2020年7月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回は同時期にあった効能追加情報もまとめているため、内容が多くなっています。使用している薬剤がある場合は把握しておく必要があります。
添付文書改訂情報
①メマリー(メマンチン )【重大な副作用】
「重大な副作用」に「 完全房室ブロック、高度な洞徐脈等の徐脈性不整脈 」が追記となりました。
<重大な副作用>
完全房室ブロック、高度な洞徐脈等の徐脈性不整脈があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
②ウプトラビ錠(セレキシパグ)【併用注意】
従来併用禁忌であった クロピドグレルが併用注意に緩和されました。 クロピドグレル側の添付文書も同様に改訂されました。
相互作用試験の結果、 ウプトラビ及び活性代謝物(MRE-269)の薬物動態への影響の程度や両剤を併用した症例の評価から、併用禁忌と考えられるほど懸念はないとの評価に至り改訂されました。
併用注意ではありますが、 併用時はウプトラビの開始用量が制限(減量)されるため注意が必要です。また、ウプトラビ服用中にクロピトグレルが追加となる場合はウプトラビの減量考慮となるので疑義照会したほうがよいかもしれません。ウプトラビの活性代謝物のAUCは3倍近くになるようです。
<併用注意>
クロピドグレルとの併用で、本剤の活性代謝物の Cmax 及び AUCが増加したとの報告がある。
本剤の投与中にこれらの薬剤を開始する場合には、本剤の減量を考慮すること。
これらの薬剤の投与中に本剤を開始する場合には、本剤を 1 日 1 回に減量して投与を開始すること。
<相互作用>
クロピドグレル 健康成人男性 22 例にセレキシパグ 0.2mg を 1 日 2 回 10 日間経口投与し、CYP2C8 の阻害作用を 有するクロピドグレルを投与 4 日目に300mg(n=21)、投与 5 日目から 10 日目に 75mg(n=20) を経口投与したとき、単独投与と比較して、セレキシパグの Cmax及び AUC0-12は、投与 4 日目で は 1.3 倍及び 1.4 倍に増加し、投与 10 日目では 0.98 倍及び 1.1 倍であった。
同様に、MRE-269 の Cmax及び AUC0-12は、投与 4 日目では 1.7 倍及び 2.2 倍、投与 10 日目では 1.9 倍及び 2.7 倍に 増加した(外国人によるデータ)
③トラマドール製剤【併用禁忌】
併用禁忌にエクフィナとセリンクロが追記されました。なお、相手薬剤側ではすでに併用禁忌となっています。
2020年3月分 のDSUのまとめでも取り上げましたが、セリンクロは2019年3月に発売された「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」が効能の薬剤であり、コデイン、ジヒドロコデイン以外の麻薬は併用禁忌なので薬剤師として、認識しておく必要があります。
④ラツーダ錠(ルラシドン)【相互作用訂正】
フルコナゾールが併用禁忌と併用注意のどちらにも記載されていたようで、併用禁忌のみの記載に訂正されました。
⑤レグナイト錠(ガバペンチネナカルビル)【効能・効果に関連する使用上の注意】
「効能・効果に関連する使用上の注意」に 原則、ドパミンアゴニストによる治療で十分な効果が得られない場合等によりドパミンアゴニストが使用できない場合に限り投与する旨が追記されました。
また、「重要な基本的注意」に、効果が認められない場合には、漫然と投与しないよう注意する旨が記載されました。
これは販売後臨床試験でプラセボに対するレグナイトの有効性が検証されなかったことから改訂されました。これにより、ドパミンアゴニストがファーストチョイスでレグナイトはセカンドの位置づけとなりました。
<効能・効果に関連する使用上の注意>
本剤は、原則、ドパミンアゴニストによる治療で十分な効果が得られない場合、又はオーグメンテーション(症状発現が 2 時間以上早まる、症状の増悪、他の部位への症状拡大)等によりドパミンアゴニストが使用できない場合に限り投与すること。
[国内臨床試験において主要評価項目である治療期最終時点におけるIRLS(International Restless Legs Syndrome Rating Scale)合計スコアの変化量ではプラセボ群との差は認められていない。
<重要な基本的注意>
効果が認められない場合には、漫然と投与しないよう注意すること。
<臨床成績>
製造販売後臨床試験レストレスレッグス症候群患者375例を対象とした12週間のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果、主要評価項目である治療期最終時点におけるIRLS合計スコアの 変化量の調整済み平均値とその95%信頼区間は、本剤600mg群で-11.7[-12.6,-10.7]、プラセボ群で-10.5[-11.4,-9.5]であった。
その差とその95%信頼区間は-1.2[-2.6,0.2]であり、統計的に有意な差は認められなかった (MMRM解析、p=0.088、有意水準両側0.05)。
⑥クレストール錠(ロスバスタチン)【併用注意】
「併用注意」に C型慢性肝炎の薬であるエプクルーサ配合錠と去勢抵抗性前立腺癌の薬であるニュベクオ錠が追記となりました。 なお、相手薬剤側ではすでに併用注意に記載されています。
それなりにAUCが上昇するので代替薬を検討したうえで疑義照会したほうがよいかと思います。
