2016年10月にワーファリン(ワルファリン)とミコナゾールゲル剤が併用禁忌になりました。苦慮しながらも薬剤師としての対応と考え方をまとめました。
あくまで個人的な考えとはなりますが、参考になればと思います。
1.ワーファリンとフロリードゲル経口用【併用禁忌】
従来はフロリード(ミコナゾール)製剤は剤形を問わず併用注意でしたが、今回の改訂でフロリードゲル経口用(ミコナゾールゲル剤)が併用禁忌に変更となりました。
これは併用によりINRが8以上となる症例が複数報告されたことなどから改訂されたようです。
薬剤師の対応
ワーファリンを使用している患者にフロリードゲル経口用が処方された場合には当然疑義照会して薬剤を変更する必要があります。
フロリードゲル経口用を処方された場合は口腔カンジダの可能性が高いかと思いますが、食道カンジダの場合もあるため、どちらの用途かを患者に確認してから疑義照会を行います。
代替としてはファンギゾンシロップがワーファリンと添付文書上,相互作用の記載がないため候補として挙げられます。
他のジフルカンやイトリゾールなどの内服アゾール系薬剤は併用注意に該当し使用しづらいため、安易にこれらを推奨しないほうがよいかもしれません(後述)。
2.ワーファリンとフロリードDクリーム【併用注意】
ミコナゾールクリーム剤・膣坐剤(フロリードDクリーム・フロリード膣坐剤)は従来通り併用注意のままとなりますが下記の内容が追記されました。
ワルファリンの作用を増強することがある(皮膚からの吸収はほとんど認められていないが、外国において、ワルファリンとの併用により出血を来した症例が報告されている)。
薬剤師の対応
ワーファリン服用患者にフロリードDクリームなどが処方された場合には、疑義照会してアスタットクリームやニゾラールクリームなどの併用注意の記載がない他のアゾール系クリーム製剤に変更を提案するのがよいかと思います。
3.ワーファリンと併用注意に該当するアゾール系薬剤(ブイフェンド、イトリゾール、ジフルカンなど)【併用注意】
前述の併用禁忌となったフロリードゲル以外の、併用注意に該当するアゾール系薬剤の重要な基本的注意に下記の記載が追加されました。
本剤とワルファリンとの併用において、ワルファリンの作用が増強し、著しいINR上昇を来した症例が報告されている。
本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること。
薬剤師の対応
併用注意に該当するアゾール系薬剤も今回の改訂で実質的に使いにくさが増した感があります。
特にワーファリンの処方医とアゾール系薬剤の処方医が異なる場合には、アゾール系薬剤処方医がプロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなどの対応ができない以上は実質的にかなり制限がある記載かと思います。
このため、ワーファリン服用患者にこれらが処方された場合には、用途を確認したうえで疑義照会をしたほうがよいかと思います。
なお、疑義照会の際には併用注意とだけ伝えるのではなく、必ず「ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定やトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること」とされていることも併せて伝える必要があります。
代替薬の考え方
併用注意に該当している経口アゾール経薬剤の用途は多岐にわたるので、代替を提案しにくい内容かと思います。
代替薬は口腔カンジダであれば、前述のファンギゾンシロップ、カンジダや白癬などによる皮膚真菌症であればラミシール錠などが代替薬候補として考えられます。
皮膚真菌症にラミシールを代替として疑義照会する場合は警告欄に「投与前に肝機能検査及び血液検査を行うこと」が記載されているため、これを踏まえて疑義照会する必要があります。また、このような皮膚真菌症であれば内服は削除になり、外用真菌剤のみで治療をするケースもあるかもしれません。
これら以外の用途であれば、内服薬での代替がない場合が多く、かつ専門性も高いため、こちらから積極的に代替薬を推奨するのは難しいと思います。
疑義照会の結果、処方が変わらなかった場合
疑義照会の結果、処方が変わらなかった(注意しながら薬剤を使う)場合はワーファリンの冊子や患者向医薬品ガイドなどを患者に渡して再度出血の注意(歯茎出血、鼻出血、あざ、血尿、血便、黒色便、激しい頭痛や嘔吐、意識が薄れる、うまく体が動かない、ろれつが回らないなど )を促します。

ワーファリン服用患者にアゾール系薬剤が処方された場合の対応のまとめ
①ワーファリン使用患者にフロリードゲル経口用が処方された場合には、口腔カンジダか食道カンジダかを患者に確認したうえで疑義照会をし、ファンギゾンシロップへの変更を提案する。
②ワーファリン使用患者にフロリードDクリームが処方された場合にはアスタットクリームやニゾラールクリームなどの併用注意の記載がない他のアゾール系クリーム製剤に変更を提案する。
③ワーファリン使用患者に内服アゾール系薬剤(併用注意)が処方された場合にはまず用途を確認する。
口腔カンジダであれば、前述のファンギゾンシロップに、カンジダや白癬などによる皮膚真菌症であればラミシール錠(投与前に肝機能検査及び血液検査が必要)を選択肢として疑義照会をする。他の用途であれば疑義照会の際に代替薬の提案まで行うのは難しい。
処方が変わらなかった場合は患者に対して再度ワーファリンによる出血の注意を促す。
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