2020年6月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はインスリン製剤に関する改訂が特に重要な内容となっています。
- ①インスリン製剤【重要な基本的注意】
- ②アーリーダ錠【重要な基本的注意 ・重大な副作用】
- ③エフピー(セレギリン)及びビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸)【適用上の注意】
- ④リピトール(アトルバスタチン)【相互作用】
- ⑤カルタン(沈降炭酸カルシウム)【併用注意】
- ⑥トレシーバ注 フレックスタッチ/ライゾデグ配合注 フレックスタッチ /ノボラピッド注 フレックスタッチ/ノボラピッド注 フレックスペン/レベミル注 フレックスペン【取扱い上の注意】
- ⑦リカルボン・ボノテオ(ミノドロン酸)【その他の注意】
- ⑧タシグナカプセル(ニロチニブ)【特定の背景を有する患者に関する注意】
- ⑨サラゾピリン(サラゾスルファピリジン)【臨床検査結果に及ぼす影響】
- ⑩ファムビル(ファムシクロビル) 【用法・用量に関連する注意】
①インスリン製剤【重要な基本的注意】
「重要な基本的注意」に皮膚アミロイドーシスとリポジストロフィーに関する内容が追記となりました。
<重要な基本的注意>
同一箇所への繰り返し投与により、注射箇所に皮膚アミロイドーシス又は リポジストロフィーがあらわれることがあるので、定期的に注射箇所を観 察するとともに、以下の点を患者に指導すること。
・本剤の注射箇所は、少なくとも前回の注射箇所から2〜3cm離すこと。
・注射箇所の腫瘤や硬結が認められた場合には、当該箇所への投与を避け ること。
皮膚アミロイドーシス又はリポジストロフィーがあらわれた箇所に本剤を投与した場合、本剤の吸収が妨げられ十分な血糖コントロールが得られなくなることがある。
血糖コントロールの不良が認められた場合には、注射箇所の腫瘤や硬結の有無を確認し、注射箇所の変更とともに投与量の調整 を行うなどの適切な処置を行うこと。
血糖コントロールの不良に伴い、過度に増量されたインスリン製剤が正常な箇所に投与されたことにより、低血糖に至った例が報告されている。
薬剤師としての対応
<伝えること>
・注射箇所は、少なくとも前回の注射箇所から2〜3cm離すこと。
・硬くなったり皮膚の異常がでている箇所への投与は吸収に影響することがあるので避けること
<確認すること>
インスリンを継続して使っている場合には、すでに皮膚に異常がある部位に注射していないかどうかを確認します。
すでに皮膚の異常がある部位に日常的に注射していた場合には、正常部位に戻すと低血糖を起こすことがあるため、 いつ頃から皮膚の異常がある場所に注射していたかを確認したうえで疑義照会する対応がよいかと思います。
疑義照会例
「以前からインスリンが処方されているかと思いますが、本日確認したところ、半年くらい前から注射部位が硬くなってきてたようですが、注射場所はその硬い部分に注射していたようです。
患者には本日から、硬い部分ではなくて正常の皮膚に注射してもらうようにお伝えしてよろしいでしょうか?硬い部位から正常の皮膚に注射場所を変えるとインスリンの吸収がよくなって低血糖を起こすことがあるので念の為確認をと思いまして」
②アーリーダ錠【重要な基本的注意 ・重大な副作用】
重要な基本的注意及び重大な副作用に「中毒性表皮壊死融解症」が追加となりました。
改訂により、今後は服薬指導時に、皮膚の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう、患者に指導する必要があります。
<重要な基本的注意>
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、多形紅斑等の重度の皮膚障害があらわれることがあるので、皮疹発現時には早期に皮膚科医に相談し、本剤の休薬又は投与中止を考慮すること。
また、皮膚の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう、患者に指導すること。
