ファムビルの「再発性の単純疱疹」の服薬指導

ファムビルの「再発性の単純疱疹」の服薬指導

2019年2月にファムビルに従来の単純疱疹の効能に加えて、新たに「再発性の単純疱疹」の場合の用法・用量が追加されました。 今回はこの効能の注意点や服薬指導をまとめました。

再発性の単純疱疹に対するこの新たな用法・用量、注意点はかなり特殊であるため認識していないと処方がきた場合に混乱することが予想されます。

そのため、少なくとも「こういった使い方がある」というくらいはすべての薬剤師が認識しておいたほうがよいかと思います。


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  1. 更新履歴
  2. 1.ファムビルのPITによる短期間投与について
    1. 開発の経緯
  3. 2.用法・用量【単純疱疹】
  4. 3.用法・用量に関連する注意・重要な基本的注意【単純疱疹に対して 1回 1000mɡ を2回投与する場合】
  5. 4.腎機能低下時の用法・用量
  6. 5.PITの用法・用量で処方が来た際に確認すること
    1. ①ジェネリック処方でないことの確認
    2. ②現在症状がでているかの確認
    3. ③再発頻度の確認【用法・用量に関連する注意】(2020年4月改訂)
    4. ④初期症状を正確に判断できることの確認【用法・用量に関連する注意】
    5. ⑤期限の確認【添付文書記載なし】
    6. 補足:腎障害の有無の確認
  7. 6.PITの用法・用量で処方が来た際に伝えること
    1. ①初期症状出現後速やかに(6時間以内)服用すること【重要な基本的注意】
    2. ②6時間以内に服用できなかった場合の対応【指導せん・患者向け医薬品ガイド】
    3. ③2回目の服用タイミング【重要な基本的注意】
    4. ④服用後に異常や増悪を感じる場合はすぐ受診すること 【指導せん】
    5. ⑤服用時に妊娠している可能性がある場合の対応【重要な基本的注意】
    6. ⑥アルミ袋で保存すること・使用期限を記載する(2021年1月改訂)
    7. 補足:腎機能が低下した場合は減量すること
    8. 補足: 精神神経症状の注意【重大な副作用】
    9. 補足:運転などの注意【重要な基本的注意】
  8. PITの用法・用量で処方が来た際の薬歴例

更新履歴

・2020年4月改訂により「今回治療」+「次回再発用処方」が可能となったため反映しました。
・2020年4月改訂により「年間3回発症していない患者」でも再発頻度が高いと医師が判断できる場合は投与対象となったため反映しました。

・2021年1月改訂により〈単純疱疹に対して 1 回 1000mg を 2 回投与する場合〉に次回の再発分として処方する場合は、「湿気を避けるためにアルミ袋に入れて保存するよう指導すること」が追記されたため加筆しました。

1.ファムビルのPITによる短期間投与について

今回(2019年2月)、新たに追加となった「再発性の単純疱疹」の1回1000mgを2回投与の用法・用量は、Patient Initiated Therapy(PIT)として使うことができます。

PITとは、あらかじめ処方された薬剤を初期症状に基づき患者判断で服用開始する治療方法です。海外では1day treatmentと呼ばれています。

開発の経緯

再発性の単純疱疹の治療には経口抗ヘルペスウイルス薬が用いられるが、その用法・用量が国内と海外では大きく異なる。

国内では発症後に処方された薬剤を原則5日間服用する治療が一般的だが、海外ではPatient Initiated Therapy(PIT)で発症初期に短期間服用する治療が標準となっている。

再発性の単純疱疹に対する抗ヘルペスウイルス薬服用は、発病初期に近いほど治療効果が期待できるとされているが、初期症状の時点で医療機関を受診できている患者は少ない。

海外のように初期症状を正確に自覚できる患者をPITで治療できれば、発病初期の治療が可能となり、服薬日数の短縮、服薬アドヒアランスの向上が期待できる。国内でも初期症状を正確に自覚できる患者は多く、PITによる短期治療は本邦の再発性の単純疱疹の新たな治療選択肢になり得ると考えられた。

以上より、国内で本剤のPITによる短期治療の開発に着手し、再発性の単純疱疹(口唇ヘルペス及び性器ヘルペス)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施した。

その結果、本剤1回1000mg(4錠)2回投与のプラセボに対する優越性が検証され、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と判断されたため、2019年2月に医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。

<製薬会社ファムビル開発の経緯>

2.用法・用量【単純疱疹】

通常、成人にはファムシクロビルとして1回250mgを1日3回経口投与する。

た、再発性の単純疱疹の場合は、通常、成人にはファムシクロビルとして1回1000mgを2回経口投与することもできる。

従来の1回250mgを1日3回投与の場合は5日処方が一般的かと思いますが、今回追加となった再発性の単純疱疹での使い方の場合は1回1000mgを「2回だけ」の服用となります。1錠は250mgのため、1回4錠服用となります。

処方例としては下記のようになるかと考えられます。

<処方例>
ファムビル錠250mg 8錠
分2 12時間毎 1日分

3.用法・用量に関連する注意・重要な基本的注意【単純疱疹に対して 1回 1000mɡ を2回投与する場合】

下記のように注意点が多く複雑となります。重要な部分は後述します。

2020年4月の添付文書改訂で主に下記の2点が変更となっています。

①従来では「同じ病型の再発頻度が年間 3 回以上の患者であることを確認すること」 とされていましたが、 「年間3回発症していない患者」でも病歴から再発頻度が高いと医師が判断できる場合は本剤の投与対象となるように記載が変更されました。

②従来では1回の処方箋で「今回治療」+「次回再発用処方」どちらも1回1000mgを2回投与の用法・用量の場合は添付文書上できないことが明記されていたのが、記載が変更され「今回治療」+「次回再発用処方」を1回の処方箋でだせるようになりました。

<用法・用量に関連する注意 >
7.5 単純疱疹(口唇ヘルペス又は性器ヘルペス)の同じ病型 の再発を繰り返す患者であることを臨床症状に基づき確認すること。

7.6 本剤の服用は、初期症状発現後、速やかに開始することが望ましい。[初期症状発現から6時間経過後に服用を 開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。]また、臨床試験において、2回目の投与は、初回投与後12時間後(許容範囲として6~18時間後)に投与 された。

7.7 次回の再発分として処方する場合は、以下の点に注意すること。
・再発を繰り返す患者であることは、再発頻度が年間概ね3回以上などの病歴を参考に判断すること。
・再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)を 正確に判断可能な患者であることを確認すること。
・再発頻度及び患者の腎機能の状態等を勘案し、本剤の処方時に、服用時の適切な用法・用量が選択可能な場 合にのみ処方すること。
・1回の再発分の処方に留めること。

7.8 国内臨床試験は、口唇ヘルペス又は性器ヘルペスの患者を対象に本剤の有効性及び安全性の検討を目的として 実施された。

<重要な基本的注意>

初回の服用は初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)出現後6時間以内に服用すること、2回目は、初回服用 後12時間後(許容範囲として6~18時間後)に服用すること、妊娠又は妊娠している可能性がある場合には、服用しないことを患者に十分説明し、患者が理解したことを確認したうえで処方すること。

4.腎機能低下時の用法・用量

腎機能低下の際の用量は腎機能が落ちてくると従来の治療方法と1日量が同じとなるので少し違和感がありますが、製薬会社に確認したところ、指摘はもっともだがそのように設定しているとのことでした。

例えばクレアチンクリアランスが20未満の場合は下記のようになります。
・従来の治療方法:1回250mg 1日1回
・今回の治療方法:250mg 単回

5.PITの用法・用量で処方が来た際に確認すること

①ジェネリック処方でないことの確認

2021.1月時点ではPITの用法・用量の効能があるのは先発医薬品のファムビルのみです。

そのため、ジェネリックで処方がきた場合は疑義照会対象となります。

また、ジェネリック製剤にこれらの効能が追加されるまでは薬局側でジェネリック調剤しないように注意が必要です。

②現在症状がでているかの確認

このPITによる短期間投与の使い方は、現在は症状がでていないが、次回再発用として処方される場合が多いかと思いますが、現在、症状がある場合でかつ、初期症状発現から6時間以内に服用できる場合は現在の治療として使うこともあります

そのため、現在の症状の有無を確認します。多くの場合は「今は症状がなく、症状が出たとき用として」という形になるかと思います。

現在症状がある場合

現在、症状がある場合でも、初期症状発現から6時間以内に服用できる場合は、この用量で治療することができます。

初期症状発現から6時間以内に服用できない場合は、次回症状が出たとき用としての処方はできますが、今回分の治療としては処方できないため、もし今回分の治療を希望する場合は以前からある1回250mg1日3 回の治療方法となるため疑義照会対象となります。

