今回は2016年11月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はワーファリンとアゾール系薬剤の相互作用の改訂やトレシーバの使用タイミングに関する改訂など比較的濃い内容となっています。
なお、ワーファリンとアゾール系薬剤の相互作用の詳細と対応は下記に別途まとめてますので、ご参照頂ければと思います。
【2016年11月】DSU掲載品目
①スタチン系薬剤【重大な副作用及び重要な基本的注意】
重大な副作用に免疫性壊死性ミオパチーが追加となりました。
「免疫性壊死性ミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。」
また、重要な基本的注意に下記の記載が追記となりました。
「近位筋脱力、CK(CPK)高値、炎症を伴わない筋線維の壊死、抗HMG-CoA還元酵素(HMGCR)抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ、投与中止後も持続する例が報告されているので、患者の状態を十分に観察すること。なお、免疫抑制剤投与により改善がみられたとの報告例がある。」
薬剤師の対応
添付文書には免疫性壊死性ミオパチーの具体的な症状が記載されていません。そのため患者向医薬品ガイドを参考とするのがよいかと思います。
患者向医薬品ガイドには免疫性壊死性ミオパチーの症状として「手足のこわばり、手足のしびれ、筋肉の痛み、脱力感、筋力の低下」の記載があります。
これは尿色の変化の記載がないこと以外は横紋筋融解症と同じ記載となるため、従来通り横紋筋融解症の症状を説明していれば今回の改訂により特に追加で説明することはないかと思います。
②ワーファリン(ワルファリン)【併用禁忌】
従来はミコナゾール製剤は剤形を問わず併用注意でしたが、今回の改訂でミコナゾールゲル剤(フロリードゲル経口用)が併用禁忌に変更となりました。
これは併用によりINRが8以上となる症例が複数報告されたことなどから改訂されたようです。
なお、ミコナゾールクリーム剤・膣坐剤(フロリードDクリーム・フロリード膣坐剤)は従来通り併用注意のままとなりますが下記の内容が追記されました。
「ワルファリンの作用を増強することがある(皮膚からの吸収はほとんど認められていないが、外国において、ワルファリンとの併用により出血を来した症例が報告されている)」
③ブイフェンド、イトリゾール、ジフルカンなど(ボリコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール)【重要な基本的注意】
前述のワーファリンと併用禁忌となったフロリードゲル以外のワーファリンと併用注意に該当するアゾール系薬剤の重要な基本的注意に下記の記載が追加されました。
「本剤とワルファリンとの併用において、ワルファリンの作用が増強し、著しいINR上昇を来した症例が報告されている。
本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること」
④ラピアクタ(ペラミビル)【重大な副作用】
重大な副作用に急性腎不全が追加となりました。
「急性腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」
⑤リピトール(アトルバスタチン)【併用禁忌】
併用禁忌にC型肝炎治療薬であるヴィキラックス(オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)が追加となりました。(ヴィキラックス側の添付文書には以前より記載されています)
なお、これは以前からですが、同じくC型肝炎治療薬のテラビックもリピトールと併用禁忌になっています。
薬剤師の対応
リピトールの服薬指導の際に併用薬の確認で、名前不明だが肝臓の薬があると聴取した際は「C型肝炎の薬ではないですか?」などと詳細を聞いてこれがヴィキラックスやテラビックではないことを確認する必要があります。
⑥トレシーバ注(インスリンデグルテク)【成人の用法一部変更】
従来では用法が「注射時刻は毎日一定」とされていましたが、今回の改訂で「原則として毎日一定とするが、必要な場合は注射時刻を変更できる。」と変更になりました。
また、用法及び用量に関連する使用上の注意に下記が追記となりました。
「成人では、注射時刻は原則として毎日一定とするが、通常の注射時刻から変更する必要がある場合は、血糖値の変動に注意しながら通常の注射時刻の前後 8 時間以内に注射時刻を変更し、その後は通常の注射時刻に戻すよう指導すること。
注射時刻の変更に際して投与間隔が短くなる場合は低血糖の発現に注意するよう指導すること」
なお、小児の用法にはこれらの記載はないため注意が必要です。
⑦レビトラ(バルデナフィル)【併用禁忌】
併用禁忌にC型肝炎治療薬であるヴィキラックス(オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)が追加となりました。(ヴィキラックス側の添付文書には以前より記載されています)
なお、これは以前からですが、同じくC型肝炎治療薬のテラビックもレビトラと併用禁忌になっています。
薬剤師の対応
レビトラの服薬指導の際に併用薬の確認で名前不明だが肝臓の薬があると聴取した際は「C型肝炎の薬ではないですか?」などと詳細を聞いてこれがヴィキラックスやテラビックではないことを確認する必要があります。
⑧アクトス(ピオグリタゾン)【重要な基本的注意及びその他の注意】
「重要な基本的注意」の項目が従来では「海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究において、本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加するおそれがありまた、 投与期間が長くなるとリスクが増える傾向が認められているので」という記載でしたが「本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加する可能性が完全には否定できないので」という記載に変更になりました。
また、その他の注意が下記のように改訂されました(改訂前及び改訂後参照)。これは最新の疫学研究等の結果に合わせ膀胱癌に関する記載が変更されました。従来の記載と比べ表現が和らいだ印象があります。
従来記載のあるKPNC疫学研究の5年目中間解析結果などが削除され,10年間の大規模コホート研究(KPNC疫学研究の最終結果等)において、膀胱癌発生リスクに統計的な有意差は認められなかったことと、いくつかの疫学研究から膀胱癌発生リスクの増加の可能性も示唆されていることから変更となってます。
改訂前
「海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究の中間解析において、全体解析では膀胱癌の発生リスクに有意差は認められなかったが( ハザード比 1.2[ 95%信頼区間 0.9-1.5 ])、層別解析で本剤の投与期間が2年以上で膀胱癌の発生リスクが有意に増加した( ハザード比1.4[ 95%信頼区間 1.03-2.0])。
また、別の疫学研究において、 本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが有意に増加し(ハザード比 1.22[ 95%信頼区間 1.05-1.43])、投与期間が1年以上で膀胱癌の発生リスクが有意に増加した(ハザード比 1.34[95%信頼区間 1.02-1.75])」
改訂後
海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究(10年間の大規模コホート研究)において、膀胱癌の発生リスクに統計学的な有意差は認められなかったが、膀胱癌の発生リスク増加の可能性を示唆する疫学研究も報告されている。
コメント