<重大な副作用>
重度の皮膚障害:
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、多形紅斑等の重度の皮膚障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
③エフピー(セレギリン)及びビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸)【適用上の注意】
「適用上の注意」に、不要となった際に病院・薬局等へ返却する場合の処置について指導する旨が追記となりました。
従来は、法令上は不要となった場合でも医療機関に返納することはできませんでしたが、今年の覚せい剤取締法の一部改正に伴い、不要となった場合に返納し医療機関側で廃棄することが可能となりました。
④リピトール(アトルバスタチン)【相互作用】
「相互作用」の欄にP-糖蛋白質(P-gp)、乳癌耐性蛋白(BCRP)、有機アニオントランスポーター(OATP)の基質である旨が追記されました。
⑤カルタン(沈降炭酸カルシウム)【併用注意】
併用注意に「透析施行中の腎性貧血」の新薬であるエベレンゾ錠が追記となりました。なお、エベレンゾ側の添付文書ではすでにカルシウム(鉄、マグネシウム、アルミニウム等も)は併用注意に記載されています。
実際にAUC減少率のデータがあるのは酢酸カルシウムであり、エベレンゾとの同時投与でエベレンゾのAUCは半分程度に減少となっています。前後1時間あけて服用する場合はAUC減少率が20-30%程度に軽減できるようです。
<併用注意>
ロキサデュスタットと併用した場 合、ロキサデュスタットの作用が減弱するおそれがあるため、併用する場合は、前後1時間以上あけて本剤を服用すること。
ロキサデュスタ ットを酢酸カル シウムと同時投与したところ、ロキサデュスタットのAUCinfが低下 した。
⑥トレシーバ注 フレックスタッチ/ライゾデグ配合注 フレックスタッチ /ノボラピッド注 フレックスタッチ/ノボラピッド注 フレックスペン/レベミル注 フレックスペン【取扱い上の注意】
従来「取扱い上の注意」に記載されていた「使用中は冷蔵庫に入れず、室温に保管」という内容が、 ノボ製品の一部で使用開始後の冷蔵庫保管について問題ないことが確認されたため、冷蔵庫保管(2〜8°C)も可能な旨の記載に改訂されました。
なお、 使用開始後の冷蔵庫保管について問題ないことが確認され改訂となったのは ノボ製品の一部製剤であり、 他社のサノフィやリリー製剤は改訂されていません。
また、ノボ製品でも、ノボラピッド注 フレックスペンやフレックスタッチは改訂されたが、 ノボラピッド注 ペンフィルは改訂されていなかったり、 ノボラピッド ミックス注はフレックスペンでも改訂されていないなど、かなり複雑な状況となっています。
そのため、この改訂を患者に伝える場合には、必ず正しい製品名の添付文書で確認する必要があります。
改訂理由
改訂理由は「使用中のインスリンが夏場に室温である30℃をこえてしまうため、冷蔵庫にいれれないか?」という声が多かったようで、処方頻度が多い製剤について試験をして改訂したようです。
注意点としては冷たいままだと痛いので室温に戻してから注射が推奨されます。
薬剤師の対応
夏場に30℃をこえる時間が長いようであれば、使用中も冷蔵庫に入れ、使う前だけ室温に戻してから注射するよう説明するのが無難な対応かと思います。
ノボ製品で使用開始後の冷蔵庫保管が可能な製剤
該当するのはノボ製品のうち、「フレックスタッチ」及び「フレックスペンの比較的新しい製剤」という認識でよい気がします。後述しますが「フレックスペン」でもノボリンやノボラピッドミックスでは改訂されていないようです。
・トレシーバ注 フレックスタッチ
・ライゾデグ配合注 フレックスタッチ
・ノボラピッド注 フレックスタッチ
・ノボラピッド注 フレックスペン
・ レベミル注 フレックスペン
・フィアスプ注フレックスタッチ
