2019年9月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はドパミン受容体作動薬の「薬剤離脱症候群」に関する改訂やステロイドの吸入や坐薬までも併用禁忌となってしまう「ミニリンメルトOD錠25μg/50μg」 が発売されたことによる各種製剤の併用禁忌追記の内容が主なものとなります。
①カバサール(カベルゴリン)【重要な基本的注意】
高プロラクチン血性下垂体腺腫のうち「トルコ鞍外に進展する」や「視野障害のみられる」といった限定された患者においての注意が「重要な基本的注意」に追記されました。
また、 悪性症候群及び薬剤離脱症候群の内容が追記されました。
トルコ鞍外に進展する高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者において、本剤の投与による腺腫の縮小により髄液鼻漏がみられ、髄膜炎に至ることがあるので、異常が認められた場合には、減量又は中止するなど適切な処置を行うこと。
視野障害のみられる高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者において、本剤投与により腺腫の縮小がみられ、一旦、視野障害が改善した後、トルコ鞍の空洞化により視交叉部が鞍内に陥入することによって、再び視野障害があらわれたとの報告がある。異常が認められた場合には、減量又は中止するなど適切な処置を行うこと。
パーキンソン病治療において、本剤の減量・中止が必要な場合は、漸減すること。急激な減量又は中止により、悪性症候群(Syndrome malin)があらわれることがある。
また、ドパミン受容体作動薬の急激な減量又は中止により、薬剤離脱症候群 (無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等の症状を特徴とする)があらわれることがある。
②ドパミン受容体作動薬(ドミン、ビ・シフロール、レキップなど)【重要な基本的注意・その他の副作用】
薬剤離脱症候群に関する内容が「重要な基本的注意」、「その他の副作用」に追記となりました。
なお、薬剤によっては添付文書の記載内容に具体的な症状の記載がなかったりと若干の違いがあります。下記はドミンからの引用となります。
<重要な基本的注意>
本剤の減量・中止が必要な場合は、漸減すること。
急激な減量又は中止により、発熱、意識障害、無動無言、高度の筋硬直、不随意運動、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗、血清CK(CPK) の上昇等を症状とするSyndrome malin(悪性症候群)があらわれることがある。
また、ドパミン受容体作動薬の急激な減量又は中止により、薬剤離脱症候群(無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等の症状を特徴とする)があらわれることがある。
<その他の副作用>
薬剤離脱症候群(無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等)
*異常が認められた場合には、投与再開又は減量前の投与量に戻すなど、適切な処置を行うこと。
③ゼルヤンツ(トファチニブ)【効能又は効果に関連する注意】
心血管系事象のリスク因子を有する患者に対して静脈血栓塞栓症の注意喚起の内容が追記されました。
国内では症例は認められていないものの、心血管系事象のリスク因子を 1 つ以上有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象に実施中の海外臨床試験でTNF阻害剤群と比較し本剤10mg 1 日 2 回群において肺塞栓症及び死亡リスクが高い傾向が認められたことを踏まえ、改訂されました。
<効能又は効果に関連する注意>
心血管系事象のリスク因子を有する患者に本剤を投与する際には、他の治療法を考慮すること。
<心血管系事象のリスク因子を有する患者>
他の治療法を考慮すること。特に 10mg 1 日 2 回投与の必要性については慎重に判断すること。 本剤を投与する場合は、静脈血栓塞栓症の徴候及び 症状の発現について十分に観察すること。 静脈血栓塞栓症があらわれるおそれがある。
心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動 脈疾患の既往等)を 1 つ以上有する 50 歳以上の関節 リウマチ患者を対象に実施中の海外臨床試験において、肺塞栓症及び深部静脈血栓症の発現頻度は TNF 阻害剤群と比較し、本剤 5mg 1 日 2 回群及び本剤 10mg 1 日 2 回群で用量依存的に高くなる傾向が認められており、心突然死等を含む死亡の発現頻度は TNF 阻害剤群と本剤 5mg 1 日 2 回群で同程度、本剤 10mg 1 日 2 回群で高い傾向であったことが報告されている。
④一般診断用精製ツベルクリン(PPD)【禁忌】
下記が原則禁忌から禁忌に移行しました。
1.ツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう、壊死等の非常に強い反応を示したことのある者
2.上記に掲げる者のほか、ツベルクリン反応検査を行うことが不適当な状態にある者
⑤チアジド系 利尿剤・チアジド類似剤、ループ利尿剤、副腎皮質ステロイド剤(注射剤、経口剤、吸入剤、注腸剤、坐剤)【併用禁忌】
デスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間多尿による夜間頻尿)が併用禁忌に追記されました。
これは以前に新薬承認情報のところでも注意喚起した「男性における夜間多尿による夜間頻尿」を効能とするミニリンメルトOD錠の新用量製剤「25µg、50µg」が発売されたことによる改訂となります。
キュバールは改訂されましたが、フルタイドはまだ改訂が遅れているなど、製剤により新薬に対する併用禁忌改訂が遅れているものがあるため注意が必要です。
なお、チアジド利尿薬は配合剤にも含有するため、見落としやすいことに注意する必要があります。
⑥レキソタン(プロマゼパム)【併用注意】
併用注意にフルボキサミンが追加となりました。
<臨床症状>
本剤の中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。
<機序・危険因子>
肝臓での酸化的代謝が阻害され、本剤のAUCの増加、血中半減期の延長が報告されている。
薬剤師としての対応
製薬会社に確認したところ、 フルボキサミン併用によるレキソタンのAUCは2.4倍、Cmax1.4倍、半減期1.9倍程度ということでした。
AUCはそれなりに増大するため、併用の際は少なくともレキソタンの作用増強による副作用の注意説明が必要で、場合によっては疑義照会対応も考慮されます。
フルボキサミン服用中にレキソタン追加の場合
この場合は疑義照会し、AUCが2倍になる報告があるため、レキソタンの開始用量を減量するか確認する対応がよいかと思います。
レキソタン服用中にフルボキサミン追加の場合
この場合は処方医が同一か、など状況により対応に苦慮します。選択肢としては下記の3点ですが妥当なのは1か2かなと思います。
1.疑義照会し、服用中のレキソタンを減量するかどうか確認する
2.減量せず副作用がでたら受診してもらう
3. 疑義照会し、フルボキサミンを変更する
処方医が同一であれば、1か2、処方医が異なる場合は2の対応が現実的かもしれません。ただし、レキソタンの服用量が高用量である場合は 処方医が異なる場合でも疑義照会したほうがよいかと思います。
減量せず副作用がでたら受診してもらう場合の説明例
当然ですが、患者にはAUC増大率は話さないほうがよいかと思います。
「今回、フルボキサミンが追加となりますが、服用中のレキソタンとの飲みあわせで、稀ですがレキソタンの効き目が上がってしまうという報告もあるため、もし眠気、ふらつきなど、効きすぎてしまう症状が出る場合は量を調節する場合があるため受診してください」
⑦マヴィレット(ピブレンタスビル・グレカプレビル )【効能追加】
12 歳以上の小児に対する効能が追加となりました。
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