オフェブの服薬指導

オフェブの服薬指導
今回は2015年に発売された特発性肺線維症治療薬であるオフェブ(ニンテダニブ)の服薬指導をまとめました。

特発性肺線維症に適応を有する薬剤としては、ピレスパがありますがオフェブは作用機序が異なっています。

オフェブは三つの増殖因子受容体(血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR))のチロシンキナーゼを阻害する特発性肺線維症の治療薬としては初の分子標的薬です。

線維芽細胞の増殖、遊走および形質転換に関わるシグナル伝達を阻害することで、肺線維化の進行を抑制するとされています。

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オフェブ(ニンテダニブ)の概要

服薬指導難度

効能

特発性肺線維症

包 装・規格

オフェブカプセル100mg:28カプセル(14カプセル× 2 )PTP
オフェブカプセル150mg:28カプセル(14カプセル× 2 )PTP

用法・用量

通常、成人にはニンテダニブとして 1 回150mgを 1 日 2 回、朝・夕食後に経口投与する。
なお、患者の状態によりニンテダニブとして 1 回100mgの 1 日 2 回投与へ減量する

名前の由来

特にありません。

指導せん

「オフェブを服用される患者さんへ」という指導用冊子があります。

副作用の説明用に必須です。インターネットからでも印刷可能なので急ぎの場合は印刷して使うことができます。

ピレスパとの併用

オフェブとピレスパの作用機序は異なっているため、併用されることもあります。

併用の場合はオフェブのAUCが低くなる傾向がみられることや「悪心」,「嘔吐」は非併用時に比べ,併用時に多くみられたとの報告もあるようです。

オフェブの服薬指導で確認すること

①妊娠の有無の確認【禁忌】

「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」が禁忌であるため確認します。
 
これは動物(ラット、ウサギ)を用いた生殖発生毒性試験で、催奇形性作用及び胚・胎児致死作用が認められているため設定されています。

②肝機能障害の有無【重要な基本的注意】

「中等度及び高度の肝機能障害(Child Pugh B、C)のある患者には治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること」とされているため確認します。

これは、健康成人に比べて軽度肝障害(Child Pugh A)を有する群ではAUCが2.2倍上昇し、また中等度肝障害(Child Pugh B)を有する群ではAUCが8.7倍上昇したことから設定されています。

③AST又はALTの確認【用法・用量に関連する使用上の注意】★継続確認項目

AST又はALTが基準値上限の 3 倍を超えた場合は、減量又は中断するため、検査値を持参している場合は毎回確認します。

持参がない場合は薬歴に「検査値持参なし」と書いておくとわかりやすいかと思います。

AST又はALTが基準値上限の 3 倍を超えた場合は、本剤の減量又は治療の中断を行い、十分な経過観察を行うこと。

治療を中断し投与を再開する場合には、AST又はALTが投与前の状態に回復した後、 1 回100mg、 1 日 2 回から投与することとし、患者の状態に応じて 1 回150mg、 1 日 2 回へ増量することができる。

再投与又は増量する場合には慎重に投与し、投与後は患者の状態を十分に観察すること。

④P-糖蛋白誘導剤の併用の有無【併用注意】

P-糖蛋白誘導剤の併用により、オフェブの効果が減弱する可能性があるため確認します。

具体的な薬剤名は添付文書には「リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等」と記載されています。

具体的な低下率はリファンピシンのみしか記載がありません。
併用により、オフェブのAUCがおよそ半分になる報告があるため疑義照会はしたほうがよいかと思います。

ただし、代替が難しいのでそのままになる可能性も高いかと思います。

リファンピシンとの併用によりニンテダニブのAUC が約 50%、Cmax が約 60%まで減少した。

P-糖蛋白誘導剤との併用により、本剤の作用が減弱する可能性がある。P-糖蛋白誘導作用のない又は少ない薬剤の選択を検討すること。

オフェブの服薬指導で伝えること

下記の①〜⑨は指導用冊子「オフェブを服用される患者さんへ」を使って説明します。

①肝機能障害【重要な基本的注意】

肝機能障害があらわれることがあるため説明します。具体的な症状に関しては指導用冊子である「オフェブを服用される患者さんへ」を参考にします。

下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

●体がだるく、いつもより疲れやすく感じる 
●微熱が続く
●尿が茶色になったり、皮膚や白目が黄色くなる
●食欲がなく、吐き気がある
●発疹やかゆみがある

AST(GOT)、ALT(GPT)、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。

肝機能障害のある患者に投与する場合は、肝機能検査をより頻回に行うなど、慎重に患者の状態を観察すること。

②消化器症状の説明【用法・用量に関連する使用上の注意】

下痢、悪心、嘔吐等の副作用があらわれることがあるため説明します。具体的な症状に関しては指導用冊子である「オフェブを服用される患者さんへ」を参考にします。

下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

●下痢、吐き気、体重減少、腹痛

下痢、悪心、嘔吐等の副作用が認められた場合は、対症療法などの適切な処置を行ったうえ、本剤の治療が可能な状態に回復するまでの間、減量又は治療の中断を検討すること。

治療の中断後再開する場合は 1 回100mg、 1 日 2 回から再開することを検討すること。患者の状態に応じて 1 回150mg、 1 日 2 回へ増量することができる。

再投与又は増量する場合は慎重に投与し、投与後は患者の状態を十分に観察すること。

③消化管穿孔・血栓塞栓症・出血、血小板減少・間質性肺炎の説明【重大な副作用】

具体的な症状に関しては指導用冊子である「オフェブを服用される患者さんへ」を参考にします。
下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

<消化管穿孔>
●おなかや背中に、突然の強い痛みがおこる
●おなかを触ると、硬く感じる
●吐き気がある
●食欲がない

<血栓塞栓症>
●手足がまひしたり、しびれる
●しゃべりにくい
●胸が痛い
●息苦しい
●片方の足が急に痛くなったり、腫れたりする

<出血、血小板減少>
●あおあざができやすい 
●鼻血がでやすい
●歯ぐきから出血しやすい

<間質性肺炎(薬剤性)>
●息切れする 
●痰のない咳がでる 
●熱がある

④顎骨壊死の説明【その他の注意】

その他の注意の項目に顎骨壊死に関する記載があるため説明します。

具体的な症状に関しては指導用冊子である「オフェブを服用される患者さんへ」を参考にします。
下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

●口の中やあごが痛い 
●歯がぐらつく、抜ける
●あごの周りが腫れる
●下くちびるがしびれた感じがする 
●歯ぐきから膿がでる
●歯ぐきに白色あるいは灰色の硬いものがでてくる

本剤との因果関係は明確ではないが、本剤の癌を対象とした臨床試験において顎骨壊死が認められている。

また、類薬[血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤]において、投与後に顎骨壊死が発現したとの報告があり、多くはビスホスホネート系製剤を投与中又は投与経験のある患者であった。

⑤重篤な皮膚障害の説明【添付文書記載なし】

添付文書には皮膚の副作用としては「発疹」程度しか記載がありませんが、指導用冊子に「重篤な皮膚障害」に関する記載があるため説明します。

これは、オフェブと同様に血管新生阻害作用を有する一部の薬剤では,癌患者を対象とした臨床試験において重篤な皮膚及び皮下組織障害の発現が認められているため、潜在的リスクとして「重篤な皮膚障害」を指導用冊子に記載しているようです。

オフェブの臨床試験では,重篤な皮膚障害の報告は認められていないため、添付文書にはこれに関する記載はありません。(医薬品リスク管理計画書には記載されています)

具体的な症状に関しては指導用冊子である「オフェブを服用される患者さんへ」を参考にします。
下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

