麻薬の類似名称での過誤注意情報をまとめました。
麻薬は近年、類似名称に注意が必要な新薬が多く発売されており、また一般名処方自体も増えてきています。
認識しておかないと過誤につながる可能性があるものが多いので、すべての薬剤師が把握しておいたほうが良いかと思います。
・厚生労働省の一般名処方マスタに収録されている一般名は名称を赤色にしています。
・後発医薬品が存在しない薬剤など、一般名処方マスタにない薬剤は名称を青色にしています。この場合は製薬会社やレセコン会社が提供している一般名を記載しているため、一般名処方マスタに収録されているものと比べてレセコンにより一般名が異なってくる可能性が高くなります。
なお、今回の内容は、下記の「薬剤名称ミスのまとめ」に後日追記予定となります。
- ①【般】
「オキシコドン徐放錠」と「オキシコドン徐放カプセル」と「オキシコドン徐放錠(乱用防止製剤) 」と「オキシコドン錠」と「オキシコドン錠(乱用防止製剤)」 - ②【般】「トラマドール 塩酸塩口腔内崩壊錠」と「トラマドール 塩酸塩徐放錠 (12時間持続)」と「トラマドール 塩酸塩徐放錠 (24時間持続)」
- ③【般】「モルヒネ塩酸塩徐放カプセル」と「モルヒネ硫酸塩徐放カプセル(12時間持続)」と「モルヒネ硫酸塩徐放錠(12時間持続)」と「モルヒネ塩酸塩錠」
- ④【般】「ヒドロモルフォン塩酸塩錠」と「ヒドロモルフォン塩酸塩徐放錠」
- ⑤「フェンタニルクエン酸塩舌下錠」と「フェンタニルクエン酸塩バッカル錠」
- ⑥「フェンタニルクエン酸塩テープ(1日用)」と「フェンタニルテープ(1日用)」「フェンタニルテープ(3日用)」
- ⑦【般】「モルヒネ硫酸塩徐放細粒〇%(12時間持続)」と「モルヒネ硫酸塩徐放細粒〇mg(12時間持続)」
①【般】「オキシコドン徐放錠」と「オキシコドン徐放カプセル」と「オキシコドン徐放錠(乱用防止製剤) 」と「オキシコドン錠」と「オキシコドン錠(乱用防止製剤)」
●【般】オキシコドン徐放錠:オキシコンチン錠、オキシコドン徐放錠「第一三共」:5mg/10mg/20mg/40mg
●【般】オキシコドン徐放カプセル:オキシコドン徐放カプセル「テルモ」: 5/10/20/40mg
●【般】オキシコドン徐放錠(乱用防止製剤):オキシコンチンTR錠 、オキシコドン徐放錠NX「第一三共」: 5/10/20/40mg
●【般】オキシコドン錠:オキシコドン錠「第一三共」:2.5/5/10/20mg
●【般】オキシコドン錠(乱用防止製剤):オキシコドン錠NX「第一三共」:2.5/5/10/20mg
「徐放錠」かそうでないかと、「乱用防止製剤」かそうでないかと、カプセル剤形で5種類の一般名に分類されていましたが、乱用防止製剤でないものはカプセル剤以外は販売中止の方向に進んでいるため、将来的には3種類になり少しわかりやすくはなる予定です。
「乱用防止製剤でないオキシコドン徐放錠」である オキシコンチン錠と、これのジェネリックであるオキシコドン徐放錠「第一三共」はすでに販売中止で経過措置も切れていますが、カプセルのオキシコドン徐放カプセル「テルモ」は販売が継続されています。
「乱用防止製剤でないオキシコドン錠」のオキシコドン錠「第一三共」は2023年3月に経過措置切れの予定です。
なお、「徐放でないオキシコドン錠」であるオキシコドン錠「第一三共」 は「オキノーム散」のジェネリックであり、これの乱用防止製剤がオキシコドン錠NX「第一三共」となっています。
NX製剤について
「NX」がつくものは添加物として麻薬拮抗剤のナロキソンを含むことで乱用防止製剤となっています。
このナロキソンは経口投与時にはほとんどが肝初回通過効果による速やかな代謝を受け作用を発現せず、オキシコドンの薬理作用を阻害することはありません。実際に経口投与時の血漿中ナロキソン濃度は定量下限未満となっています。
一方、乱用目的などで注射した場合はナロキソンがオキシコドンの薬理作用に拮抗するようです。
なお、オキシコドン徐放錠NXはジェネリック製剤でありながら、オキシコンチンTR錠 とでは「用法・用量に関連する使用上の注意」と「重要な基本的注意」が一部異なるため注意が必要です。
②【般】「トラマドール 塩酸塩口腔内崩壊錠」と「トラマドール 塩酸塩徐放錠 (12時間持続)」と「トラマドール 塩酸塩徐放錠 (24時間持続)」
