今回は前回の記事「小児用量の覚え方」に引き続き新卒の薬剤師指導に関する内容となります。
「調剤」→「監査」→「服薬指導」の流れのうち最後の部分である「服薬指導」の手順についてまとめました。個人的な考えとなりますが参考になればと思います。
服薬指導の主な目的は以下の4点です。
1.薬剤が誤っていないかを現物を見せながら確認する2次監査
2.薬剤を処方箋通りに正しく飲んでもらうための用法・用量の説明
3.薬剤の禁忌等に該当しないことの確認
4.薬剤の伝えなければならないことの説明
服薬指導の手順
服薬指導の流れはおおまかに次のようになりますが、4と5の部分等は実際には平行して行ったり前後する場合があります。
1.患者の呼び出し・自己紹介
2.併用薬の確認
3.妊娠・授乳(女性の場合)、体重(子供の場合)の確認
4.薬剤が間違いないかの確認
5.薬剤の説明
6.会計
以下が具体的な手順の内容となります。
①患者の呼び出し・自己紹介
フルネームで患者を呼び出します。窓口に患者が来たら呼び出した患者が正しいかどうかを再度フルネームで確認します。
この際に呼び出した患者ではなく、別の患者が窓口にくることもあるので誤って渡さないように注意する必要があります。特に高齢者や耳が遠い患者の場合は注意が必要です。
患者の名前が正しいことを確認したら、「今回は私、薬剤師の○○がご説明します。」等と名前を名乗ります。
なお、稀に窓口で名前を確認しても返事が曖昧でわかりにくい場合(耳が遠い、日本語が不自由、認知症など)があります。このような場合は「恐れ入りますがもう一度保険証を確認させて頂けますか」等と保険証で名前を確認する方法もあります。
②併用薬の確認
併用薬を確認します。手帳を持っている場合でも貼り忘れや院内処方でシールがない場合があるため必ず口頭でも併用を確認します。
併用薬がある場合は相互作用で問題がないかや薬剤が重複していないか(同一成分や同一薬効)を確認します。
併用禁忌の場合は代替薬に変更する方向で疑義照会を行ないます。
併用注意の場合はAUCの変動率に応じて「疑義照会で代替薬に変更」、「疑義照会はせずに患者に対して想定される副作用を注意させる」、「臨床上問題ないと判断し特に何もしない」などと対応が分かれます。
なお、お薬手帳の渡し間違えを防ぐために手帳を開き今回分と前回分の名前が一致しているかを確認します。詳細は下記の記事にまとめています。
③妊娠・授乳(女性の場合)、体重(子供の場合)の確認
妊娠・授乳(女性の場合)の確認
患者が女性の場合は妊娠・授乳の有無を確認します。具体的に何歳から聴取するかは薬剤師により判断は異なると思いますが、私は18〜40歳前後を目安としています。
意味合いとしては単に情報の更新として確認する場合と妊娠禁忌の薬剤などがでた際にこれに該当しないことを確認するために聴取する場合があります。
体重(子供の場合)の確認
小児の場合は体重を確認します。これも妊娠等と同様に単に情報の更新として確認する場合と薬剤の投与量の監査のために確認する場合とがあります。
④薬剤が間違いないかの確認
薬情を見せながら、薬剤毎に現物を薬袋から出して薬効・用法・用量を説明します。1回2錠など注意が必要な用量には薬情の該当部分に丸をするなどして注意を促します。
錠剤の場合は説明後に薬袋にしまう際に再度、薬剤名・規格・錠数を確認します。
小児等で散剤を説明する際は外観(粉の色)・分包紙の印字(患者名・用法)が間違いないかを現物を見せながら以下のように説明し確認します。
投薬前の監査で確認はしているはずですが、この辺りの間違えは監査で見落としやすく、投薬で気付きやすい部分となります。
外観の確認(粉の色)
「オレンジと白が混ざってこういった色になってます」などと粉の色をみせながら確認します。
この際に明らかに色がちがい(アスベリンが入っているはずなのに白い等)なものは気付かなければなりません。
分包紙の患者名の印字の確認
「○○くんとこちらに名前も印字してます。」等と分包された印字をみせて確認します。名前が違う場合はこの手順で気づくことがあります。
分包紙の印字された用法と日数の確認
分包紙に印字された用法と作成した日数が正しいかを確認します。分包紙に印字された用法を指差しながら「1日3回で5日分」等と説明しながら確認します。
分2と分3の作成違いや食前を誤って食後で印字する等のミスはこの時に気付く必要があります。
⑤薬剤の説明
処方薬の禁忌などに該当しないかを確認し、次に重要な基本的注意や適用上の注意などの伝えなければならないことを説明します。
⑥会計
領収書を見せて会計を行ないます。会計ミスをすると業務後のレジ確認でレジが合わず、どの患者で間違ったかをレジロールなどで一人ひとり確認し、該当患者に対して返金や追加徴収などの作業が発生します。
業務時間としても時間がかかり、患者に対しても信頼を損ねるため会計ミスは極力減らす必要があります。以下が想定される主な会計ミスとなります。
未会計
領収書だけビニールに入れてしまい(もしくは患者にも渡していない等)会計をしていない事例です。レジロールには該当の金額が抜けていることから発覚します。
レジの打ち間違い
領収書の金額をレジ打ちする際に誤って入力してしまう事例です。例えば680円を860円などと誤った金額で入力してしまう等が想定されます。レジロールには該当金額の代わりに誤って入力した金額が出ることから発覚します。
徴収ミス・釣り銭ミス
患者が誤って出した金額を正しいものとして徴収してしまう。またはお釣りを誤った金額で返してしまう事例です。このミスはレジロールにはでないため発見が難しい事例です。
会計ミス防止の手順は以前に記事にしているので詳細は下記の記事をご参照下さい。
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