以前よりオキシコドン錠の過誤注意情報は別記事でもご紹介していましたが、2020年6月の厚労省の一般名マスタに「【般】オキシコドン錠(乱用防止製剤)」が新たに収載されました。
これにより、もともとわかりにくい一般名と商品名がより一層わかりにくくなったので今回まとめました。
知っておかないと極めて過誤を起こしやすく危険なので、すべての薬剤師が認識しておいたほうがよい内容となります。
一般名と商品名
「徐放錠」かそうでないかと、「乱用防止製剤」かそうでないかで4種類の一般名に分類されます。後述してますが、将来的には乱用防止製剤以外は販売中止となる予定で、現在が「最も紛らわしい移行期」となります。
①【般】オキシコドン徐放錠:オキシコンチン錠、オキシコドン徐放錠「第一三共」
②【般】オキシコドン徐放錠(乱用防止製剤):オキシコンチンTR錠、 オキシコドン徐放錠NX「第一三共」
③【般】オキシコドン錠:オキシコドン錠「第一三共」
④【般】オキシコドン錠(乱用防止製剤):オキシコドン錠NX「第一三共」
5mg/10mg/20mgは規格が共通しています。徐放錠のみの規格は40mg、徐放錠でないほうのみの規格は2.5mgとなります。
なお、オキシコンチンTR錠は乱用防止でもあるし、徐放でもあるので注意が必要です。
徐放製剤について
オキシコンチンTR錠が発売されたことで「乱用防止製剤でないオキシコドン徐放錠」のオキシコンチン錠はすでに販売中止で経過措置も切れています。
これのジェネリックであるオキシコドン徐放錠「第一三共」も、オキシコドン徐放錠NX「第一三共」が発売されたことで、2021年3月ごろに販売中止予定、2022年3月が経過措置予定となっています。
徐放でない製剤について
徐放でないオキシコドン錠「第一三共」 は「オキノーム散」のジェネリックであり、これの乱用防止製剤がオキシコドン錠NX「第一三共」(2020年9月発売予定)となっています。
乱用防止製剤であるオキシコドン錠NX「第一三共」が発売したら、乱用防止製剤でないオキシコドン錠「第一三共」は販売中止になっていく見通しのようです。
NX製剤について
乱用防止製剤のうち「NX」がつくものは添加物として麻薬拮抗剤のナロキソンを含むことで乱用防止製剤となっています。
このナロキソンは経口投与時にはほとんどが肝初回通過効果による速やかな代謝を受け作用を発現せず、オキシコドンの薬理作用を阻害することはありません。実際に経口投与時の血漿中ナロキソン濃度は定量下限未満となっています。
一方、乱用目的などで注射した場合はナロキソンがオキシコドンの薬理作用に拮抗するようです。
オキシコンチンTR錠とは添付文書の記載が異なる
オキシコンチンTR錠のジェネリックがオキシコドン徐放錠NX「第一三共」であり、これはすでに2019年9月に発売しています。
ただし、オキシコンチンTR錠 の「用法・用量に関連する使用上の注意」と「重要な基本的注意」に記載のある下記の内容が、ジェネリック製剤のオキシコドン徐放錠NX「第一三共」には記載がありません。そのため、個人的には代替調剤は避けたほうがよいような気がします。
< 用法・用量に関連する使用上の注意(オキシコンチンTR錠) >
食事の影響により本剤のCmax及びAUCが上昇することから,食後に投与する場合には,患者の状態を慎重に観察し,副作用発現に十分注意すること。また,食後又は空腹時のいずれか一定の条件下で投与すること。
<重要な基本的注意>
本剤は乱用防止を目的とした製剤であり,水を含むとゲル化するため,舐めたり,ぬらしたりせず,口に入れた後は速やかに十分な水でそのまま飲み込むよう患者に指導すること。
嚥下が困難な患者及び消化管狭窄を伴う疾患を有する患者では,嚥下障害及び消化管閉塞のリスクが高まるため,本剤以外の鎮痛薬を使用することを考慮し,やむを得ず本剤を使用する際には,患者の状態を慎重に観察し,副作用の発現に十分注意すること。
オキシコドン錠製剤の過誤対策
「ジェネリック製剤の商品名処方」の場合や「一般名処方」の場合ともに注意が必要です。下記の5点が主な注意点です。
①商品名で処方がきた場合は無理にジェネリック変更しない
ジェネリック変更で自店にある製剤で調剤しようとすると、本来変更できない「徐放錠」とそうでない製剤、「乱用防止製剤」とそうでない製剤で誤って代替調剤してしまうことが想定されます。
②一般名処方なのか商品名処方なのかを意識して区別をする。
まず、処方が一般名処方なのか商品名処方なのか区別します。
③乱用防止製剤かどうかを区別する
「乱用防止製剤」、「TR」、「NX」の文字の有無を確認します。
④徐放製剤かどうかを区別する
「TR」、「徐放」の文字の有無を確認します。
⑤卸への注文及び入荷の際に間違いないか注意する。
特にジェネリックの「第一三共」製剤ですが、卸への注文の際に間違えないように注意し、入庫の際には卸が間違えていないかを確認します。
ありがちな過誤例
「徐放錠」かそうでないかと、「乱用防止製剤」かそうでないかで製剤を誤って調剤してしまう過誤が想定されます。
一般名処方の場合は処方頻度が少ない処方を、最も在庫があり処方頻度が高いオキシコンチンTR錠として誤って調剤してしまうケースが特に懸念されます。
商品名処方で「第一三共」製剤処方の場合は、どのパターンの過誤も起こしやすいく、発注・納品ミスまでも懸念されます。
①【般】オキシコドン錠(乱用防止製剤)の処方
誤って「徐放製剤の乱用防止製剤」であるオキシコンチンTRやオキシコドン徐放錠NX「第一三共」を調剤してしまう。
正しい調剤はオキノームのジェネリックで乱用防止製剤であるオキシコドン錠NX「第一三共」(2020年9月発売予定)です。
②【般】オキシコドン徐放錠の処方
誤って「乱用防止製剤」であるオキシコンチンTRやオキシコドン徐放錠NX「第一三共」を調剤してしまう。
正しい調剤はTRでないオキシコンチン錠製剤とそのジェネリックですが、先発品は販売中止のためジェネリックのオキシコドン徐放錠「第一三共」となります。
③ オキシコドン錠「第一三共」の処方
誤って「徐放製剤」であるオキシコドン徐放錠「第一三共」 やオキシコドン徐放錠NX「第一三共」 を調剤してしまう。
④ オキシコドン錠NX「第一三共」 の処方
誤って「徐放製剤」であるオキシコドン徐放錠NX「第一三共」 を調剤してしまう。
⑤オキシコドン錠「第一三共」の注文
電話で卸にオキシコドン錠「第一三共」を注文した際に、誤ってオキシコドン徐放錠「第一三共」が入荷されてしまい気付かずに調剤してしまう。
コメント
初めまして。TR錠のことを調べていてたどり着きました。
「オキシコドン錠」についてですが、オキノーム散のジェネリックではあるが変更調剤はできない、という理解で合っていますでしょうか。
大変勉強になりました。ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
その認識で合っています。
オキシコドン錠「第一三共」はオキノーム散のジェネリックですが、
剤形が異なる(類似する剤形でもないため)ので変更調剤はできません。
詳報ありがとうございます☆彡