2020年春の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。
今回はクラリスロマイシンと併用禁忌の抗精神病薬ラツーダ錠や用法が複雑な高カリウム血症治療薬のロケルマ、小児用のメラトニン顆粒製剤、ヒューマログより吸収が早いルムジェブ注など把握しておいたほうがよい薬が多い印象です。
- ①ラツーダ錠(ルラシドン)
- ②ロケルマ懸濁用散分包(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)
- ③メラトベル顆粒小児用 ( メラトニン )
- ④キャブピリン配合錠(アスピリン/ボノプラザン)
- ⑤アイラミド配合懸濁性点眼液(ブリモニジン酒石酸塩 /ブリンゾラミド)
- ⑥バクスミー点鼻粉末剤(グルカゴン)
- ⑦ルムジェブ注カート/ミリオペン /ミリオペンHD/ 100単位/mL (インスリンリスプロ)
- ⑧ソリクア配合注ソロスター (インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/ リキシセナチド)
- ⑨インスリンリスプロBS注ソロスターHU「サノフィ」/注カートHU「サノフィ」/注100単位/mL HU「サノフィ」(インスリン リスプロ(遺伝し組み換え)「インスリン リスプロ 後続1」注射液)
①ラツーダ錠(ルラシドン)
「統合失調症、双極性障害におけるうつ症状の改善 」 を効能とする非定型抗精神病薬です。
命名はlatitude(緯度)という言葉が由来のようですが、緯度という言葉のどのあたりのイメージがこの薬と合致するのかは製薬会社にきいてもはっきりしませんでした。
CYP3A4を強く阻害する薬剤が併用禁忌のため、クラリスロマイシンが併用禁忌となることは必ずすべての薬剤師が認識しておく必要があります。
認識しておかないと、クラリスロマイシン処方時の服薬指導の際に他薬局での併用薬として、ラツーダを聴取したときに見落としてしまう過誤が想定されます。
②ロケルマ懸濁用散分包(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)
「高カリウム血症」を効能とし、体内に吸収されない微細孔構造を有する非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、無味無臭の白色粉末の分包品(5gと10g)製剤です。
消化管内腔においてカリウムイオンを選択的に捕捉して糞中に排泄させ、消化管内腔におけるカリウム濃度を低下させることにより血清カリウム濃度を低下させます。
約45mⅬの水に懸濁して服用しますが、この薬は溶けないため、十分に懸濁し、沈殿する前に飲む必要があります。沈殿した場合は、再び懸濁して飲みきります。
「下げる(lower)」と「カリウム血症(kalemia)」から「LOKELMA」と命名されています。
用法が複雑なので注意が必要
血液透析施行中の場合は「通常、1回5gを水で懸濁して非透析日に1日1回投与」と割とシンプルですが、血液透析施行中でない場合は「1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間(最長3日間)投与。 以後は、1回5gを水で懸濁して1日1回経口投与」と複雑です。
さらには3日目に1回10gを1日3回投与する場合には、3日目の投与前に血清カリウム値が治療目標値に達していないことを確認することとされているため、もし、1回10gを1日3回、3日分の処方で 3日目の投与前に検査予定がない場合などは疑義照会対象となるかと思います。
<用法・用量>
通常、成人には、開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間経口投与する。
なお、血清カリウム値や患者の状態に応じて、最長3日間まで経口投与できる。
以後は、1回5gを水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1日1回15gまでとする。
血液透析施行中の場合には、通常、1回5gを水で懸濁して非透析日に1日1回経口投与する。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1日1回15gまでとする。
<用法及び用量に関連する注意>
本剤投与開始3日目に1回10gを1日3回投与する場合には、3日目の投与前に血清カリウム値が治療目標値に達していないことを確認すること。
また、本剤投与開始3日後にも血清カリウム値が治療目標値に達していない場合は、他の治療方法を検討すること(血液透析施行中を除く)。
③メラトベル顆粒小児用 ( メラトニン )
「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善 」を効能とするメラトニンを有効成分とする日本初の入眠改善剤です。「メラトニン」と「ノーベルファーマ」を組み合わせて命名されています。
メラトニン受容体作動薬のロゼレム同様にフルボキサミンが併用禁忌となります。また、光に弱いので、分包後は遮光して保存することとされています。
