新薬承認情報【2023年秋〜冬】+効能追加情報

新薬承認情報【2023年秋〜冬】+効能追加情報

2023年秋〜冬の効能追加情報をまとめました。

今回は薬剤師に直接関係するわけではありませんが、5種混合ワクチンや成人用のRSウイルスワクチンなどが承認されているので知識としてしっておいてもよいかもしれません。

また、アルツハイマーの点滴薬の併用注意やレキサルティの効能追加については認識しておく必要があるかと思います。

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①フォゼベル錠(テナパノル)

「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を効能とする腸管からのリン吸収を阻害するという新規作用機序の高リン血症治療剤です。

腸管内で局所的に作用し、腸管上皮細胞のNHE3 を阻害することにより細胞間隙のリン透過性を低下させるとされています。

海外ではもともと便秘型過敏性腸症候群の効能として承認されており、その関係からか下痢の副作用(61.3%)がみられ、下痢に伴う口渇や手足のしびれ、強い倦怠感、血圧低下等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう患者に指導することとされています。

下痢は副作用ではありますが、もともと便秘がちな透析患者の場合にはメリットになるケースもあるのかもしれません。

新規(novel)作用機序のリン(phosphate)吸収阻害薬ということでフォゼ+ベルで命名されています。

②クイントバック水性懸濁注射用

百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎及びインフルエンザ菌b型による感染症の予防を効能とする五種混合ワクチンです。

5種混合ワクチンはすでにゴービックが承認されているため、クイントバックはこれに次いで2番目となります。

調剤することはないので薬剤師には直接関係するわけではありませんが、5種混合ワクチンの存在は知識として知っておいたほうがよいかと思います。

なお、クイントバックで使用する抗原はすべて国内生産されているようです。

③アレックスビー筋注用

「RS ウイルスによる感染症の予防」を効能とする国内初のRSウイルスによる感染症を予防する60歳以上の成人向けワクチンです。

日本では毎年60歳以上の成人でRSウイルス感染症によって63,000人の入院と4,500人の院内死亡が推定されています。

④レケンビ点滴静注(レカネマブ)

「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能とするアミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つであり最も神経毒性の高いAβプロトフィブリルに選択的に結合して脳内から除去することで、ADの進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを実証し、承認された世界で初めての治療薬です。

点滴製剤のため調剤することはありませんが、認知症でこういった点滴薬が発売されることは薬剤師として知っておいてもよいかと思います。特に後述の抗血栓薬との併用注意については認識しておく必要があります。

抗血栓薬が併用注意(レケンビ治療カードを持っている場合がある)

レケンビはMRIなどの画像検査を実施したときに、脳のむくみや一部の出血などが認められる画像所見であるアミロイド関連画像異常(ARIA(アリア))という副作用があらわれることがあります。

これは脳からアミロイドβが除去されるときに、一時的に体液や血液が血管の外に漏れ出すことで起こるといわれていますが、抗血栓薬と併用することでこういった脳出血が助長する可能性があるため併用注意となっています。

また、製薬会社の用意する資材の指導冊子に「レケンビ治療カード」というものが付いており、患者さんによっては医療機関側の指示で持参することもあります。これにはレケンビ使用中のため、抗血栓薬と併用することで脳出血を助長する可能性があり、抗血栓薬による治療が必要な場合には記載の医療機関に連絡してほしいといった旨が記載されています。

そのため、「レケンビを使用中に他院で抗血栓薬が追加となるような際」には患者がレケンビ治療カードをもらっているか、もらっている場合は抗血栓薬処方医にちゃんと見せたかなどを確認する必要があります。

また、特にレケンビ処方病院から治療カードなどの注意喚起をされていない場合でも、患者がレケンビの併用を抗血栓薬処方医に伝えていない場合は情報伝達の意味合いで疑義照会をしたほうがよいかもしれません。

⑤イブグリース皮下注 シリンジ/オートインジェクター(レブリキズマブ)

「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能とするインターロイキン(IL)-13 に結合するIgG4 モノクローナル抗体です。 

⑥ターゼナカプセル(タラゾパリブ)

下記を効能とするPARP(ポリアデノシン 5’二リン酸リボースポリメラーゼ)阻害剤です。DNA修復で重要な役割を果たしているPARPを阻害することでDNA修復経路などに関与する遺伝子に変異や欠損がある腫瘍細胞で合成致死を誘導するようです。

①BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(0.1 mg、0.25 mg)
②がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌(0.25 mg、1mg)

0.1 mg、0.25 mg、1mgの3つの規格が存在しますが前立腺がんよりも乳癌のほうが高用量となっており、規格により効能が異なっています。

0.25mg規格ではどちらの効能もありますが、0.1 mg規格では去勢抵抗性前立腺癌の効能のみであり、1mg規格では乳がんの効能のみとなります。

⑦デュピクセント シリンジ/ペン【効能追加】

「アトピー性皮膚炎」に対して 6 ヵ月以上の小児への適応が追加されました。

また、これに伴い従来の300mg製剤(シリンジ・ペン)に加えて、小児に対する使用製剤となる200mg シリンジ(アトピー性皮膚炎のみの効能)が発売されました。

<用法及び用量 アトピー性皮膚炎>
通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に 600mg を皮下投与し、その後は 1 回 300mgを 2 週間隔で皮下投与する。

