新薬承認情報【2020年夏】

新薬承認情報【2020年夏】

2020年夏の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。

服用時の注意事項が細かく設定されている糖尿病の薬であるリベルサスや慢性心不全の薬剤であるエンレストなどは薬剤師として把握しておいたほうがよいかと思います。

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① オンジェンティス錠(オピカポン)

「レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」を効能とする1日1回服用のCOMT阻害剤です。

楕円形の錠剤(長径約 11.6mm、短径約 5.1mm)であり、1 日1回、レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩の投与前後及び食事の前後 1 時間以上あけて経口投与します。

用法が1 日1回のみ、とシンプルなので、この点は類薬のコムタンより使いやすいかもしれません。

薬が効く時間(ON-Time)、日常生活における活動状態(ON-State)から命名されています。

②バフセオ錠 (バダデュスタット)

「 腎性貧血 」を効能とする低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬です。

昨年秋頃に腎性貧血の「経口投与」治療薬として初めて承認されたエベレンゾ錠では「透析施行中」の腎性貧血が効能ですが、バフセオは保存期の腎性貧血にも使用することができます。

名称の由来はとくにありません。

③ダーブロック錠 (ダプロデュスタット) 

「腎性貧血」を効能とする低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬です。

前述のバフセオ同様に保存期の腎性貧血にも使用することができます。
名称の由来はとくにありません。

④リベルサス錠(セマグルチド) 

「2型糖尿病」を効能とする経口としては初めてのGLP-1受容体作動薬です。1日1回投与であり、オゼンピック皮下注と同成分です。

ペプチドをベースとするセマグルチドは、分子量が大きく消化管での透過性が低く、また、胃で分解されてしまうため、経口投与は適していませんでした。

リベルサスでは吸収促進剤であるSNAC(サルカプロザートナトリウム)を添加することで、局所でのpH緩衝作用により、セマグルチドの急速な酵素的分解を防ぐことなどで経口投与を可能としています。胃で崩壊・吸収され、吸収は錠剤表面の周辺部に限定されます。

名称の由来はとくにありません。

服用時の注意事項が細かいので注意

リベルサスは服用時の注意事項が非常に特徴的で下記の注意が必要です。飲水前や服用時のmLまで規定されているので、すべての薬剤師が認識しておいたほうがよいかと思います。

注意 1. 空腹の状態で服用する必要がある。1 日のうちの最初の食事又は飲水の前に服用
⇒食後投与では血中濃度が定量下限未満のようです。また飲水量が多いと吸収が低下するので胃内に水が無い状態がよいため「最初の飲水前」という飲水制限が設定されています。

注意 2. コップ約半分の水(約 120mL 以下)とともに服用
⇒飲水量が多いと吸収が20-30%程度低下するので、約 120mL以下とされています。

注意 3. 他の経口剤と同時に服用しないこと
⇒プラセボ錠との併用でもAUCが3割減ってるようです。

注意 4. 服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避ける

<用法及び用量に関連する注意>
本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、本剤は、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに 3mg錠、7mg錠又は 14mg錠を 1錠服用すること。
また、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。分割・粉砕及びかみ砕いて服用してはならない。

1回複数錠の処方は避けること

胃で崩壊・吸収され、吸収は錠剤表面の周辺部に限定されることから、SNAC の投与量の差異、及び物理的に 2 つの錠剤が胃内に存在することが吸収に影響を及ぼす可能性があるため、1 回複数錠の処方は避けることとされているので、「1回2錠」などの用量で処方がきた場合は疑義照会対象となります。

<用法及び用量に関連する注意>
本剤14mgを投与する際には、本剤の 7mg錠を 2錠投与することは避けること。

⑤エンレスト錠(サクビトリルバルサルタンナトリウム)

「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」を効能とするアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)です。

サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及びバルサルタンに解離して、それぞれネプリライシン(NEP)及びアンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体を阻害します。

Entrust(信頼できる薬剤)にから命名されています。

「エンレスト」は、左室駆出率が低下した心不全患者を対象にした海外試験で、ACE阻害薬(エナラプリル)と比較し、心血管死および心不全による入院からなる複合エンドポイントのリスクを有意に 20%減少させており、エナラプリルを上回る生命予後改善を統計学的な差を持って示した初めての薬剤とされているので、該当患者では処方されてくる可能性があります。

