今回は2017年7月に承認され、発売準備中の帯状疱疹を効能とする新規作用機序を持つ新薬であるアメナリーフ錠(アメナメビル)の特徴と服薬指導をまとめました。
アメナリーフ(アメナメビル)の特徴
アメナリーフの特徴は下記の3点です。
1.1日1回という用法
2.主に糞中に排泄されるため、クレアチニンクリアランスに基づく用量調節が不要
3.既存薬とは作用機序が異なるため、交差耐性を示さない
1日1回(1回2錠)服用という特徴に加え、主に糞中に排泄されるため、腎機能による薬物動態への影響が小さく、クレアチニンクリアランスに基づく用量調節は不要とされています(ただし高度腎障害ではAUCはおよそ2倍程度になります)。
この点は、バルトレックスが処方された患者の服薬指導の際に、腎機能障害があると言われているが、検査値がわからないという場合の代替薬として提案できるので、薬剤師としても嬉しい薬剤かと思います。
アメナリーフの概要
服薬指導難度
効能
帯状疱疹
用法・用量
通常、成人にはアメナメビルとして1回400mg(1回2錠)を1日1回食後に経口投与する。
1回2錠の理由
減量規定がないにもかかわらず、1錠400mgでなく、200mgであることを不思議に思いますが、理由を製薬会社に確認したところ、明確な理由はみつからないが、1錠400mgにすると錠剤の粒が大きくなってしまうことも要因とのことでした。
名前の由来
アメナリーフの「アメナ」の部分は一般名であるアメナメビルに由来しますが、「リーフ」の部分は特に由来はありません。
作用機序
新規作用機序の アメナリーフは、ヘルペスウイルスDNAの複製に必須の酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することで、二本鎖DNAの開裂及びRNAプライマーの合成を抑制し、抗ウイルス作用を示すようです。
一方、これまで本邦で承認された経口抗ヘルペスウイルス薬はすべて核酸類似体であり、デオキシグアノシン三リン酸と競合的に拮抗してウイルスDNAの複製を阻害することで抗ウイルス作用を示します。
このように、 アメナリーフは、既存薬の経口抗ヘルペスウイルス薬と作用機序が異なるため、交差耐性を示さないと考えられています。
アメナリーフの服薬指導で確認すること
①処方日数の確認【重要な基本的注意】
原則として7日間使用することとされているため、処方日数が7日間であることを確認します。
これは臨床試験において、本剤1回400mgを1日1回7日間投与で十分な有効性が示されたことより、投与期間の目安として記載されているようです。
本剤は、原則として7日間使用すること。改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること。
②リファンピシンの併用の有無【併用禁忌】
リファンピシンと併用禁忌であるため確認します。
アメナメビル及びリファンピシンのCYP3A誘導作用により相互に代謝が促進され、血中濃度が低下し、両剤の作用が減弱するおそれがあるため設定されています。
リファンピシンの併用によりアメナリーフのAUCがおよそ1/6に減弱します。該当する場合は疑義照会し、バルトレックスなどに変更提案する対応となるかと思います。
③リトナビルの併用の有無併用注意【併用注意】
併用禁忌ではなく、併用注意となりますがリトナビルの併用によりアメナリーフのAUCが2.6倍になるため疑義照会対象としたほうがよいかと思います。
④健康食品の併用の有無【併用注意】
セント・ジョーンズ・ワートなどのセイヨウオトギリソウ含有のものはアメナリーフの血中濃度が低下し、本剤の作用が減弱するおそれがあるため併用注意となるため確認します。
ただし、製薬会社に確認したところ具体的にどの程度AUCが低下するかのデータは現時点ではないようです。
⑤大きさが服用可能かの確認
錠剤の大きさがバルトレックスよりは小さいものの、短径:約7.9mm、長径:約15.0mm、厚さ:約5.7mmであるため、服用可能かどうか確認します。
服薬が難しいようであれば、腎障害の有無を確認した上で、代替としてバルトレックス顆粒やアシクロビルを提案します。
⑥用途の確認
単純疱疹は効能にないため、ヘルペスに対して処方された場合は疑義照会対象となります。
アメナリーフの服薬指導で伝えること
①噛まずに服用すること【適用上の注意】
コーティングされているため、噛まないことを説明します。
インタビューフォームによるとコーティングの理由としては類薬との識別性のためなので、一見するとつぶしが不可の理由にならない気がしますが、製薬会社によると「つぶしのデータもないので」とのことでした。
服用時:本剤は、識別性のためコーティングを施している。錠剤を割ったり、つぶしたりして服用することは避けさせること
②改善がない、悪化する場合は受診すること【重要な基本的注意】
「改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること」とされているため、よくならない場合や悪くなる場合は受診するよう説明します。
③食後を守ること
アメナリーフのAUCは食事の影響を受け、空腹時では食後と比べAUCがおよそ半分まで低下するため、食後を守ることを説明します。
④グレープフルーツを避けること【併用注意】
併用注意にグレープフルーツジュースの記載があるため説明します。ただし、製薬会社に確認したところ、具体的にどの程度AUCが上昇したかのデータは現時点ではないようです。
アメナリーフの服薬指導薬歴例
S)帯状疱疹
O)併用なし、健康食品併用なし。大きさ飲めるとのこと。
A)噛まずに服用すること、食後守ること説明。よくならない場合や悪くなる場合は受診するよう説明。
グレープフルーツ避けるよう説明。
P)状態確認
コメント
夕食後、軽く晩酌をします。その後に服用しても問題ないでしょうか?
朝食後でも良いのですが、不規則であったり時間がなく飲み忘れなども懸念されるので。
せっかくご質問頂き恐縮ですが、薬を出した医療機関(病院・薬局)でないと責任を持った回答ができないため、そちらに確認するのがよいかと思います。
一般的には帯状疱疹という病気の場合はアルコールは血管を拡張させて、炎症をひどくしてしまうことがあるため飲酒は避けたほうがよいかと思います。
ご回答、ありがとうございます。当方、ベル麻痺からハント症候群の疑いで本薬を処方されました。味覚障害もありますので、今はおいしくないお酒、しばらくお休みします。