「効能又は効果に関連する注意」の項目には、6歳未満又は16歳以上の患者における有効性及び安全性は確立していない(当該年齢の患者を対象とした臨床試験は実施していない)と記載されています。
④キャブピリン配合錠(アスピリン/ボノプラザン)
「下記疾患又は術後における血栓・塞栓形成の抑制 (胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る)」を効能とするバイアスピリンとタケキャブ(10mg)の配合剤です。
・狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋 梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作 (TIA)、脳梗塞)
・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠 動脈形成術(PTCA)施行後
タケ「キャブ」と低用量アス「ピリン」から命名されています。
単品のPPIの場合は効能が多岐にわたりますが、低用量アスピリンとの配合剤の場合はPPIの効能が 「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の用途に限定されるので 、配合剤としての効能も胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者に限られるとされているため注意が必要です。
⑤アイラミド配合懸濁性点眼液(ブリモニジン酒石酸塩 /ブリンゾラミド)
「 他の緑内障治療薬が効果不十分な場合の緑内障、高眼圧症 」を効能とするアイファガンとエイゾプトの配合点眼液です。
アイファガンの「アイ」と、ブリンゾラミドの「ラミド」とを組み合わせ「アイラミド」と命名されています。
⑥バクスミー点鼻粉末剤(グルカゴン)
「低血糖時の救急処置」を効能する1 回使い切りの点鼻のグルカゴン製剤です。注射剤以外の低血糖治療薬としては初の選択肢となります。
回復に他者の援助を必要とするような重症低血糖の治療は緊急を要するものの、従来では医療機関外での治療薬としての選択肢は家族等によるグルカゴン注射に限定されていました。
バクスミーは鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖に陥り意識を失っている患者に対しても使用可能です。
名称の由来はありません。
⑦ルムジェブ注カート/ミリオペン /ミリオペンHD/ 100単位/mL (インスリンリスプロ)
「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能とする超速効型インスリン製剤です。 名称の由来はありません。
既存製品の超速効型ヒューマログの有効成分に添加剤(トレプロスチニル及びクエン酸)を加え皮下からの吸収を速めることで、健康な人のインスリン分泌動態により近くなった製剤です。
添加物のトレプロスチニルは注射部位の血管が拡張することで、クエン酸は血管透過性が亢進することで、吸収が速くなると考えられています。
用法は通常、毎食事開始時(食事の前2分以内)に皮下注射するが、必要な場合は食事開始後(食事開始後20分以内)の投与とすることも可能です。
なお、食後血糖値の上昇の低減について、食事負荷試験の食後 1 時間および 2 時間ともにヒューマログ注に対して優越性が示されています。(HbA1c の変化量は非劣性)
過誤に注意が必要
なお、キット、カートリッジ、バイアルの剤形違いの過誤に注意が必要なのは他のインスリン製剤と同様ですが、ミリオペンとミリオペンHDの過誤にも注意が必要です。 ミリオペンHDは0.5単位刻みで単位設定ができます。
また、厚労省の一般名マスタにはまだ一般名が収載されていませんが、製薬会社の一般名では一般名がヒューマログと同じ「インスリン リスプロ(遺伝子組換え)」となるので注意が必要です。
⑧ソリクア配合注ソロスター (インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/ リキシセナチド)
「インスリン療法が適応となる2型糖尿病 」を効能とする基礎インスリン製剤(ランタス)と GLP-1 受容体作動薬(リキスミア)の配合剤です。
1 日 1 回朝食前 1 時間以内の使用が用法となっています。
ラテン語の「太陽(Solis)」及び「水(Aqua)」をかけ合わせ命名されています。
⑨インスリンリスプロBS注ソロスターHU「サノフィ」/注カートHU「サノフィ」/注100単位/mL HU「サノフィ」(インスリン リスプロ(遺伝し組み換え)「インスリン リスプロ 後続1」注射液)
「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能と する ヒューマログ注のバイオシミラー(バイオ後続品)です。
バイオシミラーはジェネリックとは異なるのでうっかり代替調剤しないように注意が必要です。一般名はインスリン リスプロ(遺伝し組み換え)「インスリン リスプロ 後続1」といった記載であり、 ヒューマログ注と異なる一般名となるため注意が必要です。
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