今回はアサコールの服薬指導をまとめました。アサコールは2009年に発売された潰瘍性大腸炎を効能とする経口メサラジン(5-アミノサリチル酸:5-ASA)製剤です。
メサラジンは優れた抗炎症作用を発揮するものの、経口投与ではほとんどが大腸に到達する前に小腸で吸収されてしまいます。
そのため、潰瘍性大腸炎の病変部位である大腸に十分なメサラジンが送達されるように、アサコールは、メサラジンを高分子ポリマーでコーティングすることにより、pH7以上となる回腸末端から大腸全域にメサラジンが放出されるように設計されています。
アサコールの概要
服薬指導難度
効能
潰瘍性大腸炎(重症を除く)
用法・用量
従来ではアサコールの用法は寛解期、活動期ともに1日3回でしたが、2017年5月の改訂により「寛解期」であれば、必要に応じて 2,400 ㎎の 1 日 1 回投与が可能となりました。
なお、活動期には従来どおりを1日3 回に分ける用法のみとなります。
通常,成人にはメサラジンとして1日2,400mgを3回に分けて食後経口投与するが,寛解期には,必要に応じて1日1回2,400mg食後経口投与とすることができる。活動期には,1日3,600mgを3回に分けて食後経口投与する。
なお,患者の状態により適宜減量する。
名前の由来
アサコールは5-アミノサリチル酸(5-aminosalicylic acid:5-ASA)の略号である“ASA”と大腸の英語colonの最初の3文字“col”を組合せて命名されています。
アサコールの服薬指導で確認すること
① 肝機能・腎機能障害の有無【重篤な場合禁忌】
肝機能障害、腎機能障害ともに重篤な場合に禁忌となります。アサコールの排泄や代謝が遅延し、腎・肝障害がさらに悪化するおそれがあるため禁忌となっています。
② サリチル酸アレルギーの有無【禁忌】
交叉アレルギーを発現する可能性があるため設定されています。サリチル酸塩により、過敏症を起こした患者は、アサコールでも同様な副作用を引き起こすおそれがあります。
患者から聴取する際はサリチル酸といってもわからないと思うので、副作用歴全般を聴取するのが現実的な対応かと思います。
アサコールの服薬指導で伝えること
①腎機能障害の説明【重要な基本的注意】
ネフローゼ症候群,間質性腎炎が報告されているため,投与中は腎機能を検査するなど,患者の状態を十分に観察することと記載されています。
これは動物実験で高用量群(200mg/kg以上)で腎臓への影響が認められていることや外国でネフローゼ症候群、間質性腎炎の報告があることが根拠となっているようです。
添付文書上に具体的な症状の記載はありません。患者向医薬品ガイドも存在しないようなので、重篤副作用疾患別対応マニュアルなどを参考にするとよいかと思います。
間質性腎炎に関しては発熱、皮疹、関節痛やはき気、下痢、腹痛などの消化器症状がみられ、その症状が持続したり、その後むくみや尿量が少なくなるなど出る際はすぐ受診するよう説明します。
②肝機能障害の説明【重要な基本的注意】
肝炎,肝機能障害,黄疸が報告されているため投与中はAST,ALT等の肝機能をモニターするなど,患者の状態を十分に観察することと記載されています。
こちらも添付文書上に具体的な症状の記載はないため、重篤副作用疾患別対応マニュアルの薬剤性肝炎を参考にするとよいと思います。発疹、倦怠感、食欲低下、吐き気、茶褐色尿、黄疸などに気づいた場合には、すぐに受診するよう説明します。
③過敏症状や潰瘍性大腸炎の悪化の説明【重要な基本的注意】
メサラジンにより過敏症状(発熱,腹痛,下痢,好酸球増多等)が発現することがあり,また,潰瘍性大腸炎が悪化することがあるため,異常が認められた場合には,減量又は投与を中止することと記載されています。
過敏症状の発熱、腹痛、下痢は潰瘍性大腸炎自体の症状でもあります。発熱,腹痛,下痢がでたり、もとの症状が悪くなるようであれば受診するよう説明します。
④かまずに服用すること【適用上の注意】
放出調節製剤であるため,かまずに服用することされています。また,乳鉢による粉砕は避けることと記載があります。
⑤ゴーストピルの説明【適用上の注意】
便中に錠剤がみられる場合があります。
アサコールの薬歴例
S)潰瘍性大腸炎
O)肝・腎異状なし、副作用歴なし
A)発熱,腹痛,下痢がでたり、もとの症状が悪くなるようであれば受診するよう説明。万一発疹、倦怠感、食欲低下、吐き気、茶褐色尿、黄疸、尿量低下、むくみなどに気づいた場合には、すぐに受診するよう説明。
噛まずに服用すること説明。ゴーストピルについて説明。
P)副作用確認
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