ザイティガの服薬指導

ザイティガの服薬指導
今回は去勢抵抗性前立腺がんの治療薬であるザイティガ(アビラテロン)の服薬指導をまとめました。

なお、2018年2月に「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺癌」の効能が追加となりました。効能により併用されるプレドニゾロンの用法・用量がことなるため注意が必要です。

食事によりおよそAUCが10倍に上昇するため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避ける必要がある薬剤です(承認の用法内でも服用時間によってAUCが7倍程度まで変動します)。

また、前立腺肥大治療薬である「ザルティア」と名称が類似しており、医師の処方ミスや薬剤師による取り違えの報告があるため注意が必要です。

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ザイティガ(アビラテロン)の概要

服薬指導難度

効能

・去勢抵抗性前立腺癌
・内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺癌

ハイリスクの予後因子とは

ハイリスクの予後因子を有する患者の定義等については「臨床成績の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を行うこと」と記載されています。

臨床成績の部分には「3つの予後因子(Gleasonスコアが8以上、骨スキャンで3ヶ所以上の骨病変あり、内臓転移あり(リンパ節転移を除く))のうち、2つ以上を有する場合」をハイリスク予後因子としています。

薬局側では判断できない内容かと思います。

「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」の効能について

2018年2月に「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」の効能が追加となりました。

原則、アンドロゲン除去療法(ADT)との併用となるようです。なお、これは従来の効能の「去勢抵抗性前立腺がん」の場合でも同様とのことです。

ここでいうADTとは抗アンドロゲン剤は含まず、LH-RH アゴニスト,アンタゴニストなど(注射薬)や外科的去勢に該当します。

さらに、全くの未治療である場合は、一時的なPSA上昇を防ぐため抗アンドロゲン剤を1〜2週間程度併用することがあるようです。

また、今回の効能は「内分泌療法未治療」とはなっていますが、数カ月程度の治療であれば今回の効能に該当するようで、その場合は初期の抗アンドロゲン剤の併用は行わないとのことです。

用法・用量

プレドニゾロンとの併用において、通常、成人にはアビラテロン酢酸エステルとして1日1回1,000mgを空腹時に経口投与する。

1錠250mgであるため、1回4錠となります。

空腹時とは

ここでいう空腹時の具体な時間は指導用冊子に「食事の1時間以上前かつ食後2時間以降」と明記されています。

名前の由来

特にありません。

指導せん

「ザイティガを服用される方へ」という指導用冊子があります。副作用の説明の際に有用であるため、服薬指導に必須かと思います。

ヤンセンファーマのホームページの「資材オンライン発注」のページから印刷可能(実際に発注しなくともPDFで印刷できる)ですが、場所がわかりにくいので、急ぎの場合でわからなければ製薬会社にどこから印刷できるか電話で聞くとよいかと思います。

薬価

1錠3690.90円という高額医薬品です。

ザイティガの服薬指導で確認すること

①肝障害の有無【禁忌】

重度の肝機能障害患者(Child-PughスコアC)が禁忌であるため確認します。

②プレドニゾロンの併用の有無【用法・用量に関連する使用上の注意】

プレドニゾロンの併用が必要であるため、プレドニゾロンが併用されていることを確認します。臨床成績の項目に記載されているため見落としがちですが、効能によりプレドニゾロンの用法用量が異なります。(なお、臨床成績の部分ではプレドニゾンと記載されている部分がありますが国内では販売がないため同じ力価のプレドニゾロンに相当します。)

・去勢抵抗性前立腺癌:プレドニゾロン 1回5mg 1日2回
・内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺癌:プレドニゾロン 1回5mg 1日1回

プレドニゾロンの併用がない場合や、プレドニゾロンの用法・用量が通常と異なる場合(内分泌療法未治療にもかかわらず、プレドニゾロンが分2であったり、去勢抵抗性前立腺癌なのに分1である場合など)は疑義照会対象となります。

プレドニゾロンの増量や中止される場合

外科的処置や急性疾患など「患者が通常と異なるストレスにさらされる場合」はストレス状況下に置かれる前後及びその最中にプレドニゾロンの増量される場合もあります。

また、ザイティガを中止する際にプレドニゾロンを中止する場合は漸減法が推奨される(ザイティガ適正使用ガイドに記載があります)ため、漸減でなく急に中止となっている場合は疑義照会したほうがよいかと思います。

プレドニゾロン併用の目的

ザイティガのCYP17阻害作用により、糖質コルチコイドであるコルチゾールの合成が減少すると、フィードバック作用が働き視床下部-下垂体-副腎系の亢進が起こりACTH濃度が上昇し、これにより鉱質コルチコイド作用を有するステロイド濃度が上昇し、高血圧、低カリウム血症、体液貯留等が症状としてあらわれます(鉱質コルチコイド過剰状態)。

