
今回は薬剤名称類似ミスの追記品目をまとめました。
近年承認されたトルリシティ皮下注アテオスの1.5mg規格、ジェネリックが発売されたジクアス点眼液、アレジオンLX点眼液などの品目のほかにも、間違えやすい製剤を追記しています。
・厚生労働省の一般名処方マスタに収録されている一般名は名称を赤色にしています。
・後発医薬品が存在しない薬剤など、一般名処方マスタにない薬剤は名称を青色にしています。この場合は製薬会社やレセコン会社が提供している一般名を記載しているため、一般名処方マスタに収録されているものと比べてレセコンにより一般名が異なってくる可能性が高くなります。
なお、今回の内容は、下記の「薬剤名称ミスのまとめ」に後日追記予定となります。
- ①【般】「クエチアピン錠」と「クエチアピン徐放錠」
- ②【般】「ゾニサミド錠」と「ゾニサミド口腔内崩壊錠:TRE」
- ③【般】「ベンフォチアミン(B1)・B 6・B12配合カプセル 」 と「フルスルチアミン・B2・B6・ B12配合カプセル」と「チアミンジスルフィド・B6(25mg)・B12配合カプセル」
- ④【般】「シルデナフィル錠:RE」と「シルデナフィルクエン酸塩錠」
- ⑤「マイクロファインプラス」と「マイクロファインプロ」
- ⑥「ナノパスニードルⅡ34G 4mm」と「ナノパスニードルⅡ34G 3mm」
- ⑦【般】「ジクアホソルNa点眼液3%(1日6回)」と「ジクアホソルナトリウム点眼液3%(持続性)」
- ⑧「【般】エピナスチン塩酸塩点眼液0.05% 」と「【般】エピナスチン塩酸塩点眼液0.1% 」
- ⑨「【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%」と「【般】デキサメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%」と「【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼点耳点鼻液0.1%」と「【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼液0.1%」と「【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼液0.01%」
- ⑩「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」と「トルリシティ皮下注1.5mgアテオス」
- ⑪マンジャロ皮下注アテオス2.5mgと5mgと7.5mgと10mgと12.5mgと15mg
①【般】「クエチアピン錠」と「クエチアピン徐放錠」
●【般】クエチアピン錠:セロクエル錠、クエチアピン錠「アメル」など:12.5mg/25mg/50mg/100mg/200mg
●【般】クエチアピン徐放錠:ビプレッソ徐放錠:50mg/150mg
ビプレッソは 2017年10月 発売の「双極性障害におけるうつ症状の改善」を効能とする1日1回就寝前とし、食後 2 時間以上あけて経口投与する徐放性製剤です。
50mgが共通規格のため、「クエチアピン徐放錠50mg」の処方で誤ってセロクエルを調剤してしまう過誤が起こりがちです。
②【般】「ゾニサミド錠」と「ゾニサミド口腔内崩壊錠:TRE」
●【般】ゾニサミド錠:エクセグラン錠、ゾニサミド錠「アメル」、ゾニサミド錠EX「KO」:100mg
●【般】ゾニサミド口腔内崩壊錠:TRE/トレリーフOD錠、ゾニサミドOD錠TRE「アメル」:25mg/50mg
トレリーフOD錠はパーキンソン病治療薬であり、一般名及び後発品には区別しやすくするための「TRE」の文字が記載されています。
エクセグランの一般名にはこういった識別しやすくする文字の記載はありませんが、共通規格はないので規格に注意すれば過誤を防ぐことができます。なお、エクセグランの一部の後発品では商品名に「EX」の文字が記載されているものもあります。
③【般】「ベンフォチアミン(B1)・B 6・B12配合カプセル 」 と「フルスルチアミン・B2・B6・ B12配合カプセル」と「チアミンジスルフィド・B6(25mg)・B12配合カプセル」
●【般】ベンフォチアミン(B1)・B 6・B12配合カプセル :ビタメジン配合カプセルB25/50
●【般】フルスルチアミン・B2・B6・ B12配合カプセル: ビタノイリンカプセル:25/50(50mgは錠剤の後発品あり)
●【般】チアミンジスルフィド・B6(25mg)・B12配合カプセル:ジアイナ配合カプセル:25mg
