
2019年6月にデパケンR錠に該当する薬剤の局方名が「バルプロ酸ナトリウム徐放錠A」、セレニカR錠に該当する薬剤の局方名が「バルプロ酸ナトリウム徐放錠B」 として日本薬局方に収載されました。
これを受けて、デパケンR錠のジェネリックに該当するバルプロ酸Na徐放B錠「トーワ」は バルプロ酸ナトリウム徐放錠A「トーワ」に販売名変更を行っており、そろそろ名称変更品も流通し始めているかと思います。
局方名、一般名、商品名がかなり紛らわしい状況となっているので注意が必要です。
局方名と商品名
局方名:バルプロ酸ナトリウム徐放錠A
商品名:デパケンR錠、 バルプロ酸ナトリウム徐放錠A「トーワ」(旧名称:バルプロ酸Na徐放B錠「トーワ」)
局方名:バルプロ酸ナトリウム徐放錠B
商品名:セレニカR錠
一般名について
一般名にかんしては製薬会社によって見解が異なります。
一般名については、2020年5月時点では厚労省の一般名マスタは従来どおり「【般】バルプロ酸Na徐放錠」のままであり、東和薬品とセレニカRの製薬会社ともに一般名は従来どおり 「【般】バルプロ酸Na徐放錠」 のままとのことでした。
ただし、デパケンRの製薬会社に関しては局方名が変わったので、一般名も「バルプロ酸ナトリウム徐放錠A 」となるということでした。「局方名」=「一般名」という見解のようです。
ただし、厚労省の一般名マスタは従来どおり記載されているため、どちらもありうると考えたほうが無難かと思います。
デパケンRの製薬会社だけに確認した医師は、セレニカRの一般名が「バルプロ酸ナトリウム徐放錠B 」だと勘違いして処方がくる可能性があります。
想定される処方例
実際に想定される一般名処方例製薬会社により一般名が異なることから一般名処方として、下記の①~③のパターンが考えられます。
なお、④は商品名処方の場合の注意を記載しています。
①【般】バルプロ酸Na徐放錠
従来通りの一般名です。「デパケンR」と「セレニカR」の2つの製剤が該当するため(後述参照)、規格が共通する場合は疑義照会し、どちらの処方意図かを確認する必要があります。
②【般】バルプロ酸ナトリウム徐放錠A
「デパケンR」が該当します。
③【般】バルプロ酸ナトリウム徐放錠B
これがもっとも危険なパターンです。
セレニカRの処方意図で、局方名を一般名と思い違いをして「バルプロ酸ナトリウム徐放錠B 」と処方したパターンか、デパケンRのジェネリックの旧名称である「バルプロ酸Na徐放B錠「トーワ」」の処方意図の可能性もあるため、疑義照会してどちらの処方意図かを確認したほうがよいかと思います。
④バルプロ酸Na徐放B錠「トーワ」
経過措置が切れるまで(2020年9月末予定)は旧商品名で処方が来る可能性があります。
薬局の在庫がすでに新名称となっていれば、バルプロ酸ナトリウム徐放錠A「トーワ」を調剤するのが正解ですが、このバルプロ酸Na徐放B錠「トーワ」の処方を、セレニカRの箱に記載のある日本薬局方(バルプロ酸ナトリウム徐放錠B」の記載を見て、調剤してしまう過誤が想定されます。
商品の箱にも商品名と並んで、日本薬局方が記載されています。
デパケンR錠とセレニカR錠は同一の一般名
従来から厚労省の一般名マスタでは、デパケンRとセレニカRは「【般】バルプロ酸Na徐放錠」という同じ一般名となっています。
一般名が同じため、共通する規格である200mgの処方である場合はレセコン上でもどちらも候補として出てきてしまいますが、異なる薬剤であるため疑義照会しないとどちらの製剤を処方したいかがわからない製剤です。
デパケンRは1日1~2回の用法ですが、セレニカRはを1日1回の製剤です。また、デパケンRの規格は100mgと200mgですが、セレニカRは200mgと400mgです。
そのため、200mgでなければ規格からどちらの製剤か判別可能です。
なお、 バルプロ酸製剤は「徐放」でない「【般】バルプロ酸Na錠」も存在するのでこちらの過誤にも注意が必要です。(下記記事参照)
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