今回はベタニス(ミラベグロン)の服薬指導についてまとめてみました。尿閉とQT延長の副作用を伝える必要がある点に留意が必要です。また、空腹時投与で本剤血漿中濃度が高くなる傾向があり食後投与となっています。
ベタニスの概要
服薬指導難度
効能
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
用法・用法
50mgを1日1回食後
名前の由来
Beta 3 agonistの「Betanis」 より命名されています。
特徴
・選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤
・空腹時投与で本剤血漿中濃度が高くなり、Cmaxは2倍、AUCは1.5倍程度に増加する。
・現時点では過活動膀胱の適応を有する抗コリン剤やステロイド合成・代謝系への作用を有する5α還元酵素阻害薬と併用した際の安全性及び臨床効果が確認されていないため併用は避けることが望ましい(添付文書の重要な基本的注意より引用)。
ベタニスの服薬指導で確認すること
①併用の有無
フレカイニド酢酸塩(タンボコール)、プロパフェノン塩酸塩(プロノン、ソビラール)は併用禁忌となっています。
②生殖可能な年齢でないか(警告)
ラットで、精嚢、前立腺、子宮の重量低値や萎縮等の生殖器系への影響があり、高用量で発情休止期の延長、黄体数の減少に伴う着床数及び生存胎児数の減少が認められているため設定されています。
③妊娠・授乳の有無(禁忌)
妊娠に関してはラット、ウサギで胎児への影響が認められたため設定されています。胎児の着床後死亡率の増加、体重低値、肩甲骨等の屈曲、大動脈の拡張などの異常が認められています。
授乳に関してはミラベグロンの乳汁への移行や出生児の組織への分布及び出生児への影響が認められたため設定されています。授乳期に本薬を母動物に投与した場合、出生児で生存率の低値及び体重増加抑制が認められています。
③心疾患・肝機能障害の有無
重篤な心疾患を有する患者、重度の肝機能障害患者は禁忌となっています。
④緑内障の有無(慎重投与)
海外の臨床試験で緑内障の悪化が1例報告されているため慎重投与となっています。後述しますが「緑内障患者に本剤を投与する場合には、定期的な眼科的診察を行うこと」、と記載されているため緑内障の有無を確認します。
ベタニスの服薬指導で伝えること
①QT延長の注意(心血管系障害を有する患者)
QT延長を生じるおそれのあることから、心血管系障害を有する患者に対しては本剤の投与を開始する前に心電図検査を実施するなどし、心血管系の状態に注意をはらうこと。(添付文書の重要な基本的注意より引用)
添付文書上は特にQT延長が見られた場合の対応が記載されていませんが、個人的には心血管系障害を有する患者には脈の異常を感じるなど不整脈の兆候がみられた場合には場合は直ちに受診するように説明しておいたほうが良いと考えています。
②緑内障の悪化の注意
緑内障患者に本剤を投与する場合には、定期的な眼科的診察を行うこと。(添付文書の重要な基本的注意より引用)
これは海外の臨床試験で緑内障の悪化が1例報告されているため設定されています。個人的な考えですが薬剤師としての対応としては緑内障の患者にベタニスが処方された際にはまれに眼圧に影響を与える場合があるため服用を眼科にも伝えるよう説明し、万一異常な目の痛みなど出る際はすぐ受診することを伝えるようにすると良いと思います。
③かまずに服用すること
本剤は徐放性製剤であるため、かまずに服用するよう指導すること。(添付文書の適用上の注意より引用)
④尿閉の注意(重大な副作用)
重大な副作用として尿閉の記載があるため説明しておく必要があります。単に副作用として説明するよりも作用の延長線上として効きすぎると尿が出なくなる場合があるという説明がよいと思います。
⑤高血圧の注意(重大な副作用・重要な基本的注意)2016年3月改訂
患者に対して異常な血圧上昇が見られた際は受診するように説明するなどの対応が考えられます。
高血圧に関する内容は2016年3月に添付文書に追加となった項目です。重要な基本的注意に「血圧の上昇があらわれることがあるので本剤投与開始前及び投与中は定期的に血圧測定を行うこと」と記載されました。また、重大な副作用に高血圧が記載されました。
「血圧の上昇があらわれることがあり、収縮期血圧180mmHg以上又は拡張期血圧110mmHg以上に至った例も報告されているので、観察を十分に行い異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
これは欧州において、本剤投与後に高血圧クリーゼが発現した症例及び高血圧と脳心血管系イベントが併発した症例が報告されたことや国内においても国内外市販後における高血圧症例の集積状況を検討した結果から設定されています。
ベタニスの服薬指導薬歴例
S)頻尿で追加となった
O)心疾患・肝機能障害・緑内障なし・併用なし
A)
薬が効きすぎて尿が出なくなる場合はすぐ受診指示。(尿閉)
かまずに服用するよう説明。
脈の異常を感じる場合は受診指示(QT延長・心血管系障害を持つ場合)
まれに眼圧に影響する場合があるため眼科に併用を伝えるとともに万一眼の痛み出る場合は救急受診指示。(緑内障の場合)
万一異常な血圧上昇が見られた際は受診するように説明。
P)効果確認
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