ミニリンメルトの服薬指導

ミニリンメルト
今回は2013年に発売された「尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症」及び「中枢性尿崩症」の治療薬であるデスモプレシンを成分とするミニリンメルトOD錠の服薬指導をまとめました。

薬局では夜尿症の用途で使われるのがほとんどだと考えられるため、ミニリンメルトの「夜尿症用」の服薬指導をまとめています。

ミニリンメルトの服薬指導では主に体に過剰な水分が体にたまる「水中毒」に関連した注意すべき点が存在します。「確認しなければならないこと」は少ないのですが、「伝えなければならないこと」は多いため、事前に製薬会社から患者指導用の冊子を取り寄せて使うとよいでしょう。

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ミニリンメルトの概要

ミニリンメルトの成分であるデスモプレシンの剤形は従来では経鼻製剤のみでしたが、ミニリンメルトOD錠が発売されたことで経口投与の選択肢が増えました。

欧米では夜尿症患者へのデスモプレシン経鼻製剤投与時に、デスモプレシン経口製剤に比べて低ナトリウム血症が多く報告されていることから、夜尿症に対する治療は経鼻製剤から経口製剤へと切り替えが進められてきました。

国内ではデスモプレシン経鼻製剤は安全に使用されていますが、現在ではほとんどがミニリンメルトOD錠の処方となっています。
服薬指導難度

効能

・尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症
・中枢性尿崩症

用法・用量(夜尿症)

用法・用量は1日1回就寝前に120μgから経口投与し、効果不十分な場合は1回240μgに増量することができるとされています。

ミニリンメルトOD錠の規格は60μg、120μg、240μgの3規格販売されていますが、60μgの規格の効能は中枢性尿崩症のみであり夜尿症の効能はありません。

名前の由来

成分の期待効果である「Minimize Urine」からの造語(MINIRIN:ミニリン)に口腔内崩壊錠の特性(MELT:メルト)を加えたものとされています。

指導せん

患者指導用の冊子が存在するため取り寄せておいて使うことを強く推奨します。

この冊子には具体的な水分摂取の目安などのそもそも添付文書上に記載のないことも書いてあるため服薬指導の際は必須といってもよい程です。なお、取り寄せる時間がない時は製薬会社のホームページから印刷することもできます。

指導せんの改訂(2019年4月指導せん改訂に伴う追記)

2019.4 にミニリンメルトの指導冊子の改訂がありました。

この改訂に伴い、従来記載されていた下記の2点がなくなっているため、今後は口頭で伝える必要があるため注意が必要です。

・寝る前の排尿すること
・水中毒の症状としての体のだるさ

ミニリンメルトの服薬指導で確認すること

①夕食後から寝る前までの時間【指導用の冊子より】

夕食後から寝る前までの間隔が2時間以上開いているかを確認します。

添付文書上にこの記載はないのですが、指導用の冊子には夕食後2~3時間以上あけて服用するように記載されています。 

夕食後から寝る前までの時間が短く、食後2時間以内に服用する場合は野菜や果物などの食事の水分にも注意をし、水分摂取はコップ1杯までにしこれを超える場合は服用しないように記されています。また、この場合でも食後30分以内の服用は吸収が低下するため避けることとされています。

添付文書の薬物動態の項目には食後に服用した場合には空腹時と比べてAUCとCmaxともに⅓〜¼程度減少することが記されています。

一方で添付文書の用法及び用量に関連する使用上の注意には「食直後投与は目的とする有効性が得られない可能性があるため避けることが望ましい」となぜか食後ではなく食直後を避けるように記載されています。

②年齢の確認【重要な基本的注意】

ミニリンメルトは原則として6歳以上の患者に使用することされています。

これは幼児(6歳未満)の夜尿は生理的なものと考えられること、また、国内の臨床試験においては、6歳以上の患者を対象に有効性が確認されていることから設定されています。

そのため、6歳未満で処方があった際は念のため疑義照会したほうがよいでしょう。ただし、あくまで禁忌ではなく重要な基本的注意の項目での記載である点は留意したうえで問い合わせをします。

③腎機能障害の有無【中等度以上の腎機能障害禁忌】

中等度以上の腎機能障害が禁忌となるため腎機能が悪いといわれたことがないかを聴取します。この項目は小児であればあまり該当することはないかと思いますが、まれに成人の夜尿症で使用する場合などには確認したほうが良いかと思います。

なお、腎機能により減量が必要な薬剤の患者対応に関しては以下をご参照ください。

腎機能により減量が必要な薬剤の患者対応
今回は腎機能により減量が必要な薬剤の患者対応の個人的な考え方と対応をまとめました。 調剤薬局で触れる機会の多い薬剤のなかにも腎機能に応じて減量が必要な薬剤は多く存在しています。これらが処方された場合の対応をまとめました。なお、腎機能低下が禁忌の薬剤の対応もこれに準じます。

④心不全の有無【心不全の既往歴又はその疑いがあり利尿薬による治療を要する患者が禁忌】

心不全の既往歴又はその疑いがあり利尿薬による治療を要する患者が禁忌となるため、今まで心不全といわれたことがないかを聴取します。

腎機能障害同様に、この項目は小児であればあまり該当することはないかと思いますが、まれに成人の夜尿症で使用する場合などには確認したほうが良いかと思います。

ミニリンメルトの服薬指導で伝えること

ほとんどの内容は指導冊子に記載があるので、これを見せながら説明しますが、水中毒の症状の「だるさ」や「寝る前に排尿すること」の部分は指導冊子から記載が抜けているため別途口頭で説明する必要があります。

