2020年3月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。また、効能追加情報もまとめました
今回はマヴィレット、ハーボニーなどのC型肝炎直接型抗ウイルス薬の開始処方の際に、他病院でワルファリン、タクロリムス、糖尿病治療薬などの併用がある場合は主治医に連絡する対応が必要となった改訂(重要な基本的注意)が重要なところかと思います。
- ①ニュープロパッチ(ロチゴチン)【重大な副作用】
- ②ザイロリック(アロプリノール)【重大な副作用】
- ③C型肝炎直接型抗ウイルス薬(マヴィレット、ハーボニーなど)【重要な基本的注意】
- ④ネイリンカプセル(ホスラブコナゾールL-リシンエタノール)【重大な副作用】
- ⑤テグレトール(カルバマゼピン)【併用禁忌】
- ⑥ヘルベッサー(ジルチアゼム)【併用禁忌】
- ⑦オピオイド系薬剤(アヘン、モルヒネ、オキシコドンなど)【併用禁忌】
- ⑧ヒドロクロロチアジド含有製剤(エカード、コディオ、プレミネントなど)【その他の注意】
- ⑨モディオダール(モダフィニル)【効能追加】
- ⑩アレセンサ(アレクチニブ)【効能追加】
- ⑪ネオーラル内用液(シクロスポリン)【効能追加】
- ⑫オレンシア(アバタセプト)【効能追加】
①ニュープロパッチ(ロチゴチン)【重大な副作用】
「重大な副作用」に横紋筋融解症が追記となりました。
<横紋筋融解症>
筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
②ザイロリック(アロプリノール)【重大な副作用】
「重大な副作用」に無菌性髄膜炎が追記となりました。
<無菌性髄膜炎>
項部硬直、発熱、頭痛、悪心・嘔吐又は意識障害等の症状を伴う無菌性髄膜炎があらわれることがある。なお、本剤投与後数時間で発症した例も報告されている。
③C型肝炎直接型抗ウイルス薬(マヴィレット、ハーボニーなど)【重要な基本的注意】
「重要な基本的注意」に 、本剤による治療に伴う肝機能変動により、使用中のワルファリン、タクロリムス、糖尿病治療薬などの併用薬の用量調節が必要になる可能性がある旨が追記されました。
また、これらを併用している場合に、直接型抗ウイルス薬を開始する場合は「原則、処方医に連絡する」ことが記載されました。
<重要な基本的注意>
C型肝炎直接型抗ウイルス薬を投与開始後、ワルファリンやタクロリムスの増量、低血糖によりインスリン等の糖尿病治療薬の減量が必要となった症例が報告されており、本剤による抗ウイルス治療に伴い、使用中の併用薬の用量調節が必要になる可能性がある。
特にワルファリン、タクロリムス等の肝臓で代謝される治療域の狭い薬剤や糖尿病治療薬を使用している患者に本剤を開始する場合には、原則、処方医に連絡するとともに、PT-INRや血中薬物濃度、血糖値のモニタリングを頻回に行うなど患者の状態を十分に観察すること。
薬剤師の対応
今回の改訂により、C型肝炎直接型抗ウイルス薬の開始処方の際に、他病院でワルファリン、タクロリムス、糖尿病治療薬などの併用がある場合は主治医に連絡する対応が必要となりました。
そのため、該当する患者では、服薬指導時に「ワルファリンなどの処方医は、肝炎治療について把握しているのか」を患者から確認し、把握しておらず、伝えるように指示もされていない場合は連絡する対応となるかと思います。
連絡例
そちらに受診されている〇〇さんという患者さんで、1点ご連絡がございまして。
そちらでワルファリンを服用されているかと思いますが、今回、マヴィレットという薬剤でC型肝炎治療が始まりました。
肝炎治療により肝機能がよくなることで、ワルファリンの治療効果が変動することがあるため、そちらの医師にも「肝炎治療」が始まったことをご連絡しておこうと思いまして。
予想される症状の説明
今回の改訂では、医師に連絡のほかに「患者の状態を十分に観察すること」という記載もあるため、使用中の併用薬の用量調節が必要になる場合の症状を説明するのがよいかと考えられます。
マヴィレットの製薬会社にも確認しましたが、症例としてはワルファリンやタクロリムスは増量、糖尿病治療薬は減量との記載ではありますが、「用量調節が必要になる」という文言部分は念のため増量減量両方の可能性を注意したほうが無難とのことです。
そのため、患者さんには肝機能の改善により併用薬の治療効果が変動する可能性を説明し、薬効減弱による現疾患の再発症状と薬効増強による副作用症状の両方を説明する対応がよいかと思います。
④ネイリンカプセル(ホスラブコナゾールL-リシンエタノール)【重大な副作用】
「重大な副作用」に多形紅斑が追記となりました。
<多形紅斑>
多形紅斑があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