代替のスタチンは併用注意に該当しないスタチン(もしくはAUC増加率の少ない)を製薬会社に確認して対応するのがよいかと思います。場合によってはゼチーアやフィブラート、クレストールの減量なども選択肢となるかと思います。
エプクルーサ配合錠やニュベクオ錠がでている薬局はあらかじめ製薬会社に確認し対応を決めておいたほうがよいかと思います。
<エプクルーサ配合錠 (ソホスブビル・ ベルパタスビル)>
本剤とベルパタスビルを併用したとき、本 剤 の AUC が 約 2.7 倍、Cmaxが約2.6倍 上昇したとの報告がある。
ベルパタスビルが OATP1B1 、 1B3 及びBCRPの機能 を阻害する可能性がある。
<ニュベクオ錠(ダロルタミド)>
本剤とダロルタミドを 併用したとき、本剤の AUC が 5.2 倍 、 Cmaxが5.0倍上昇したとの報告がある。
ダロルタミドがOATP1B1 、 1B3 及びBCRPの機能を阻害する可能性がある。
⑦ブリリンタ錠(チカグレロル)【臨床検査結果に及ぼす影響】
「臨床検査結果に及ぼす影響」にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に対する血小板凝集能検査が偽陰性になるおそれがある旨が追記されました。
<臨床検査結果に及ぼす影響 >
本剤投与後にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に対する血小板凝集能検査が偽陰性になるおそれがある。
⑧マリゼブ錠(オマリグリプチン)【重要な基本的注意】
従来、重要な基本的注意に記載されていた「本剤とインスリン製剤を併用した際の有効性及び安全性を検討した臨床試験成績はない」という記載が削除されました。
製造販売後にインスリン製剤への追加投与試験(併用療法)が実施され、結果が得られたため削除されました。
⑨イクスタンジ錠(エンザルタミド)【用法及び用量に関連する注意】
「用法及び用量に関連する注意」に休薬、減量に関する記載が追記されました。
<用法及び用量に関連する注意>
グレード 3以上若しくは忍容できない副作用発現時は、休薬(1週間あるいはグレード2以下になるまで)又は減量(120mgあるいは80mgを1日1 回経口投与)を考慮すること。
なお、再開時には減量を考慮すること。
注)グレードはNCI-CTCAEに準じる。
⑩ジフルカン(フルコナゾール)【併用禁忌】
併用禁忌に 、カルブロック(アゼルニジピン)、ジャクスタピッド(ロミタピド)、ロナセン(ブロナンセリン)が追記となりました。 なお、相手薬剤側ではすでに併用注意に記載されています。
効能追加情報
①オフェブカプセル(ニンテダニブ)
「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」の効能が追加となりました。
②アーリーダ(アパルタミド)
「遠隔転移を有する前立腺癌」の効能が追加となりました。
これにより、もともとある効能である「去勢抵抗性」以外にも処方が出てくるケースがでてきます。
③イクスタンジ錠(エンザルタミド)
「遠隔転移を有する前立腺癌」の効能が追加となりました。
④プレベナー13水性懸濁注(降13価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体))
「肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者」の効能が追加となりました。
今回の適応追加により、従来の「小児や高齢者」という年齢に限らず、肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)による疾患に罹患するリスクが高い者にも本剤の接種が可能となりました。
なお、肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者とは、以下が記載されています。
・慢性的な心疾患、肺疾患、肝疾患又は腎疾患
・糖尿病
・先天的又は後天的無脾症(無脾症候群、脾臓摘出術を受けた者等)
・鎌状赤血球症又はその他の異常ヘモグロビン症
・人工内耳の装用、慢性髄液漏等の解剖学的要因により生体防御機能が低下した者
・上記以外で医師が本剤の接種を必要と認めた者
⑤サムスカ錠(トルバプタン)
「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善」の効能が追加となりました。
⑥フルティフォーム50エアゾール(フルチカゾンプロピオン酸エステル/ホルモテロール)
小児の効能が追加となりました。なお、追加となったのは50の規格のみで125は小児では使えません。なお、5歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していません。
<用法用量>
通常、小児には、フルティフォーム50エアゾール(フルチカゾンプロピオン酸エステルとして50μg及びホルモテロールフマル酸塩水和物として5μg)を1回2吸入、1日2回投与する。
⑦ヒュミラ皮下注(アダリムマブ)
「化膿性汗腺炎」の効能が追加となりました。
⑧フェントステープ(フェンタニル)
従来では他オピオイドからの切り替えでないと使用できませんでしたが、癌性疼痛の効能かつ0.5mgの規格に限り、初回から使用できるようになりました。
慢性疼痛は規格にかかわらず従来どおり、他オピオイドからの切り替えでないと使用できません。
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