●【般】トラマドール 塩酸塩口腔内崩壊錠:トラマールOD錠、トラマドール塩酸塩OD錠「KO」: 25/50
●【般】トラマドール 塩酸塩徐放錠 (12時間持続):ツートラム錠: 50/100/150mg
●【般】トラマドール 塩酸塩徐放錠 (24時間持続):ワントラム錠: 100mg
徐放かそうでないか、徐放の場合でも持続時間の違いで3種類存在しています。
なお、禁忌項目にも違いがあり、徐放製剤の場合は「高度な腎機能障害又は高度な肝機能障害のある患者」が禁忌となっています。
③【般】「モルヒネ塩酸塩徐放カプセル」と「モルヒネ硫酸塩徐放カプセル(12時間持続)」と「モルヒネ硫酸塩徐放錠(12時間持続)」と「モルヒネ塩酸塩錠」
●【般】モルヒネ塩酸塩徐放カプセル:パシーフカプセル 30/60/120mg
●【般】モルヒネ硫酸塩徐放カプセル(12時間持続):MSツワイスロンカプセル 10/30/60mg
●【般】モルヒネ硫酸塩徐放錠(12時間持続):MSコンチン錠 10/30/60mg
●【般】モルヒネ塩酸塩錠:モルヒネ塩酸塩錠「DSP」 10mg
「塩酸塩」と「硫酸塩」という塩の部分の違いなので認識していないと非常に間違いやすいので注意が必要です。
④【般】「ヒドロモルフォン塩酸塩錠」と「ヒドロモルフォン塩酸塩徐放錠」
●【般】ヒドロモルフォン塩酸塩錠:ナルラピド錠:1/2/4mg
●【般】ヒドロモルフォン塩酸塩徐放錠:ナルサス錠:2/6/12/24mg
ナルサス錠は徐放性製剤のため、1日1回の用法であり、レスキュー用ではありません。ナルラピドは1日4~6回に分割経口する定時投与のほか、レスキューとして臨時投与にも使用できます。
⑤「フェンタニルクエン酸塩舌下錠」と「フェンタニルクエン酸塩バッカル錠」
●【般】フェンタニルクエン酸塩舌下錠:アブストラル舌下錠 100/200/400μg
●【般】フェンタニルクエン酸塩バッカル錠:イーフェンバッカル錠 50/100/200/400/800μg
「舌下錠」と「バッカル錠」の違いです。バッカル錠は「頬と歯茎の間にはさむ」という使い方となります。また、剤形だけでなく投与間隔などにも違いがあります。
⑥「フェンタニルクエン酸塩テープ(1日用)」と「フェンタニルテープ(1日用)」「フェンタニルテープ(3日用)」
●【般】フェンタニルクエン酸塩テープ(1日用):フェントステープ、フェンタニルクエン酸塩1日用テープ「テイコク」など 0.5/1/2/4/6/8mg
●【般】フェンタニルテープ(1日用):ワンデュロパッチ、フェンタニル1日用テープ「明治」など 0.84/1.7/3.4/5/6.7mg
●【般】フェンタニルテープ(3日用):デュロテップMTパッチ、フェンタニル3日用テープ「明治」など、2.1/4.2/8.4/12.6/16.8mg
●【般】フェンタニルテープ(3日用):ラフェンタテープ 1.38/2.75/5.5/8.25/11mg
非常にわかりにくくなっていますが、幸いにも共通規格がないため、規格に注意すれば過誤を防ぐことができます。
ラフェンタテープはデュロテップMTパッチのジェネリックなので一般名は同一ですが、薬剤の放出機構に差があり含有量(mg)が異なるため、ジェネリック変更はできません。
また、効能も一部異なっており、ラフェンタには「慢性疼痛」の効能がありません。
⑦【般】「モルヒネ硫酸塩徐放細粒〇%(12時間持続)」と「モルヒネ硫酸塩徐放細粒〇mg(12時間持続)」
●【般】モルヒネ硫酸塩徐放細粒〇%(12時間持続):モルペス細粒 2%/6% 薬価単位:g
●【般】モルヒネ硫酸塩徐放細粒〇mg(12時間持続):モルヒネ硫酸塩水和物徐放細粒分包「フジモト」 10mg/30mg 薬価単位:包
「モルペス細粒2%・6%」から「モルヒネ硫酸塩水和物徐放細粒分包10mg・30mg「フジモト」」への名称変更ですが、名称に加えて薬価単位も「g」から「包」に変更となり別製剤としての位置づけとなっています。
そのため、帳簿上も別々に記載が必要となりますし、処方も%処方の古い製剤の一般名で、新製剤のmg製剤を調剤することもできないため注意が必要です。
なお、古い製剤は2023年3月末経過措置切れ予定です。
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