〇〇チアミン含有のビタミンB群配合カプセルで規格(mg)も共通であるため、一般名処方の際に自店に在庫があるもので調剤してしまう過誤が懸念されます。
具体的には【般】フルスルチアミン・B2・B6・ B12配合カプセルの処方で誤ってビタメジン配合カプセルを調剤してしまうなどの過誤などが想定されます。
なお、ビタノイリンカプセルは2026 年1 月を目途に販売中止予定です。
④【般】「シルデナフィル錠:RE」と「シルデナフィルクエン酸塩錠」
●【般】「シルデナフィル錠:RE」:レバチオ錠、シルデナフィル錠RE「JG」:20mg
●【般】「シルデナフィルクエン酸塩錠」:バイアグラ錠、シルデナフィル錠VI「DK」:25mg/50mg
レバチオは肺動脈性肺高血圧症の治療薬でありその「一般名」と「後発品の商品名」には「RE」の文字が記載されています。
バイアグラは勃起不全治療剤であり、その「後発品の商品名」にはバイアグラの頭文字にあたる「VI」の文字が記載されています。一般名は自費薬剤のため一般名マスタに収載されていないのでレセコンによって単に「シルデナフィルクエン酸塩錠」のような区別がつかない一般名の場合がありますが、自費処方であることや共通規格がないことから区別することができるかと思います。
⑤「マイクロファインプラス」と「マイクロファインプロ」
●マイクロファインプラス:31G×5mm、8mm、32G×4mm、6mm、
●マイクロファインプロ:32G×4mm、34G×4mm
マイクロファインプロは2019年に発売されました。
針キャップが細長い形状から山型(ペンニードルプラス似てる)になりつまみやすくなっていたり、針の付け根のハブと呼ばれる部分が広く設計がされており、注射時の力のかけすぎを補正するよう設計されています。
同じ製剤のなかでの過誤に注意
同じ製剤のなかでのGやmmの過誤防止の観点からはマイクロファインプラスはGが同じものはありますが、mmが同じものはないので「mm」に注意することで過誤が防げますが、マイクロファインプロは「mm」が同じで「G」が異なるので「G」に注意する必要があります。
マイクロファインプラスとプロとの過誤に注意
マイクロファインプラスとプロとの過誤防止の観点からは共通の4mmの場合に注意が必要です。
マイクロファインプラス32G×4mmとマイクロファインプロ32G×4mmとの過誤が想定されるので注意が必要です。
⑥「ナノパスニードルⅡ34G 4mm」と「ナノパスニードルⅡ34G 3mm」
●ナノパスニードルⅡ:34G×4mm、3mm
3mmは2019年に発売された従来のナノパスニードルⅡよりも針を1mm短くし、小児、やせ型の方などの皮膚の薄い患者にも使いやすいように改良した製剤です。
「ナノパスJr.」という名称で呼ばれますが、添付文書などでの正式名称はJr.ではなく「ナノパスニードルⅡ34G 3mm」のため従来の4mmとの過誤に注意が必要です。
3mmは箱のカラーデザインがほぼ同じなのが残念ですが「Jr.」の文字と「パンダの絵」が入っているのである程度見分けがつきやすくなっています。
⑦【般】「ジクアホソルNa点眼液3%(1日6回)」と「ジクアホソルナトリウム点眼液3%(持続性)」
●【般】ジクアホソルNa点眼液3%(1日6回):ジクアス点眼液3%、ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」
●【般】ジクアホソルNa点眼液3%(持続性):ジクアスLX点眼液3%
ジクアス点眼液は用法が1日6回ですが、新製剤のジクアスLXは添加物のPVPを加えることで用法が1日3回となった製剤です。規格が同じなので注意が必要です。
ジクアス点眼液の一般名は「1日6回」という文言が目立つため識別性が良いですが、一般名処方された際に処方の用法が1日4回など「6回でない用法の場合」は患者が薬情に記載の一般名を見て6回で使用してしまう懸念があるため、患者に対して、「一般名は6回と書いてあるが医師の指示は4回なので間違えないように」などと説明する必要があります。
また、処方が単に「ジクアホソルナトリウム点眼液」という記載できた時はLXなのか判断がつきにくいので、疑義照会が必要になる場合もあるかと思います。
なお、ジクアス点眼液には塩化ベンザルコニウムが含有しませんが、ジェネリック製剤では含有するため注意が必要です。
⑧「【般】エピナスチン塩酸塩点眼液0.05% 」と「【般】エピナスチン塩酸塩点眼液0.1% 」
●【般】エピナスチン塩酸塩点眼液0.05%:アレジオン点眼液0.05%、エピナスチン塩酸塩点眼液0.05%「ニットー」