ザイティガ投与時に糖質コルチコイド(プレドニゾロン)の併用をすることで、前述のフィードバック作用による鉱質コルチコイドの上昇を予防、緩和することがてきます。

③外科的又は内科的去勢術との併用の有無【用法・用量に関連する使用上の注意】

「外科的又は内科的去勢術と併用しない場合の有効性及び安全性は確立していない」ため、原則これらの併用があるはずなので確認します。

LH-RH アゴニスト,アンタゴニストなど(注射薬)や外科的去勢がない場合は疑義照会対象となります。

④どちらの効能で使われているかの確認

効能により、プレドニゾロンの用法や併用薬剤などが異なるため、まず、前立腺がんのホルモン治療を受けたことがあるかなどを確認し、どちらの効能に該当するかを特定する必要があります。

1.前立腺がんのホルモン治療を受けたことがない場合

この場合は「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」の効能かと思います。

処方例:ザイティガ+プレドニゾロン5mg1日1回+ADT+場合により1〜2週間程度の抗アンドロゲン剤

2.前立腺がんのホルモン治療を受けたことがある場合

どちらの場合もあり得ます。

治療が数カ月であれば「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」のこともあり得ます。

処方例:ザイティガ+プレドニゾロン5mg1日1回+ADT

一方、ある程度長く治療し、効かなくなったということであれば「去勢抵抗性前立腺がん」の可能性が高いかと思います。

処方例:ザイティガ+プレドニゾロン5mg1日2回+ADT

内分泌療法未治療にもかかわらず、プレドニゾロンが分2であったり、アンドロゲン除去療法(ADT)との併用がないようであれば疑義照会したほうが良いかと思います。

⑤用法の確認【用法及び用法・用量に関連する使用上の注意】

ザイティガは食事の影響によりCmax及びAUCが大幅に上昇する(食後(高脂肪食)でAUCが10倍)ため、「食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること」、とされており空腹時投与(食事の1時間以上前かつ食後2時間以降)であるため用法を確認します。

なお、承認の用法内でも服用時間によってAUCが7倍程度まで変動しますが、製薬会社によると有害事象の発現に差はないためこれは許容範囲とのことです。

ただ、個人的には承認用法内でAUCが7倍にまで変動するのは用法の設定が適切でないと感じます。

食事の影響

絶食時投与と比較して、Cmax及びAUC∞は、それぞれ食後(低脂肪食)で7倍及び5倍、食後(高脂肪食)で17倍及び10倍増加するため、空腹時投与となっています。

また、承認の用法内(食事の1時間以上前かつ食後2時間以降)でも下記のようにかなりAUCに幅があります。「投与法A」と比較して、B,C,DではCmax及びAUC∞がそれぞれ2及び1.6倍、12及び7.5倍、10及び7倍増加します。

「朝食前1時間前」という処方の場合は投与法B、「朝食後2時間後」の処方の場合は投与法Cに近いかと思います。投与法Bと比べて投与法CではAUCが4〜5倍となります。

・投与法A:投与の4時間後に食事
・投与法B:投与の1時間後と4時間後に食事
・投与法C:食後の2時間後に投与し、更に投与の2時間後に食事
・投与法D:食後の2時間後に投与し、更に投与の4時間後に食事

⑥ALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビン値の確認【用法・用量に関連する使用上の注意】★継続確認項目

ALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビン値は値により休薬や投与中止の基準となるため、患者が検査値を持参しているようであれば毎回確認する必要があります。

検査値を持参しているかを毎回確認し、持参している場合は確認します。

持参がない場合は薬歴に「検査値持参なし」と書いておくとわかりやすいかと思います。

「ALT(GPT)、AST(GOT)値>施設正常値上限の20倍又はビリルビン値>施設正常値上限の10倍」の場合

この場合は投与中止となります。

「ALT(GPT)、AST(GOT)値>施設正常値上限の5倍又はビリルビン値>施設正常値上限の3倍」の場合

この場合は休薬となり、検査が回復したら減量して再開となります。

休薬後の再開基準

検査値が投与前値若しくはALT(GPT)、AST(GOT)値が施設正常値上限の2.5倍以下かつビリルビン値が施設正常値上限の1.5倍以下に回復するまで休薬する。

回復後は750mgに減量して投与を再開する。

肝機能検査値異常が再発した場合、検査値が投与前値若しくはALT(GPT)、AST(GOT)値が施設正常値上限の2.5倍以下かつビリルビン値が施設正常値上限の1.5倍以下に回復するまで休薬する。