・ゾルトファイ配合注フレックスタッチ
ノボ製品で従来どおり「使用中は冷蔵庫に入れず」 とされる製剤
ミックス製剤、イノレット、ペンフィル、バイアルは改訂されていないようです。
ペンフィルはカートリッジ製剤であり、 ヒューマペンラグジュラなどのインスリンペン型注入器自体も冷蔵庫保存禁止となっていることも理由かと思っています。
・ノボラピッド注 イノレット
・ノボラピッド注 ペンフィル
・ノボラピッド 30 ミックス注 フレックス ペン
・ノボラピッド 30 ミックス注 ペンフィル
・ノボラピッド 50 ミックス注 フレックス ペン
・ノボラピッド 70 ミックス注 フレックス ペン
・ ノボラピッド注 100 単位/mL
・レベミル注 イノレット
・レベミル注 ペンフィル
・ノボリン R 注 フレックスペン
・ノボリン 30R 注 フレックスペン
・イノレット 30R 注
・ノボリン N 注 フレックスペン
・ノボリン R 注 100 単位/mL
・フィアスプ注ペンフィル
⑦リカルボン・ボノテオ(ミノドロン酸)【その他の注意】
従来「その他の注意」に記載のあった「男性患者に対する使用経験は少ない」という記載が削除となりました。
承認時までの臨床試験において男性患者に対する使用例は少数でしたが、特定使用成績調査等において、男性患者に対する使用経験が蓄積したことから、「男性患者に対する使用経験は少ない」旨が削除されたようです。
⑧タシグナカプセル(ニロチニブ)【特定の背景を有する患者に関する注意】
従来より、妊娠可能な婦人に対 しては、避妊が必要な記載でしたが、投与中だけでなく「投与終了後一定期間」も避妊を行う旨が追記されました。
なお、「一定期間」の参考情報としてはインタビューフォームによると、米国添付文書で投与終了後少なくとも2週間は適切な避妊を行うよう指導することが推奨され ているようです。
また、本剤が投与された2〜18歳未満の患者に、成長遅延の傾向が認められた旨の記載も追記されました。
⑨サラゾピリン(サラゾスルファピリジン)【臨床検査結果に及ぼす影響】
「臨床検査結果に及ぼす影響」にALT、AST、CK-MB、 GLDH、血中アンモニア、血中チロキシン及び血中グルコース等の測定値がみかけ上増減することがある旨が追記となりました。
<臨床検査結果に及ぼす影響>
本剤投与中の患者において、ALT、AST、CK-MB、 GLDH、血中アンモニア、血中チロキシン及び血中 グルコース等の測定値がみかけ上増加又は減少す ることがあるため、これらの検査結果の解釈は慎重に行うこと。
サラゾスルファピリジン並びに代謝物 5-アミノサリチル酸及びスルファピリジンは、 NAD(H)又は NADP(H)を使用した 340nm 付近の紫外 線吸光度測定に干渉する可能性があり、検査方法に より検査結果に及ぼす影響が異なることが報告さ れている。
⑩ファムビル(ファムシクロビル) 【用法・用量に関連する注意】
ファムビルの再発性の単純疱疹に対する1回1000mgを2回投与する場合の使い方が、従来では「同じ病型の再発頻度が年間 3 回以上の患者であることを確認すること」 とされていましたが、年間3回発症していない患者でも病歴から再発頻度が高いと医師が判断できる場合は本剤の投与対象となるように記載が改訂されました。
<改訂前>
同じ病型の再発頻度が年間 3 回以上の患者であることを確認すること。
<改訂後>
再発を繰り返す患者であることは、再発頻度が年間概ね 3 回以上などの病歴を参考に判断すること。
また、従来では1回の処方箋で「今回治療」+「次回再発用処方」どちらも1回1000mgを2回投与の用法・用量の場合は添付文書上できないことが明記されていたのが、記載が変更され「今回治療」+「次回再発用処方」を1回の処方箋でだせるようになりました。
なお、 「初回の服用は初期症状出現後6時間以内に服用すること」という記載は変わりないので、従来どおり、6時間越えていたら通常治療となります。
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