●【般】エピナスチン塩酸塩点眼液0.1% 」:アレジオンLX点眼液、エピナスチン塩酸塩LX点眼液0.1%「ニットー」
アレジオンLX点眼にジェネリックが発売されたことから一般名マスタに一般名が収載されました。
特に「持続」などの区別を明確にする名称とはなっておらず、濃度でしか区別がつかないので過誤に注意が必要となります。
なお、LX製剤のジェネリックの「ニットー」のものには先発品には含まれていない塩化ベンザルコニウムを含有するため注意が必要です。AGのエピナスチン塩酸塩LX点眼液0.1%「SEC」には含有していません。
⑨「【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%」と「【般】デキサメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%」と「【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼点耳点鼻液0.1%」と「【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼液0.1%」と「【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼液0.01%」
●【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%:リンデロン点眼・点耳・点鼻液、サンベタゾン眼耳鼻科用液など
●【般】デキサメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%:オルガドロン点眼・点耳・点鼻液0.1%
●【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼点耳点鼻液0.1%:ビジュアリン眼科耳鼻科用液0.1%
●【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼液0.1%(他の濃度もあります):サンテゾーン点眼液、D・E・X点眼液「ニットー」
●【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼液0.01%:リンデロン点眼液0.01%
他の点眼点耳点鼻液との過誤に注意
点眼点耳点鼻液として処方が多いのはベタメタゾンであるリンデロン点眼点耳点鼻液ですが、他の点眼点耳点鼻液製剤を認識していないと、【般】デキサメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%の処方が来た時に誤ってリンデロン点眼点耳点鼻液として調剤してしまう過誤などが想定されます。
点眼点耳点鼻液と点眼液との過誤にも注意
「【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼点耳点鼻液0.1%」に対して濃度の薄い「【般】ベタメタゾンリン酸エステルNa点眼液0.01%」が存在します。
また、「【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼点耳点鼻液0.1%」に対しては同じ濃度の「【般】メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa点眼液0.1%」が存在するので点眼点耳点鼻液と点眼液との過誤にも注意が必要です。
⑩「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」と「トルリシティ皮下注1.5mgアテオス」
従来では「0.75mgを週に1回」という単一用量でしたが、最大用量として「1.5mgを週に1回」投与の用量が2024年6月に追加となりました。
これに伴い従来の0.75mg規格に加えて新たに「1.5mg」規格が追加となります。まだ、1.5mg製剤は販売はしておりませんが、規格追加は販売開始のアナウンスがない場合も多いので現時点から監査時には規格の確認をしておくことを強くお勧めします。
⑪マンジャロ皮下注アテオス2.5mgと5mgと7.5mgと10mgと12.5mgと15mg
アテオス製剤のトルリシティが長い間単一規格だった印象もあり、マンジャロも単一規格と捉えがちですが、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgと規格が多いため規格違いの過誤に注意が必要です。
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