今回は2019年4月に発売された末梢性神経障害性疼痛治療剤であるタリージェの服薬指導をまとめました。
リリカの類薬であり、服薬指導の際に確認することや伝えることはリリカとほとんど同じ内容となっています。
「リリカの服薬指導」との違いとしては、タリージェには指導せんに肝障害の記載があるので肝障害の説明をする点が異なります(リリカにも肝障害の副作用はあるので同様に説明してもOK)。
タリージェの概要
服薬指導難度
効能
効能末梢性神経障害性疼痛
包装・規格
タリージェ錠2.5mg:(PTP)100錠
タリージェ錠 5 mg:(PTP)100錠
タリージェ錠10mg:(PTP)100錠
タリージェ錠15mg:(PTP)100錠
用法・用量
通常、成人には、ミロガバリンとして初期用量 1 回 5 mgを1 日 2 回経口投与し、その後 1 回用量として 5 mgずつ 1 週間以上の間隔をあけて漸増し、 1 回15mgを 1 日 2 回経口投与する。
なお、年齢、症状により 1 回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、 1 日 2 回投与する。
名前の由来
Targeting を由来とした“Tar”、Ligand を由来とした“Lig”を組み合わせ、「タリージェ (Tarlige)」と命名されています。
指導せん
「タリージェ錠による治療を受ける患者さんへ」という指導せんがあり、服薬指導時に伝える必要のある内容が網羅されているため、用意しておくのがよいかと思います。
リリカの指導せんには「視覚異常」の内容の「抜け」がありますが、タリージェではきちんと記載されています。また、タリージェの指導せんには肝機能障害の記載がある点もリリカの指導せんと異なる点です。
製薬会社のホームページからも印刷可能です。
一包化【2020年2月ごろの無包装状態での安定性改良により改訂】
割線があるので、半割や分包ができると誤解しがちですが、温度、湿度に弱くPTPから出した状態での安定性が悪く、類縁物質増加や含量低下ですぐ規格外になるため実際には分包できないため注意が必要です。
<25℃/93%RH>
2.5mg、5mg 、10mg錠:2 週時点で類縁物質増加(規格外)
15mg 錠:4 週時点で類縁物質増加(規格外)
<40℃/75%RH>
2.5mg、5mg 、10mg錠:3 日時点で類縁物質増加(規格外)、含量低下(規格外)
15mg 錠:3 日時点で類縁物質増加(規格外)、7 日時点で含量低下(規格外)
タリージェは当初は無包装状態での安定性がとても悪く、高温多湿条件では数日で含量低下で規格外となっていましたが、2020年2月ごろ(流通開始は春ごろ)に無包装状態での安定性改良を行っているため、現在では安定性はある程度改善されています。
現在の製剤では「多湿」条件下では問題なさそうですが、「高温+多湿」条件下では2週時点では全て規格内ですが、4 週時点では類縁物質増加で規格外となります。
一包化する場合は、少なくとも夏場は防湿保管するように説明したほうがよいかと思います。
<25℃/75%RH>
6ヶ月 変化なし
<40℃/75%RH>
2.5mg 錠、5mg 錠、10mg 錠:4 週時点で類縁物質増加(規格外)
・2週時点では規格内(製薬会社に確認しました)
割線がある理由
分包できないのになぜ割線があるか疑問ですが、半割での安定性試験は「25℃/75%RH」という上記の試験よりもゆるい条件で行われており、下記の結果とのことでした。(製薬会社問い合わせ)
10mg、15mg錠は4 週では規格内ですが、温度条件がゆるいので分包しないほうがよいでしょう。
<25℃/75%RH>
5mg錠:2週は規格内 4 週時点で類縁物質増加(規格外)
10mg、15mg錠:4 週時点で規格内
タリージェの服薬指導で確認すること
①腎機能障害の有無【用法・用量に関連する使用上の注意】
タリージェは腎機能(クレアチニンクリアランス)により減量が必要なため腎臓が悪いと言われていないかを確認します。
クレアチニンクリアランスが60を切ると、減量基準に該当するため、高齢者であればそれなりに減量基準に該当する可能性があります。
なお、腎機能により減量が必要な薬剤の患者対応に関しては以下をご参照ください。
タリージェの服薬指導で伝えること
指導せんにすべて記載されているのでこれを用いて説明します。
①運転や転倒の注意【重要な基本的注意】指導せんに記載あり
めまいや眠気などが起こることがあるため服用中は自動車の運転等危険を伴う機械操作に従事しないよう説明します。
また、転倒により骨折等をおこすおそれがあるため、注意を促します。
めまい、傾眠、意識消失等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
特に高齢者ではこれらの症状により転倒し骨折等を起こすおそれがあるため、十分に注意すること
②自己判断での中止をしないこと【重要な基本的注意】指導せんに記載あり
急激な投与中止により、不眠、悪心、頭痛、下痢、食欲減退等の症状があらわれることがあるので、自己判断での中止をしないように説明します。
本剤の急激な投与中止により、不眠症、悪心、下痢、食欲減退等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと
③体重増加の注意【重要な基本的注意】指導せんに記載あり
体重増加が起こることがあるため、体重増加が認められる場合は医師に申し出るよう説明します。
本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。
特に、投与量の増加又は長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
④視覚異常の説明【重要な基本的注意】指導せんに記載あり
弱視、視覚異常、霧視、複視等の眼障害が生じる可能性があるため、見え方の異常が認められる場合は受診するように説明します。
本剤の投与により、弱視、視覚異常、霧視、複視等の眼障害があらわれることがあるので、診察時に、眼障害について問診を行うなど注意し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
⑤飲酒をさけること【併用注意】指導せんに記載あり
アルコール(飲酒)は併用注意のため控えるよう説明します。
これは、相互に中枢神経抑制作用を増強すると考えられるため設定されています。
⑥肝機能障害の説明【重大な副作用】指導せんに記載あり
重要な基本的注意には記載がありませんが、指導せんに記載があるので併せて説明するのがよいかと思います。
指導せんには症状として「全身倦怠感、食欲不振など」と記載されているのでこれを説明します。
なお、肝機能障害の一般的な症状である黄疸は併せて説明したほうがよいかと思います。
肝機能障害( 頻 度 不 明 )
AST(GOT)、ALT(GPT)上昇等の肝機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、全身倦怠感や食欲不振等の初期症状を含む異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
タリージェの服薬指導薬歴例
S)痛み
O)腎臓悪いと言われたことなし
A)
ねむけ、めまいでることあるので運転など避けるよう指示。転倒注意。自己判断での中止をしないよう説明。
体重増加や視覚異常出る際は受診指示。飲酒避けること説明。
だるさ、黄疸、食欲低下出る場合はすぐ受診指示。
P)副作用確認
コメント
実際には分包できないため注意が必要です。
<25℃/93%RH>
2.5mg、5mg 、10mg錠:2 週時点で類縁物質増加(規格外)
15mg 錠:4 週時点で類縁物質増加(規格外)
この部分なのですが、インタビューフォーム(第5版)では同条件で『変化なし』となっています。他の情報源があるのでしょうか??
コメントありがとうございます。
タリージェは当初は無包装状態での安定性が悪く、2020年2月ごろ(流通開始は春ごろ)に無包装状態での安定性改良を行っているため、現在は安定性はある程度改善されています。
この変更は認識はしていたのですが、記事の改訂を失念しており、改良前の安定性データのままの記載となっていました。
該当部分を改訂・追記しましたのでご確認頂ければと思います。
改良が行われていたのですね。
回答ありがとうございました。