通常、生後 6 カ月以上の小児にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として体重に応じて以下を皮下投与する。

5kg 以上 15kg 未満:1 回 200mg を 4 週間隔
15kg 以上 30kg 未満:1 回 300mg を 4 週間隔
30kg 以上 60kg 未満:初回に 400mg、その後は 1 回200mg を 2 週間隔
60kg 以上:初回に 600mg、その後は 1 回 300mg を2 週間隔

なお、200mg 製剤と 300mg 製剤とは生物学的同等性試験は実施していないため、600mgを投与する際には 200mg シリンジを使用しないこととされています。

<用法及び用量に関連する注意 アトピー性皮膚炎>
200mg シリンジと 300mg シリンジ又は 300mg ペンの生物学的同等性試験は実施していないため、600mgを投与する際には 200mg シリンジを使用しないこと。

⑧イグザレルト【効能追加】

小児の「Fontan手術施行後における血栓・塞栓形成の抑制」の効能が追加となりました。

Fontan手術は心臓の手術となります。

⑨エンタイビオ皮下注ペン・シリンジ【効能追加】

「中等症から重症の活動期クローン病の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能が追加となりました。

⑩レキサルティ【効能追加】

「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の効能が追加となりました。なお、この効能ではSSRI、SNRIまたはミルタザピンとの併用が必要となっています。

 <用法及び用量 うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)>
通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。

<用法及び用量に関連する注意 うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)>
本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。[本剤単独投与での有効性は確認されていない。]

効能追加とは別に用法及び用量に関連する注意も改訂された

なお、効能追加とは別に従来から「用法及び用量に関連する注意」に記載されていたCYP3A4阻害やCYP2D6 阻害剤との併用時のレキサルティの用量制限についてもこのタイミングで改訂されています。

従来では強い阻害剤以外は該当しませんでしたが、今回の改訂により中等度の阻害薬も用量制限の対象に該当することとなり、また効能によっても制限される用量が異なるのでかなり複雑になっています。

すでに制限用量を超える用量でレキサルティを服用中している場合は、実質的にはこれらのCYP2D6阻害剤やCYP3A4阻害剤の使用ができなくなります。

実際にこのような併用処方がでた場合には疑義照会して阻害薬側を変更する対応が妥当ですが、代替が難しい場合はレキサルティを記載の用量に減量するかを疑義照会する対応となるかと思います。

<統合失調症>



<うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)>

中等度以上のCYP3A、CYP2D6阻害剤とはなにか

中程度以上の阻害薬とは具体的にどの薬剤が該当するかは添付文書には一部しか記載がないため不十分ですが、阻害作用を有する代表的な薬剤については製薬会社のサイト内の「適正使用に関する情報」の下のほうに掲載されている「CYP2D6阻害剤、CYP3A阻害剤の一覧」に記載されています。

レキサルティにかかわらず、中等度以上のCYP2D6阻害剤、CYP3A阻害剤は薬剤師として把握しておく必要があるので目を通しておくことを強くお勧めします。

2) レキサルティ錠1mg、2mg 適正使用に関する情報 (大塚製薬医療関係者向け情報サイト)https://www.otsuka-elibrary.jp/product/di/rx1/tekisei/index.html

CYP2D6阻害剤とデキストロメトルファン

教育よりの話となりますが、CYP2D6阻害剤との相互作用は認識している薬剤師が少ない印象がありますが、割と遭遇頻度が多いものにデキストロメトルファン(CYP2D6阻害剤との併用でデキストロメトルファンのAUCが上がる)があります。

添付文書にAUC上昇率の記載があるものだと、有名どころだとシナカルセト(レグパラ)との併用でAUCが約11倍増加がありますが、それ以外にもダコミチニブ(肺がんの薬)との併用で約9倍、アビラテロン(ザイティガ)との併用でAUCが約3倍セレコキシブ(弱いCYP2D6阻害剤)との併用でAUCが約2.6倍などもあります。

これらの併用処方が出た際はデキストロメトルファンを別の咳止めにする疑義照会が必要になるかと思います。また、強いCYP2D6阻害剤であるパキシルや中等度阻害剤ではあるものの以前のFDAの表で強い阻害剤に分類されていたこともあるテルビナフィンあたりは添付文書上にAUC上昇率の記載はありませんが、同様の対応を行ったほうがよいかと思います。

また、デキストロメトルファンのMax用量が8錠適宜増減なので、セレコキシブ程度であればデキストロメトルファン1日3錠くらいまでなら許容するという判断もありかと思います。

なお、咳止めが入手困難で別の咳どめから在庫があるデキストロメトルファンに疑義して変更するケースがあるかと思いますが、誤って前述のCYP2D6阻害剤併用しているのにデキストロメトルファンにしてしまう過誤が想定されるので注意が必要です。

<参考 比較的遭遇頻度の多い中等度以上のCYP2D6阻害剤>上述の大塚製薬医療関係者向け情報サイトより一部抜粋

・強いCYP2D6阻害剤⇒パロキセチン、キニジン、ダコミチニブ(肺がんの薬)
・中等度CYP2D6阻害剤⇒シナカルセト(レグパラ)、テルビナフィン、アビラテロン(ザイティガ)、デュロキセチン、ミラベクロン、エスシタロプラム

新薬服薬指導の考え方・教育DSU等の解説
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