リウマトレックス(メトトレキサート)の服薬指導とハイリスク加算

リウマトレックスの服薬指導
今回はリウマトレックス(メトトレキサート)の特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算を算定する際の服薬指導をまとめました。ハイリスク薬だけあって伝える項目がとても多いため指導せんを取り寄せておくととても役に立ちます。ただし指導せんには出血傾向と肝機能障害に関しては記載がないため注意が必要です。

特定薬剤管理指導加算の算定タイミングに関しては、個々の薬剤師の判断により異なりますが、個人的には会計ありの場合でも少なくとも以下の時は指導が必要のため算定することになるかと考えています。

会計無しであればdo処方でも定期的に副作用などを説明・確認することで算定しやすいかと思います。

・新規処方
・増量時
・風薬や胃症状などで併用注意薬剤(NSAIDsやPPIなど)が処方された時

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リウマトレックスの概要

服薬指導難度

効能

1.関節リウマチ

通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。

1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。

なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減するが、1週間単位の投与量として16mgを超えないようにする。

2.関節症状を伴う若年性特発性関節炎

通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして4~10mg/m2とし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。

分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。

なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減する。

名前の由来

米国の販売名称であった「RHEUMATREX」を参考に命名されています。

指導せん

リウマトレックスには指導せんが存在しており、多岐にわたる副作用が記載されているため服薬指導の際には必須といっても良いでしょう。

ただし、出血傾向と肝機能障害に関してはなぜか指導せんに記載がないため、手書きで追記するなどの対応が必要となります。

リウマトレックスの服薬指導で確認すること

①腎機能・肝機能・結核の有無【禁忌】

慢性肝疾患のある患者・腎障害のある患者は副作用が強くあらわれるおそれがあるため設定されています。活動性結核に関しては症状を悪化させるおそれがあるため設定されています。

②妊娠・授乳の有無 【禁忌】

妊娠に関しては催奇形性を疑う症例報告があり、動物実験で胎児死亡及び先天異常が報告されているため設定されています。授乳に関しては元来抗悪性腫瘍剤であること、母乳移行性があることから設定されています。

③胸水・腹水の有無 【禁忌】

胸水、腹水等に長期間貯留して毒性が増強されることがあるため設定されています。

④サプリメントで葉酸の服用がないか(添付文書未記載)

葉酸により作用の減弱がみられるため葉酸、葉酸を含むビタミンB群、マルチビタミンの服用を確認します。

⑤投与開始前の検査実施の有無【重要な基本的注意】

「骨髄抑制、肝・腎機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、本剤投与開始前及び投与中、4週間ごとに臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、尿検査等)を行うなど、患者の状態を十分観察すること」、また「本剤投与開始前に胸部X線等の検査で肺疾患の有無を確認し、さらに必要に応じて胸部CT検査等を行い、投与の可否を慎重に判断すること」と記載されています。

そのため、初回投与時に患者からこれらの検査をしていないことを聴取した場合には疑義照会対象となります。

⑥併用薬の確認【併用注意】

NSAIDsやPPIが併用注意となります。これらの併用がある場合や途中で追加された場合は、少なくとも通常より副作用に注意が必要なことを説明し、指導せんを渡して注意を促す必要があるかと思います。

リウマトレックスの服薬指導で伝えること

①発熱、咳嗽・呼吸困難等の呼吸器症状、口内炎、倦怠感が出た際は直ちに連絡すること【警告】

安全性確保のため、患者自身に副作用の初期症状について理解させ、副作用発生時に速やかな処置が行えるように直ちに医師に連絡させる旨設定されています。服薬指導の際は指導せんを使って説明すると良いでしょう。

②骨髄抑制、肝・腎機能障害の注意【重要な基本的注意】

この項目に関しては添付文書に具体的な症状の記載がありません。そのため骨髄抑制・腎機能障害は指導せんを参考にします。肝機能障害に関してはなぜか指導せんにも記載がないため、患者向け医薬品ガイドを参考とします。