「今回治療」+「次回再発用処方」は可能か?(2020年4月改訂)

1回の処方で下記のような「今回治療」+「次回再発用処方」どちらも1回1000mgを2回投与の用法・用量の場合は添付文書上できないことが明記されているので疑義照会対象となります。

従来では1回の処方箋で下記のような「今回治療」+「次回再発用処方」どちらも1回1000mgを2回投与の用法・用量の場合は添付文書上できないことが明記されていましたが、2020年4月の改訂により記載が変更され「今回治療」+「次回再発用処方」を1回の処方箋でだせるようになりました。(今回治療分は前述のとおり症状発現から6時間以内に服用できる場合となります)

そのため、今後は下記のような処方が出た場合でも疑義照会は不要かと思います。

<処方例>
ファムビル錠250mg 8錠分2 12時間毎 1日分(今回治療分)
ファムビル錠250mg 8錠分2 12時間毎 1日分(再発時)

<用法・用量に関連する使用上の注意>
初期症状発現から6時間以内に受診及び服用可能な場合はその1回の再発分、それ以外の場合は次回1回の再発分の処方に留めること。

なお、下記のような「従来治療」+「次回再発用処方(PIT用量)」の場合は添付文書上不可であることは記載がありません。

製薬会社に確認したところ、添付文書上不可の記載はないが、過量投与として保険が通らない可能性があるので勧めないとのことでした。そのため、同様に疑義照会対象としたほうがよいかと思います。

<処方例>
ファムビル錠250mg 3錠分3 毎食後 5日分
ファムビル錠250mg 8錠分2 12時間毎 1日分(再発時)

③再発頻度の確認【用法・用量に関連する注意】(2020年4月改訂)

従来では「同じ病型の再発頻度が年間 3 回以上の患者であることを確認すること」 とされていましたが、 2020年4月の添付文書改訂で 「年間3回発症していない患者」でも病歴から再発頻度が高いと医師が判断できる場合は本剤の投与対象となるように記載が変更されました。

そのため、今後は薬剤師による確認は不要と考えてよいかもしれません

<用法・用量に関連する注意>
7.7 次回の再発分として処方する場合は、以下の点に注意すること。
・再発を繰り返す患者であることは、再発頻度が年間概ね3回以上などの病歴を参考に判断すること。

④初期症状を正確に判断できることの確認【用法・用量に関連する注意】

再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)を正確に判断可能な患者であることが対象となります。そんなことはないかと思いますが、万一患者が症状の自覚ができず服用タイミングがよくわからないというようであれば疑義照会対象となります。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
・再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)を正確に判断可能な患者であることを確認すること。

⑤期限の確認【添付文書記載なし】

再発用処方という未来服用での処方であるので、医師によっては期間が空きすぎると状態(主に腎機能)が変わるので、医師側で期限を設定する場合も想定されるかと思います。

そのため、念のため患者が医師から期限に関して指示を受けているかを確認したほうがよいかと思います。

補足:腎障害の有無の確認

PIT処方に限りませんが、 腎機能障害のある患者では投与間隔をあけて減量する ことが望ましいため、腎臓が悪いといわれたことがないかを確認します。

腎機能に応じた本剤の投与量及び投与間隔は添付文書に記載されています。

腎機能により減量が必要な薬剤の患者対応
今回は腎機能により減量が必要な薬剤の患者対応の個人的な考え方と対応をまとめました。 調剤薬局で触れる機会の多い薬剤のなかにも腎機能に応じて減量が必要な薬剤は多く存在しています。これらが処方された場合の対応をまとめました。なお、腎機能低下が禁忌の薬剤の対応もこれに準じます。

6.PITの用法・用量で処方が来た際に伝えること

「再発性の単純疱疹に対する治療を受けられる方へ」という指導せんをつかって説明するのが良いかと思います。後述の「伝えること」の内容は網羅されています。

また、この指導せんだけではPITの内容しかカバーされずファムビル錠自体の説明としては不十分であるため「ファムビル錠を服用される方へ」というファムビル錠全般の指導せんも使用したほうがよいでしょう。

下記のマルホのホームページからからどちらもダウンロードできます。

①初期症状出現後速やかに(6時間以内)服用すること【重要な基本的注意】

初期症状出現後速やかに(6時間以内)服用することを説明します。

②6時間以内に服用できなかった場合の対応【指導せん・患者向け医薬品ガイド】

6時間以内に服用できなかった場合は、治療として服用できないため、治療を希望する場合は受診するよう説明します。

この場合は従来の治療方法での治療となります。

<患者向け医薬品ガイド >
再発の初期症状があらわれた後、6時間以内に初めの1回分を飲むことができな
かった場合で、治療を希望する場合は、医療機関を受診してください。

