは,医師・薬剤師・看護師にご相談ください。

スインプロイクの服薬指導薬歴例

S)痛み止め(オピオイド)による便秘
O)併用なし。胃腸閉塞なし(既往もなし)
A)下痢や腹痛が続いたり程度がひどい場合は医師に連絡し受診するよう説明。
万一、不安、吐き気、筋肉痛、涙や汗が出る、発熱、不眠などがでる場合はすぐに医師に連絡し受診指示。
P)状態確認

新薬消化器
スポンサーリンク
Suzukiをフォローする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました