2018年2月分 DSUのまとめ・解説

2018年2月分 DSUのまとめ・解説
今回は2018年2月分のDSUのなかから、薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

今回はエビリファイの「衝動制御障害」やフォルテオの「ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、 転倒」に関する内容が主なものとなります。

これらは添付文書に「指導すること」と明記されているため、従来の服薬指導に加えて説明する必要がある内容です。

そのため、患者に対してどういうふうに説明するか考えておく必要があります。

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①エビリファイ(アリピプラゾール)【重要な基本的注意】

「重要な基本的注意」に衝動制御障害に関する注意が追記となりました。

「原疾患による可能性もあるが、本剤投与後に病的賭博(個人的生活の崩壊等 の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害があらわれたとの報告がある。

衝動制御障害の症状について、あらかじめ患者及び家族等に十分に説明を行い、症状があらわれた場合には、医師に相談するよう指導すること。

また、患者の状態及び病態の変化を注意深く観察し、症状があらわれた場合には必要に応じて減量又は投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。」

薬剤師の対応

今回の改訂に伴い、「衝動制御障害の症状について、あらかじめ患者及び家族等に十分に説明を行い、症状があらわれた場合には、医師に相談するよう指導すること」と明記されたため、服薬指導の際に患者に説明する必要があります。

具体的対応としては、指導せん「エビリファイを服用される患者さんへ Q&A」にはこの内容が早々に追記改訂されているため、取り寄せて利用するのがよいかと思います(製薬会社のホームページから閲覧もできます)。

ただし、この指導せんは疾患別(統合失調症、うつ病、双極性障害など)となっており、薬局側では疾患が特定しにくいため、「必要なページだけ切り離して使う」、「必要なページだけ印刷する」といった対応も考慮したほうがよいかと思います。

②フォルテオ皮下注キット(テリパラチド)【重要な基本的注意】

「重要な基本的注意」に、ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、 転倒に関する内容が追記されました。

「本剤投与直後から数時間後にかけて、ショック、一過性の急激な血圧低下 に伴う意識消失、痙攣、転倒があらわれることがある。

投与開始後数ヵ月以上を経て初めて発現することもあるので、本剤投与時には以下の点に留意するよう患者に指導すること。

1)投与後30分程度はできる限り安静にすること。
2)投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面 蒼白、冷汗等が生じた場合には、症状がおさまるまで座るか横になること。」

改訂理由

国内における使用例において、ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、 転倒の発現例が集積されており、注意喚起が必要と判断され改訂されました。

副甲状腺ホルモンは血管平滑筋拡張作用から血圧を低下させる作用が知られており、テリパラチド製剤使用時に一過性の急激な血圧低下をはじめ起立性低血圧やめまいが起こることがあります。

また、これら事象が発現した場合には転倒や階段からの転落等の二次的な重大な事象につながる可能性があり、テリパラチド製剤使用時にこれら事象が発現する恐れがあるため、投与後30分程度はできる限り安静にするよう患者に指導することと記載されました。

今回の改訂の疑問点

今回のように、副作用発現時に速やかに受診するのでなく、おさまるまで待機するよう明記する添付文書はかなり珍しい気がします。

転倒防止の意図はわかりますが、おさまらなかったり、待機をすることで重篤になってしまった際のことを踏まえると製薬会社としてこの内容は適切な記載なのか個人的には疑問があります。

製薬会社に上記のおさまるまで座るなどの対応で手遅れになったりすることは考えなくていいのか確認したところ、それは考えなくていいとの回答ではありましたが、濁した感じの返答であったため製薬会社として公式の回答かは微妙なところです。

薬剤師の対応

添付文書に「指導すること」と明記されている内容を指導しますが、個人的にはこれに加えて、おさまらなかった場合などの対応も話しておいたほうが無難かと思います。

話し方の例(参考)

「投与直後から数時間後にかけて、ごくまれに急激な血圧低下に伴う転倒や意識消失がみられることがあります。

投与開始後数ヵ月以 上を経て初めて発現することもあるので、投与後30分程度はできる限り安静にするようにしてください。

また、万一、血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分がすぐれない、吐き気、顔面が蒼白になる、冷や汗などがあらわれた場合は、症状がおさまるまで座るか横になってください。