③2回目の服用タイミング【重要な基本的注意】

2回目は、初回服用後12時間後(許容範囲として6~18時間後)に服用することされているため説明します。

④服用後に異常や増悪を感じる場合はすぐ受診すること 【指導せん】

服用後に異常や増悪を感じる場合はすぐ受診することを説明します。これは指導せんに記載のある内容となります。

⑤服用時に妊娠している可能性がある場合の対応【重要な基本的注意】

妊娠している可能性がある場合には、服用しないことを説明します。

<重要な基本的注意>
妊娠又は妊娠している可能性がある場合には、服用しないことを患者に十分説明し、患者が理解したことを確認したうえで処方すること

⑥アルミ袋で保存すること・使用期限を記載する(2021年1月改訂)

アルミピロー開封後にPTP包装で長期間保存した場合、湿度の影響を受けて溶出が遅延する場合があることが確認されたため、2021年1月に添付文書が改訂により〈単純疱疹に対して 1 回 1000mg を 2 回投与する場合〉に次回の再発分として処方する場合は、「湿気を避けるためにアルミ袋に入れて保存するよう指導すること」が追記されました。

そのため、製薬会社から「ファムビル専⽤アルミ袋」と「ブリスターカード」を取り寄せて患者に渡します。

アルミ袋には使用期限を記載する欄があるため、そこに薬剤の期限(個装箱に記載の使用期限)を転記し、使用期限が過ぎたら廃棄することを患者に説明します。

<適用上の注意>
〈単純疱疹に対して 1 回 1000mg を 2 回投与する場合〉
次回の再発分として処方する場合は、湿気を避けるためにアルミ袋に入れて保存するよう指導すること。  

<マルホホームページより>
・ファムビル専⽤アルミ袋配布のお知らせ <再発性単純疱疹のPIT処⽅⽤>
・ブリスターカード(PITによる短期間投与)

補足:腎機能が低下した場合は減量すること

腎機能低下した場合は減量する必要があるので、その場合は再度、医師に用量を確認することを説明します。

高齢者や糖尿病合併患者など、今後の腎機能が怪しい場合は伝えておいたほうが良いかもしれません。(現時点で腎機能が低下している場合は用量が適正か確認する必要があります)

補足: 精神神経症状の注意【重大な副作用】

PIT処方に限りませんが、意識障害等の副作用があるため、バラシクロビル製剤同様に説明したほうがよいかと思います。

万一、意識がもうろうとするなどがあらわれる場合はすぐ受診するよう説明します。

なお、実際には 「初めての薬なので万一、蕁麻疹がでるとか苦しくなるとか意識がもうろうとするとか合わない場合はすぐ受診頂いてますが、一般的にはよく使われる薬となっておりますので」などと説明するのがよいかと思います。

ほとんどの内服薬や吸入薬で共通して行う服薬指導
今回は私がほとんど全ての薬(内服や吸入など)の初回指導の際に共通して行っている服薬指導の内容をご紹介します。あくまで個人的な考えではありますが参考になればと思います。


補足:運転などの注意【重要な基本的注意】

PIT処方に限りませんが、「意識障害等があらわれることがあるので、自動車の運 転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意す るよう患者に十分に説明すること」と記載されているため説明します。

PITの用法・用量で処方が来た際の薬歴例

S)ヘルペスの再発用でもらった。現在は症状がない。年間に何度も再発している。
再発の初期症状はわかるので服用タイミングはわかる。医師より期限の説明なし。
O)腎臓悪いといわれたことなし

A)初期症状出現後速やかに(6時間以内)服用すること、6時間以内に服用できなかった場合は服用せず受診すること、2回目の間隔、妊娠している可能性がある場合には服用しないこと

服用後に異常や増悪を感じる場合はすぐ受診すること。アルミ袋渡して使用期限を過ぎたら廃棄すること説明。

腎機能低下した場合は用量を確認するため受診することを説明 。
万一、蕁麻疹、呼吸困難、意識がもうろうとする際は受診指示。運転注意指示。
P)使用の有無確認

服薬指導の考え方・教育薬剤別服薬指導
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