●皮膚の広い範囲が赤くなる 
●高熱(38℃以上)がでる
●目が充血する 
●くちびるや口の中がただれる
●のどが痛い

⑥手術時は事前に主治医に相談すること・創傷治癒の遅延の説明【重要な基本的注意】

創傷治癒を遅らせる可能性があるので、手術の際は休薬する場合があるので、事前に主治医に相談することを説明します。なお、目立たないため見落としがちですが、指導用冊子の1ページ目にも「最近手術をした、もしくは手術の予定がある方」は医師に伝えるように記載されています。

また、指導用冊子に「創傷治癒の遅延」の記載があるため説明します。
具体的症状に関して下記の記載があります。

●傷口が開く 
●傷口から出血する

創傷治癒を遅らせる可能性があるので、手術時は投与を中断することが望ましい。手術後の投与再開は患者の状態に応じて判断すること。

VEGFR を介した細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤において創傷治癒を遅延させるリスクが知られており,VEGFR を介した細胞内シグナル伝達を阻害することにより血小板と内皮細胞の恒常性が破綻することで発現すると考えられている。

IPF 患者を対象とした臨床試験において,本剤を投与した症例で肺移植を行った 15 例に当該リスクを示唆する事象の発現は認められなかったが,本剤の薬理作用から創傷治癒の遅延が想定され,IPF 患者に対しては肺移植や他の外科手術が行われる可能性もあることから,手術前には一定期間投与を中断し,手術後には創傷が治癒するまで投与の中断等を考慮することについて注意喚起した。

⑦飲み忘れの対応【適用上の注意】

服薬を忘れた場合は、その分は服用しないで飛ばすことを説明します。

服薬を忘れた場合は、次の服薬スケジュール(朝又は夕方)から推奨用量で再開すること。
本剤の 1 日最大用量300mgを超えて服薬しないこと。

⑧噛まずにコップ一杯の水とともに飲むこと【適用上の注意】

カプセルは噛まずにコップ一杯の水とともに服薬することを説明します。

これはカプセルの内容物には苦みがあり,カプセルを噛んだり砕いたりした時の本剤の薬物動態に対する影響は検討されていないため、適切な服用法として記載されています。

⑨貯法の説明【適用上の注意】

「25℃を超えるところに保存しないこと」を説明します。

PTP 包装で「25°C,75%R.H. 」の場合は6 カ月変化ないことが確認されていますが、「30°C,75%R.H. 」で1 カ月で溶出性に規格内の変化が認められ、「40°C,75%R.H. 」 で 1 カ月で溶出性が規格外となることが確認されています。

⑩食後を守ること

用法が食後であり、食後のほうがAUCがやや高いことや食後のほうが悪心・嘔吐などの胃腸障害軽減が考えられるため食後を守ることを説明します。

本剤は,絶食下と比較し摂食後において曝露量が増加する傾向があり,食事の影響が認められたこと,また,食後に服用した場合,悪心・嘔吐などの胃腸障害軽減が考えられることから,食後投与が選択された。

健康成人にニンテダニブ 150 mg を食後に単回経口投与注)したとき,空腹時投与に比べて tmaxの中央値は約 2 時間延長し,AUC0-∞は約 21%,Cmax は約 15%上昇した

オフェブの服薬指導薬歴例

S)肺線維症
O)併用なし、妊娠なし、肝臓悪いといわれたことなし、検査値持参なし、
A)
指導用冊子を渡して、だるさ、黄疸、食欲低下、吐き気、下痢、腹痛、手足のしびれ、胸の痛み、足の痛や腫れ、あざ、鼻血、歯肉出血、息切れ、咳、発熱、口や顎の痛みや腫れ、皮膚の赤み、口のただれなどでる場合はすぐに医師に連絡するよう説明。

手術時は事前に主治医に相談すること・創傷治癒の遅延の説明。

飲み忘れたらとばすこと、噛まずにコップ一杯の水とともに飲むこと、保存の温度、食後守ること説明。
P)AST又はALTの確認【継続確認項目】

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