ネプリライシンとは

ネプリライシンはペプチド分解酵素で、心臓の負荷を軽減するナトリウム利尿ペプチドなどの分解を促進します。このネプリライシンを阻害することで心房性ナトリウム利尿ペプチドの濃度を高め、心保護作用を発揮します。

なお、ネプリライシンはアンジオテンシンIIも分解しているので、ネプリライシンのみを阻害するとアンジオテンシンIIが増加して血圧上昇や血管収縮などを引き起こすためARBが組み合わさっているようです。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬から切り替えて投与すること

ACE阻害薬またはARBの前治療により忍容性が確認された患者に切り替えで投与する薬剤であるため、切り替えでない場合は疑義照会対象となります。なお、後述してますがACE阻害薬の場合は36時間空ける必要があります。

ACE阻害薬が併用禁忌であり、間隔もあける必要がある

併用により相加的にブラジキニンの分解を抑制し、血管浮腫のリスクを増加させる可能性があるため、ACE阻害薬が併用禁忌となっています。切り替えは少なくとも36時間あける必要があります。

血管浮腫があらわれるおそれがあるため、本剤投与前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されている場合は、少なくとも本剤投与開始36時間前に中止すること。
また、本剤投与終了後にアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与する場合は、本剤の最終投与から36時間後までは投与しないこと。

⑥アテキュラ吸入用カプセル(インダカテロール/モメタゾンフランカルボン酸エステル)

「気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能としたLABAのオンブレス(ただし、塩は酢酸塩とマレイン酸塩とで異なる)とICSであるアズマネックスの配合剤です。

COPDの効能ではなく、気管支喘息の効能の配合薬の発売はレルベア以来なかったので、久しぶりな印象があります。ただ、アドエアやシムビコート、レルベアのように薬剤が内蔵されているデバイスでなく、カプセルを毎回入れ替える必要のある「ブリーズヘラー」のため、需要があるかは少し疑問を感じるところです。

規格は低用量、中用量、高用量の3規格です。

architect や architecture を由来として、Atectura(アテキュラ)と命名されています。

インダカテロールの塩の違い

アテキュラに配合されているインダカテロールは「酢酸塩」であり、オンブレスのインダカテロールは「マレイン酸塩」であり塩が異なります。

製薬会社に確認したところ、マレイン酸塩よりも酢酸塩のほうが咳の副作用が低い傾向があるためアテキュラでは酢酸塩となったようでした。

⑦エナジア吸入用カプセル(インダカテロール/グリコピロニウム/モメタゾンフランカルボン酸エステル)

「気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸 入β2刺激剤及び長時間作用性吸入抗コリン剤の 併用が必要な場合)」を効能とする、前述のアテキュラ(LABA+ICS)に長時間作用性抗コリン薬(LAMA)であるグリコピロニウムを加えた配合剤です。

3種配合剤でCOPDの効能ではなく、気管支喘息の効能という薬剤は初となります。

また、前述のアテキュアもですが、日本で初めて、吸入器に装着してスマートフォンと連動させて、日々の服薬の記録や服薬リマインダー機能を持つブリーズヘラー用センサーも医師を通じて提供できるようです。

規格は中用量、高用量の2規格で、低用量はありません。

energy と air を組み合わせて、Enerzair(エナジア)と命名されています。

アテキュラとエナジアのステロイドのμg

前述のアテキュラとエナジアのステロイドの配合量のμgは下記のように中用量同士(あるいは高用量同士)で異なりますが、肺に到達し薬効発現が期待される粒子量は、中用量同士、高用量同士で同程度とされています。

そのため、ステロイドを同用量で切り替えたい場合はμg基準でなく、中用量同士(もしくは高用量同士)での切り替えとなります。

アテキュラ吸入用カプセル     エナジア吸入用カプセル
低用量 80μg            
中用量160μg           中用量 80μg
高用量320μg           高用量160μg

※:モメタゾンフランカルボン酸エステルの配合量は、本剤中用量とエナジア吸入用カプセル中用量で、また本剤高用量とエナジア吸入用カプセル高用量でそれぞれ異なるが、肺に到達し薬効発現が期待されるモメタゾンフランカルボン酸エステルの粒子量は、中用量同士、高用量同士で同程度である。

新薬DSU等の解説
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