
2024年5月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回は品目数は多くありませんが、ビソプロロール・カルベジロール製剤の妊娠禁忌が緩和されたことやイグザレルトの併用禁忌追加やアモキシシリン製剤の胃腸炎症候群の副作用といった薬剤師として認識しておく必要がある内容となっています。
①ビソプロロール・カルベジロール製剤【妊娠禁忌緩和】
従来禁忌であった「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」が削除となり、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨の注意喚起に緩和されました。
高齢出産の増加などから、慢性心不全の妊婦でカルベジロール及びビソプロロールの医療上のニーズが高まってきていることなどから改訂になりました。
なお、今回の改訂は,「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」に対し,一律禁忌とされていたこれらの服用を無条件に行えるようにするものではなく,処方する医師が患者の疾患の状態等を十分に観察し,治療上の有益性及び危険性を十分勘案した上で投与の可否を慎重に判断するという位置付けとなります。
<特定の背景を有する患者に関する注意 妊婦>
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。投与に際しては、母体及び胎児の状態を十分に観察すること。
また、出生後も新生児の状態を十分に観察し、新生児の低血糖、徐脈、哺乳不良等の異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
妊婦にβ遮断薬を投与した場合に、胎児の発育不全、新生児の低血糖、徐脈、哺乳不良等が認められたとの報告がある。
②イクザレルト(リバーロキサバン)【併用禁忌】
もともとアゾール系薬剤は多くのものが併用禁忌でしたが、ノクサフィル(ポサコナゾール)も併用禁忌に追加となりました。ノクサフィル側の添付文書も今回改訂同様にされています。
なお、フルコナゾールは併用禁忌でなく併用注意となっています。
また、製薬会社に確認したところ、ネイリン(ホスラブコナゾール)は現時点では併用注意に記載がありませんが、フルコナゾール同様にCYP3Aの中等度の阻害作用を有するので、製薬会社としては注意が必要との見解を示しています。
③アモキシシリン製剤【重大な副作用・重要な基本的注意】
重大な副作用に「薬剤により誘発される胃腸炎症候群」が追記されました。
この副作⽤は薬剤アレルギーのひとつであることから、従来より記載のある「重要な基本的注意」の「ショック、アナフィラキシー、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の既往歴等について事前に問診を⾏う旨」の記載に追記されました。
<重⼤な副作⽤>
薬剤により誘発される胃腸炎症候群(頻度不明)
投与から数時間以内の反復性嘔吐を主症状とし、下痢、嗜眠、顔⾯蒼⽩、低⾎圧、腹痛、好中球増加等を伴う、⾷物蛋⽩誘発性胃腸炎に類似したアレルギー性の胃腸炎(Drug-induced enterocolitis syndrome)があらわれることがある。主に⼩児で報告されている。
<重要な基本的注意>
ショック、アナフィラキシー、アレルギー反応に伴う急性冠症候群、薬剤により誘発される胃腸炎症候群の発生を確実に予知できる方法はないが、事前に当該事象の既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質によるアレルギー歴は必ず確認すること。
薬剤師としての対応
通常、抗生剤の服薬指導(実際は抗生剤に限らず初回の薬剤では説明する)ではアナフィラキシーや薬疹の注意を説明しますが、アモキシシリン製剤ではこれに加え、少し前に追記された「アレルギー反応に伴う急性冠症候群」と今回の「胃腸炎症候群」の説明も併せて行う対応が適切と考えられます。
<説明例>
「初めての薬なので万一、蕁麻疹がでるとか苦しくなるとか、胸が痛い、吐いてしまうなど何か合わない場合はすぐ受診してください。」
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