⑤テグレトール(カルバマゼピン)【併用禁忌】
「併用禁忌」の項に以下の薬剤が追記されました。なお、相手薬剤側ではすでに併用禁忌となっています。
<C型慢性肝炎・肝硬変>
● エレルサ(エルバスビル)
● グラジナ(グラゾプレビル)
● ジメンシー配合錠 (ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル)
●スンベプラ(アスナプレビル)
● エプクルーサ配合錠(ソホスブビル・ベルパタスビル)
<急性冠症候群>
● ブリリンタ(チカグレロル)
<肺動脈性肺高血圧症>
●マシテンタン (オプスミット)
<HIV感染症>
● ジャルカ配合錠(ドルテグラビル・リルピビリン)
●ビクタルビ配合錠 (ビクテグラビル・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド )
⑥ヘルベッサー(ジルチアゼム)【併用禁忌】
「併用禁忌」の項に以下の薬剤が追記されました。なお、相手薬剤側ではすでに併用禁忌となっています。
<C型慢性肝炎・肝硬変>
スンベプラ(アスナプレビル)
ジメンシー( ダクラタスビル 塩酸塩/アスナ プレビル/ベクラ ブビル塩酸塩)
<ホモ接合体家族性高コレステロール血症>
ジャクスタピッド(ロミタピド)
<洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全>
コララン(イバブラジン塩 酸塩)
⑦オピオイド系薬剤(アヘン、モルヒネ、オキシコドンなど)【併用禁忌】
併用禁忌にセリンクロ(ナルメフェン)が追記されました。なお、相手薬剤側ではすでに併用禁忌となっています。
セリンクロは2019年3月に発売された「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」が効能の薬剤です。
セリンクロはコデイン、ジヒドロコデイン以外の麻薬は併用禁忌なので薬剤師として、認識しておく必要があります。
トラマドール、タペンタドール、フェンタニル、ヒドロモルフォンなどの薬剤も併用禁忌ですが、これらの薬剤側の添付文書ではまだ上記の改訂が遅れているので、セリンクロ側の添付文書をみないと見落とす危険性があるので注意が必要です。
⑧ヒドロクロロチアジド含有製剤(エカード、コディオ、プレミネントなど)【その他の注意】
「その他の注意」に基底細胞癌及び有棘細胞癌についての内容が追記されました。
海外で実施された疫学研究において、ヒドロクロロチアジドの長期投与により基底細胞癌及び有棘細胞 癌のリスクが増加することが報告されたことから、ヒドロクロロチアジド含有製剤共通の注意事項とし て、「その他の注意」の項に追記いたしました。
<その他の注意>
海外で実施された疫学研究において、ヒドロクロロチアジドを投与された患者で、基底細胞癌及び有棘細胞癌のリスクが増加することが報告されている。
⑨モディオダール(モダフィニル)【効能追加】
「特発性過眠症に伴う日中の過度の眠気」の効能が追加となりました。
もともとある効能は「ナルコレプシーに伴う日中の過度の眠気」、「持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気」です。
なお、厚生労働省の指導に基づくさらなる厳格な適正使用推進のため、従来の効能も含め、今後、本剤の使用にあたっては、医師・医療機関および薬局の登録が必要になります。
<ナルコレプシー>
耐えがたい、日中の過度の眠気や居眠りを基本症状とする中枢性過眠症の代表的な疾患
<特発性過眠症とは>
日中の眠気が主要症状ですが、眠気の性質がナルコレプシーとは異なり、日中の眠気や居眠りが長時間続く、居眠り後や朝の起床時もリフレッシュせず寝ぼけの状態がしばらく持続する(睡眠酩酊)、といった特徴を示す。
⑩アレセンサ(アレクチニブ)【効能追加】
「再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫」の効能が追加となりました。
⑪ネオーラル内用液(シクロスポリン)【効能追加】
内用液の剤形で「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」の効能が追加となりました。
カプセルの剤形はこの効能は追加となっていません。
⑫オレンシア(アバタセプト)【効能追加】
既承認の関節リウマチの効能に「関節の構造的損傷の防止」に関する記載が追加となりました。
これは国内第Ⅳ相試験及び海外第Ⅲ相試験において関節の構造的損傷の防止効果が確認されたことから追加となりました。
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