指導せんをもちいて骨髄抑制として発熱、咽頭痛、貧血など、腎機能障害として尿量が減る、からだのむくみを説明します。肝機能障害としては指導せんに手書きで追記などすると良いでしょう。黄疸、倦怠感など説明します。

骨髄抑制、肝・腎機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので投与開始前及び投与中、4 週間ごとに臨床検査を行うなど、患者の状態を十分観察すること。異常が認められた場合には、投与を中止するとともに適切な処置を行うこと

③妊娠に関する注意【重要な基本的注意】

服用中だけでなく服用終了後も男女共に必要な期間妊娠を避ける必要があります。

妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも1月経周期は妊娠を避けるよう注意を与えること。男性に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも3ヵ月間は配偶者が妊娠を避けるよう注意を与えること

④出血性腸炎、消化管潰瘍・出血等の消化管障害注意【重要な基本的注意】

添付文書には口内炎があらわれた場合には直ちに連絡するよう注意を与えること、とありますが激しい腹痛、嘔吐、下痢等でも同様に指導するのがよいと思います、実際に指導せんには吐き気、下痢などの症状もすぐに医師に申し出るように記載があります。

口内炎、激しい腹痛、嘔吐、下痢等の症状があらわれた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。また口内炎があらわれた場合には直ちに連絡するよう注意を与えること

⑤感染症、出血傾向の注意【重要な基本的注意】

前述同様、発熱、倦怠感だけでなく出血傾向が見られた際にもすぐ連絡するよう指導したほうが良いでしょう。なお、出血傾向に関してはなぜか指導せんに記載がありません。あおあざができる、出血がとまりにくいなどの症状を説明します。指導せんに追記しましょう。

感染症、出血傾向の発現又は増悪に十分注意し、異常が認められたときには投与を中止し適切な処置を行うこと。また、患者に対し発熱、倦怠感があらわれた場合には、直ちに連絡するよう注意を与えること

⑥服用方法の説明【重要な基本的注意】

1週間のうちの特定の日に投与するので、患者に対して誤用、過量投与を防止するための十分な服薬指導を行うこと、と記載されています。

そのため、飲み間違いように服用方法を説明し、シートに服用日を記載するなどの対応を行います。
この内容に関しては2016年11月の医療安全情報などで誤服用防止の具体的な対応として下記の3点が通知されているため、これに準じた対応が必要かと考えられます。

1.薬剤交付時又は配薬時には,必ず,服薬日時欄の記入をすること。
2.長年,メトトレキサート製剤を服用されている患者さんでも,服用方法を正しく理解していない 可能性があるため,患者さんの理解度に応じて,服用方法について繰り返しの指導を行うこと。
3.残薬の誤服用を防ぐため,服薬状況や残薬確認を行うこと。

メトトレキサート製剤の服用方法間違いに対する対応
今回は2016年11月の医療安全情報「抗リウマチ剤メトトレキサート製剤の誤投与(過剰投与)について」の対応をまとめました。今月の医薬品・医療機器等安全性情報でも紹介されています。 これらの内容は2007年にも通知されていますが、年数がたった...

⑦多めの水で服用させ就寝直前の服用は避けさせること【適用上の注意】

食道に停留し、崩壊すると食道潰瘍を起こすおそれがあるので設定されています。

リウマトレックスの薬歴例

副作用項目の服薬指導は前述の通り多岐に渡りますが、結論としては指導せんを用いて説明し、記載のない出血傾向と肝機能障害に関して手書きで追記する形でよいと思います。

S)リウマチ
O)腎・肝機能異常・結核・胸水・腹水なし
妊娠・授乳なしサプリメント服用なし

A)指導せんを使い、万一発熱、咳、口内炎、倦怠感、下痢、腹痛、吐き気、皮膚や白目の黄疸、むくみ、尿が出なくなる、あざができるなど出る場合は直ちに連絡し受診するよう説明。多めの水で服用し就寝直前の服用は避けさせること説明。
(女性の場合)服用中から服用後1月経周期は妊娠を避けるよう指示
(男性の場合)服用中から服用後少なくとも3ヵ月間は避妊するよう説明。
P)副作用確認

薬剤別服薬指導
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