回復後は500mgに減量して投与を再開する。検査値が再度悪化した場合は投与を中止する。

⑦CYP2D6基質の併用の有無【併用注意】

CYP2D6により代謝される薬剤と併用する場合は、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性があるため確認します。

具体的な薬剤名は添付文書には「デキストロメトルファン、プロパフェノン、フレカイニド、ハロペリドール等」と記載されています。

具体的な上昇率はメジコンのみしか記載がありません。併用により、メジコンのAUCが3倍になる報告があるため疑義照会しアスベリンなどの他の咳止めに変更するのがよいかと思います。

⑧CYP3A4誘導剤の併用の有無【併用注意】

CYP3A4誘導剤により、ザイティガの効果が減弱する可能性があるため、確認します。

具体的な薬剤名は添付文書には「リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、リファブチン、フェノバルビタール等」と記載されています。

具体的な低下率はリファンピシンのみしか記載がありません。併用により、ザイティガのAUCがおよそ半分になる報告があるため疑義照会はしたほうがよいかと思います。

ただし、代替が難しいのでそのままになる可能性も高いかと思います。

⑨疾患名の確認【販売名類似による注意】

前述しておりますが、「ザイティガ」は、前立腺肥大の薬剤である「ザルティア」と名称が類似しており、医師による処方ミスも報告されているため、服薬指導時に疾患名の確認が必要です。

口頭もしくは薬情に記載されている薬効をみせて「前立腺がん」で間違えないか確認します。

ザイティガの服薬指導で伝えること

①用法・用量の説明【用法・用量】

食事により大幅にAUCが上昇するため用法を守ることを説明します。また、1回4錠であるため間違えないように注意を促します。

②血圧の上昇、低カリウム血症、体液貯留の説明【重要な基本的注意】

血圧の上昇、低カリウム血症、体液貯留があらわれることがあるので説明します。具体的な症状に関しては指導用冊子に記載があるためこれを用いて説明します。

血圧が高くなっている時のサイン

● めまいがする
● ふらふらする
● 頭が痛い
● のぼせたような感じがする など

体内ミネラルバランスが崩れている時のサイン

● 筋力が落ちた(力が入りにくい)
● 筋肉がけいれんする
● 体がだるい
● 動悸がはげしい など

体がむくんでいる時のサイン

● 急に体重が増えた
● 足がむくむ
● 息苦しい
● 乾いた咳が出る など

③肝機能障害の説明【重要な基本的注意】

劇症肝炎やALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビンの上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがあるため説明します。具体的な症状に関しては指導用冊子に記載があるためこれを用いて説明します。

肝臓のはたらきが悪くなっている時のサイン

● 体調が悪い
・食欲がわかない ・気分が悪い
・胸がむかむかする ・体がだるい
・お腹が痛い ・下痢気味である
・熱がある など
● おしっこの色が濃くなった
● 白目部分が黄色みがかる など

④血小板減少・横紋筋融解症【重大な副作用】

血小板減少・横紋筋融解症は指導用冊子に記載されているため説明します。

血小板減少が生じている時のサイン

● 手足に点状出血がみられる
● あおあざができる
● 出血しやすい(歯ぐきの出血や鼻血) など

横紋筋融解症が生じている時のサイン

● 手足・肩・腰・その他の筋肉が痛む
● 手足がしびれる
● 手足に力が入らない
● こわばる
● 全身がだるい
● 尿の色が赤褐色になる など

⑤避妊の説明【添付文書記載なし】

腹立たしいことに添付文書にも指導用冊子にも記載がされておらず、製薬会社に全く周知しようとする姿勢がみられませんが、「適正使用ガイド」には下記の旨の記載がされているため説明します。

アビラテロン又はその代謝物が精液に分泌されるかは不明ですが、「妊婦と性的行為を持つ場合」は、コンドームを使用し、「妊娠の可能性がある女性と性的行為を持つ場合」は、コンドームに加え他の効果的な避妊法を併用するように指導すること

ザイティガの服薬指導薬歴例

S)前立腺がん
O)肝臓悪いと言われたことなし。併用ゴナックス注射。

A)
用法を守ること、1回4錠のこと説明。
指導用冊子を使い血圧上昇、めまい、頭痛、動悸、黄疸、だるさ、体重増加、むくみ、あざ、出血、筋肉痛、手足に力はいらない、尿濃・赤褐色など出る際はすぐ医師に連絡し受診するよう説明。

「妊婦と性的行為を持つ場合」は、コンドームを使用し、「妊娠の可能性がある女性と性的行為を持つ場合」は、コンドームに加え他の効果的な避妊法を併用するよう説明。(性的活動のある男性患者の場合)

P)ALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビン値の確認【継続確認項目】

泌尿器薬剤別服薬指導
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