この対応でおさまるとされていますが、万一、全然おさまらない、急激に悪くなる、呼吸が苦しくなるなどの場合は救急車を呼ぶなどしたほうがよいかと思います。」

③リクシアナ錠( エドキサバン )【重大な副作用】

「重大な副作用」 に「間質性肺疾患」が追加となりました。

「間質性肺疾患があらわれることがあり、血痰、肺胞出血を伴う場合もあるので、観察を十分に行い、咳嗽、息切れ、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を 実施すること。

間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。」

④アミノレバンEN配合散【フレーバー配合製品の発売】

従来製品であるフレーバー非配合製品の販売が終了し、フレーバー配合製品(フルーツ味、コーヒー味)が販売となります。

フレーバー非配合製品の販売終了に伴い、アミノレバンEN配合 散専用フレーバー4種類(ヨーグルト味ミックス、パイナップル味ミックス、コーヒー味ミックス、フルーツ味ミックス)は提供終了となります。

なお、ゼリーの素は継続して提供されるようです。

⑤トルツ皮下注オートインジェクター・シリンジ(イキセキズマブ)【重要な基本的注意】

尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症 の効能を持つトルツの在宅自己注射が公的医療保険の保険診療として認められたため、「重要な基本的注意」に在宅自己注射する場合の注意が追記となりました。

「自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。

また、適用後、感染症等本剤による副作用が疑われる場合や、自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。

更に、オートインジェクター又はシリンジの安全な廃棄方法に関する指導を行い、使用済みのオートインジェクター又はシリンジを廃棄する容器等を提供すること。」

⑥ハイドレアカプセル (ヒドロキシカルバミド)【妊婦、産婦、授乳婦等への投与】

「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項目に避妊に関する内容が追記となりました。

また、妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊をするよう指導すること。
〔妊娠中に本剤を投与された患者で児の奇形 が報告されており、動物実験(ラット、ウサギ等)において、催奇形作用及 び胚・胎児死亡が報告されている。〕」

「パートナーが妊娠する可能性のある男性には、本剤投与中及び投与終了後 一定期間は適切な避妊をするよう指導すること。
〔細菌を用いた復帰突然変 異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及びマウス、ラットを用い た小核試験において、遺伝毒性が報告されている。〕」

避妊期間〈参考〉

投与終了後の避妊期間に関してはインタビューフォームに参考情報として下記の記載があります。

この内容を踏まえると少なくとも「男性は1年以上」、女性は「6 ヶ月以上」必要かと考えられます。ただし、添付文書には避妊期間に関しては明記されていないため、医師により避妊期間の指示が異なる可能性があります。

そのため、薬剤師側からは投与終了後の避妊期間に関しては明言せずに、医師に確認するように話したほうが無難かと思います。

男性における化学療法終了後の精子損傷や染色体構造異常がみられなくなるまでの期間に関して統一した見解は得られておらず、複数の文献報告において化学療法終了後の避妊が推奨されている。

Morrisらは、治療中及び治療終了後1年以上は避妊を行うよう推奨しており、Nangiaらは癌治療終了後の避妊期間について、精子形成の後期に一過的な影響を受けた後、精子が回復して無精子症に至らなかったか、あるいは速やかに回復した場合は、1年間の避妊期間が妥当であるとしている。

本剤については、上記の文献報告に加えて、CCDS及び米国添付文書にて1年以上の避妊を推奨している。

一方、女性においては、CCDSには避妊期間の明記はないものの、米国添付文書において6 ヶ月以上の避妊を推奨している。

⑦ボリコナゾール(ブイフェンド)【その他の注意】

従来より「皮膚扁平上皮癌及び悪性黒色腫が 発生したとの報告がある」などの記載がされていましたが、今回の改訂で 「その他の注意」の項に海外の観察研究より得られた知見が追記となりました。

「肺移植あるいは心肺移植患者を対象とした海外の観察研究において、本剤曝露患者では皮膚扁平上皮癌の発生リスクがアゾール系抗真菌薬非曝露患者と比較して有意に高く(ハザード比:2.39、 95%信頼区間 1.31-4.37)、この発生リスクは180日を超える長期曝露の患者で高い(ハザード比: 3.52、95%信頼区間 1.59-7.79)との報告がある。」