①薬の取り出し方【指導冊子より】

ブリスターシートから取り出す際には、ミシン目に沿って1錠分切り離し裏面のシートを剥がした後、指の腹で押し出すことを説明します。

この際に「欠けや割れが生じた場合でもかけらも含めて全量服用すること」及び「ぬれた手で薬をさわらないこと」を説明します。なお「ぬれた手で薬をさわらないこと」は添付文書には記載がなく指導用の冊子に記載されています。

②服用方法の説明【指導用の冊子より】

舌下において水無しで服用することを説明します。添付文書では「水分摂取管理の重要性を考慮し本剤は水なしで飲むこと。なお、本剤は口の中(舌下)に入れると速やかに溶ける」と記載されています。

添付文書の表現だと「舌下投与すること」とは明示されておらず「速やかに溶ける」とだけ書いてあるので、舌下でなくともよいと思いがちですが、ミニリンメルト指導用冊子では口の粘膜からも吸収されて作用するので舌下で水無しで飲むことと記載があるので注意が必要です。

このようにOD錠ではありますが、他の水ありでも飲めるOD錠とは異なり水無しでないといけない、という点と舌下投与で服用という点に注意が必要です。

なお、インタビューフォームには「水なしと水ありで服用した場合の生物学的同等性試験はなく、口腔内で溶解させた際に一部は口腔粘膜から吸収されることが示唆されていることから、水なしと水ありの服用では生物学的に同等ではない可能性が高い」と記載されています。

③水中毒の症状【重要な基本的注意】+【指導用の冊子より】

ミニリンメルトの最も注意が必要な点は、過剰な水分が体にたまる「水中毒」の症状を伝えます。

添付文書の記載の「水中毒を示唆する症状(倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)があらわれた場合には直ちに投与を中断し、速やかに医師に連絡すること」を説明します。

なお、2019.4に指導せんの改訂があり、従来指導せんに記載されていた「体のだるさ」の記載がなくなったため、だるさに関しては口頭で伝える必要があるため注意が必要です。

また、指導冊子には水中毒の症状として、ほかにも「食欲低下、めまい、むくみ、昏睡、けいれん」が記載されています。

④水分摂取(飲水)の注意【重要な基本的注意】+【指導用の冊子より】

下記の3点を説明します。

・服用中は過度な飲水をさけること
・投与の2~3時間前(夕食後)より翌朝迄の飲水は極力避けること
・過度に飲水してしまった場合は本剤の投与を行わないこと

添付文書では具体的にどの程度の飲水まで許容できるかの記載がありませんが、指導用の冊子には服用する2~3時間前より翌朝迄の飲水は「コップ1杯程度」にするように記載があるためこれを目安として説明します。また、多めに飲んだ際は服用をやめることを説明します。

⑤発熱や胃腸炎等の際は服用を中止すること【重要な基本的注意】

水分補給が必要となる急性疾患(全身性感染症、発熱、胃腸炎等)を合併している場合は本剤の投与を中止することを説明します。

こういった発熱、胃腸炎等の際に中止する薬剤としては他にメトグルコなどのメトホルミン製剤がありますが、このような服薬中止基準は伝え忘れてしまうケースが多いので注意が必要です。

なお、ミニリンメルトの場合は添付文書上は「投与を中止すること」とのみ記載があり「受診すること」とは記載がありませんが、メトホルミンの場合は「いったん服用を中止し、医師に相談すること」とされているため説明の仕方が異なる点に注意が必要です。

⑥寝る前に排尿すること【重要な基本的注意】指導冊子に記載なし

就眠前の排尿を徹底することを説明します。

この内容は2019.4に改訂された指導冊子からは記載がなくなっているため、今後は口頭で伝える必要があるため注意が必要です。

⑦他科受診の注意【重要な基本的注意】

他院や他科を受診する際には、本剤投与中である旨を担当医師に報告することを説明します。

⑧他の薬剤の同時服用の際の順番【指導冊子より】

舌下で水なしで飲む必要があるため、寝る前に同時に飲む薬剤がある場合は先に他の薬を飲んでからミニリンメルトを服用するように説明します。

このことは指導用の冊子のQ&Aの項目に記載があり、非常に見落としやすいので一度目を通しておくと良いと思います。

ミニリンメルトの薬歴例

S)おねしょ
O)併用なし。夕食後から寝る前まで3時間
A)
くすりの取り出し方説明、割れが生じた場合でもかけらも含めて全量服用すること、ぬれた手で薬をさわらないこと説明。舌下において水無しで服用することを説明。

倦怠感、頭痛、吐き気、めまいなどがでる場合はすぐに医師に連絡指示。
服用中は過度な飲水をさけること。また投与の2~3時間前より翌朝迄の飲水は極力避けること。コップ1杯より多く飲水してしまった場合は本剤の投与を行わないことを説明。

発熱、胃腸炎等水分補給が必要となる場合は服用しないこと説明。就眠前の排尿を徹底することを説明。
他科受診の際には伝えるよう説明。

寝る前に同時に飲む薬剤がある場合は先に他の薬を飲んでからミニリンメルトを服用するように説明
P)副作用確認

小児薬剤別服薬指導
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