アレセンサの服薬指導

アレセンサの服薬指導
今回はかなり稀な薬剤ですが、調剤する機会があったためアレセンサの服薬指導をまとめました。

アレセンサは「ALK融合遺伝子」が認められる非小細胞肺癌を治療する分子標的薬です。手術ができない進行がんのうち、検査でALK融合遺伝子が確認された場合が対象となります。

ALK融合遺伝子が認められるのは非小細胞肺癌の100人に3〜5人程度といわれています。

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アレセンサ(アレクチニブ)の概要

以前は、アレセンサの規格は20mgと40mgしかなく、1回量が300mgであるため、「40mg製剤7カプセル+20mg製剤1カプセル」という計8カプセルを服用する必要がありました。

現在は服薬利便性の向上のため、150mg製剤が販売されているため、ほとんどが150mg製剤(1回2カプセル)での処方となるかと思います。
服薬指導難度

効能

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

用法・用量

通常、成人にはアレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。

名前の由来

ALECtinib + sENSible(賢明な、理にかなった)に由来しています。

薬価

150mg製剤の薬価が6,614.60円であり、高額な薬剤となります。

指導せん

「アレセンサハンドブック」という冊子があります。伝えるべき副作用の内容が充実しており、服薬指導の際は必須かと思います。
製薬会社のホームページでも印刷できます。

また、「アレセンサダイアリー」という、飲み忘れを防止するためのものもあるので、取り寄せて患者に紹介するとよいかと思います。

アレセンサの服薬指導で確認すること

①緊急時連絡カードの有無

間質性肺疾患などの初期症状があらわれた場合に、速やかな対応ができるよう、医師は処方時に「アレセンサ緊急時連絡カード」を患者に渡すこととなっています。

そのため、担当医から緊急時の連絡先が記載された「緊急時連絡カード」を渡されていることを確認します。渡されていない場合は緊急時の連絡先を聞いているかを確認します。

なお、製薬会社は下記のように求めています。

【薬剤師の先生方へのお願い】
次のような場合には、緊急時の連絡先を処方医に確認するよう、患者にご指導いただくとともに、アレセンサ緊急時連絡カード ご連絡窓口(0120-301704)又は弊社医薬情報担当者まで、処方元の医療機関・医師に関する情報をお知らせください。

なお、原則として患者が緊急連絡先を把握した後、薬剤を交付するようお願いいたします。

・ 担当医よりアレセンサⓇ緊急時連絡カードが交付されていない場合、または患者が紛失してしまった場合
・処方施設/医師の変更時に、新しい担当医から患者に、緊急時の連絡先が案内されていることを確認できない場合

②妊娠の有無【禁忌】

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人が禁忌であるため確認します。

③CYP3A阻害剤の併用の有無【併用注意】

CYP3A阻害剤の併用により、アレセンサの血漿中濃度が上昇する可能性があるため確認します。

本剤の血漿中濃度が上昇し、副作用の発現頻度が高まるおそれがあることから、CYP3A 阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。

やむを得ず併用する際には、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

CYP3A4阻害薬の具体的な製剤

添付文書には「イトラコナゾール等」と「等」という記載のため、ベルソムラやバイアグラなどの添付文書を参考に考えると、ジフルカン(フルコナゾール)、ブイフェンド(ボリコナゾール)、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、シメチジン、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、ワソラン(ベラパミル)、ビラセプト(ネルフィナビル)、クリキシバン(インジナビル)、テラビック(テラプレビル)、リトナビル、サキナビル、ダルナビル、コビシスタット)などの薬剤も該当すると考えられます。

アレセンサ自体がハイリスクな薬剤であるため、該当する場合は疑義照会したほうがよいかと思います。

特にクラリスロマイシンなどの場合は代替薬(ジスロマックなど)があるため変更となる可能性が高いと思います。

④CYP3A誘導剤の併用の有無【併用注意】

CYP3A誘導剤の併用により、アレセンサの血漿中濃度が低下する可能性があるため確認します。

本剤の血漿中濃度が低下し、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、CYP3A 誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること

CYP3A4誘導薬の具体的な製剤

添付文書には「リファンピシン 等」と、「等」という記載のため、リファブチン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、フェニトインなどの薬剤も該当すると考えられます。

⑤間質性肺疾患の有無・肝機能障害の有無【慎重投与】

間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者や肝機能障害のある患者は慎重投与となっています。アレセンサハンドブック中でもこれらに該当する場合は治療前に担当医に申し出るように記載されているため確認します。

該当する場合で、かつ医師に伝えていない場合は情報提供に意味合いで疑義照会したほうがよいかと思います。

・間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者[間質性肺疾患が発現又は増悪するおそれがある。

・肝機能障害のある患者[安全性は確立していない。肝機能障害が増悪するおそれがある。

アレセンサの服薬指導で伝えること

下記の①〜⑤はアレセンサハンドブックを使って説明します。

①間質性肺疾患の説明【重要な基本的注意】

具体的な症状に関しては「アレセンサハンドブック」を参考にします。下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

■息切れ
■呼吸がしにくい
■咳が続く
■発熱

間質性肺疾患があらわれることがあるので、息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。

また、胸部CT検査等の実施など、患者の状態を十分観察すること。必要に応じて動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、肺拡散能力(DLCO)等の検査を行うこと。

② 肝機能障害の説明【重要な基本的注意】

具体的な症状に関しては「アレセンサハンドブック」を参考にします。下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

■発熱
■白目や皮膚が黄色くなる、尿が褐色になる
■吐き気、嘔吐、お腹がはる、食欲がない
■体がだるい

AST(GOT)、ALT(GPT)、ビリルビン等の増加を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。

③好中球減少・白血球減少の説明【重要な基本的注意】

具体的な症状に関しては「アレセンサハンドブック」を参考にします。下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

■悪寒
■発熱

好中球減少、白血球減少等があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に血液検査(血球数算定、白血球分画等)を行い、患者の状態を十分に観察すること。

④消化管穿孔・血栓塞栓症の説明【重大な副作用】

具体的な症状に関しては「アレセンサハンドブック」を参考にします。下記の症状が見られたらすぐに医師に連絡するよう説明します。

<消化管穿孔>
■突然強い腹痛が起きる

<血栓塞栓症>
■胸が痛い、締めつけられるような感じがする
■足がむくむ、痛みがある
■息切れ、息苦しさ

⑤味覚がかわる(味覚異常)・発疹・便秘の説明【その他の副作用】

「アレセンサハンドブック」の該当箇所を見せながら説明します。症状が出たら医師に相談するよう説明します。

⑥避妊を行うこと(妊娠可能な女性の場合)【妊婦、産婦、授乳婦等への投与】

「妊娠可能な婦人には、適切な避妊を行うよう指導すること」とされてきるため、該当する患者に対しては避妊をするよう説明します。

この内容は【重要な基本的注意】でなく、なぜか妊婦、産婦、授乳婦等への投与】の項目に記載されているため、とても見落としやすい内容となります。

一応、指導冊子にも記載がありますが、小さい文字で見落としやすい記載となっています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。妊娠可能な婦人には、適切な避妊を行うよう指導すること。[動物実験(ラット、ウサギ)において、胚・胎児の死亡、流産、内臓異常、骨格変異等が報告されている。]

⑦1回2カプセルであること(150mgの規格の場合)

1回2カプセルであるため、飲み間違えないよう説明します。

アレセンサの服薬指導薬歴例

S)肺の腫瘍
O)併用なし、妊娠なし、緊急時連絡カード有り、間質性肺疾患なし、肝臓悪いといわれたことなし
A)指導用冊子を渡し、咳、息切れ、呼吸がしにくい、悪寒、発熱、黄疸、だるさ、吐き気、尿色褐色、強い腹痛、胸痛、足の痛み、むくみなどでる場合はすぐに医師に連絡するよう説明。

味覚がかわる(味覚異常)・発疹・便秘でる場合は医師に相談するよう説明。
1回2カプセルであること注意指示。
避妊をするよう説明【妊娠可能な女性の場合】
P)副作用確認

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