⑧オゼックス点眼液【取扱い上の注意】

取扱い上の注意の「主な点眼液との配合変化」の項目の「レスキュラ点眼液」が従来の「配合変化なし」から「配合変化あり」に変更となりました。

これはオゼックス点眼液承認申請時に実施した配合変化試験ではレスキュラ点眼液 0.12%との配合変化は認められませんでしたが、レスキュラ点眼液 0.12%の組成変更に伴い再度配合変化試験を実施した結果、配合変化(外観変化)が認められたことが理由となっています。

オゼックス点眼液の配合変化

製薬会社があまりアナウンスしていないからか、認知度が低い印象がありますが、添付文書上では下記の薬剤で「配合変化あり」となっており、原則として配合変化が認められる点眼液との併用は避けることとされています。

また、下記以外の薬剤でもインタビューフォームには非常に多くの薬剤で配合変化が見られています。(個人的にはここまで多くの製剤と配合変化を起こすような点眼剤は使用しないほうがいいかと思います)

製薬会社に確認したところ、中には5分おけば大丈夫なものもあるが社内資料であり提供不可のため、該当する場合は、その都度製薬会社に確認して欲しいとのことです。

・リンデロン点眼・点耳・点鼻液 0.1%
・ニフラン点眼液 0.1%、
・ジクロード点眼液 0.1%、
・ブロナック点眼液 0.1%
・点眼・点鼻用リンデロンA液
・リザベン点眼液 0.5%
・インタール点眼液 2%
・タチオン点眼用 2%
・ミドリンM点眼液 0.4% 
・キサラタン点眼液 0.005%
・チモプトール点眼液 0.25%、チモプトールXE点眼液 0.5%
・トルソプト点眼液 1%
・ミケラン点眼液 2%
・リズモンTG点眼液 0.5%
・フラビタン点眼液 0.05%
・レスキュラ点眼液0.12%

薬剤師の対応

オゼックス点眼液と他の点眼液を併用する場合は、添付文書及びインタビューフォームの配合変化を確認し、配合変化ありの場合は製薬会社に5分おくなどの対応で回避できるかを確認します。

回避できない場合は、オゼックスをクラビット点眼(配合変化試験の実施はしていないが、5分おく対応での配合変化の報告は無いとのこと)などに変更するのが、シンプルな対応かと思いますが、オゼックス点眼を変更しにくい状況であれば、代替薬も併せて製薬会社に確認し、医師に疑義照会する対応となるかと思います。

⑧インフルエンザHAワクチン“化血研”、インフルエンザHAワクチン「北里第一三共」、インフルエンザHAワクチン「生研」、「ビケンHA」

製剤の特性から開封後はできるだけ速やかな使用を推奨するため、複数回使用可能な製剤では統一して「当日中に使用する」と記載されていましたが、平成29年9月15日付通知(医政経 発 0915 第 1 号、健健発 0915 第 2 号、健感発 0915 第 6 号)に合わせ、当該記載が「24 時間以内に使用する」に変更されました。

⑨リスパダール内用液【適用上の注意】

「適用上の注意」に希釈する場合の注意及び混合不可の飲料などの注意が追記されました。これは、従来添付文書の「参考」部分に記載されていた内容が「適用上の注意」に移動したようです。

2)薬剤交付時:以下について患者に指導すること。
(1)分包品においては、包装のまま服用しないこと。

(2)本剤を直接服用するか、もしくは1回の服用量を水、ジュース又は汁物に混ぜて、コップ一杯(約150mL)くらいに希釈して使用すること。なお、希釈後はなるべく速やかに使用すること。

(3)茶葉抽出飲料(紅茶、烏龍茶、日本茶等)及びコーラは、混合すると含量が低下することがあるので、希釈して使用しないこと。
(4)30mLの瓶包装品に添付されているピペットの最小目盛は、約0.05mLである。

(5)分包品(0.5mL、1mL、2mL、3mL)は、1回使い切りである。開封後は全量を速やかに服用すること。

DSU等の解説
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