2017年8月分 DSUのまとめ・解説

2017年8月分 DSU
今回は2017年8月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

それほど大きな改訂はありませんが、チャンピックスの警告削除やイナビルの「気管支攣縮、呼吸困難」の追記などは把握しておいたほうがよいかと思います。

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①アデムパス錠(リオシグアト)【併用禁忌・重要な基本的注意】

1.併用禁忌追加

併用禁忌にヴィキラックス(オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)が追加となりました。

なお、ヴィキラックス配合錠側の添付文書には以前より記載されています。

2.重要な基本的注意追加

重要な基本的注意に間質性肺病変を伴う肺動脈性肺高血圧症の患者にアデムパスを投与する場合の注意が追記となりました。

「特発性間質性肺炎に伴う症候性肺高血圧症を対象とした国際共同試験において、本剤投与群ではプラセボ投与群と比較して重篤な有害事象及び死亡が多く認められた。

間質性肺病変を伴う肺動脈性肺高血圧症の患者に本剤を投与する場合は、間質性肺疾患の治療に精通した専門医に相談するなど、本剤投与によるリスクとベネフィットを考慮した上で、投与の可否を慎重に検討すること。」

これは特発性間質性肺炎に伴う症候性肺高血圧症(PH-IIP)患者を対象とした国際共同プラセボ対照比較試験の結果,プラセボ投与群に比較して本剤投与群では重篤な有害事象及び死亡が多く認められたため,試験が早期に中止されたことからの注意喚起となります。

製薬会社は、PH-IIP でないことを診断の上,本剤の投与を開始してすること、また、PH-IIP と間質性肺病変を伴う肺動脈性肺高血圧症の鑑別が困難な患者の場合は,間質性肺疾患の治療に精通した専門医に相談いただくなど,本剤投与によるリスクとベネフィットを考慮した上で,投与の可否を慎重に検討するよう注意を促しています。

なお、本剤は,現時点では国内外において PH-IIP の効能・効果を有しておらず,また開発計画もありません.

②ワーファリン(ワルファリン)【重大な副作用・併用注意】

1.重大な副作用追加

重大な副作用に「カルシフィラキシス」が追加となりました。

「周囲に有痛性紫斑を伴う有痛性皮膚潰瘍、皮下脂肪組織又は真皮の小~中動脈の石灰化を特徴とするカルシフィラキシスがあらわれ、敗血症に至ることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。」

カルシフィラキシス(Calciphylaxis)とは

Calciphylaxis(カルシフィラキシス)は、慢性透析患者を中心として生じる多発性皮膚潰瘍を主病巣とする疾患であり、皮膚からの感染により敗血症を併発することが多く、その死亡率は50%を越えると報告されている。

その概念は1962年Selyeらにより実験動物での知見から提唱され、カルシウム代謝異常による小血管の石灰化を指していたが、臨床の場では、頭記のような難治性皮膚潰瘍で、小血管石灰化が原因と考えられるものをcalciphylaxisとよんでいる。

当初、副甲状腺ホルモンの分泌異常に対する何らかの反応性変化が根底にあるという考えから、カルシウム代謝異常によるanaphylaxis様反応としてcalciphylaxisと名付けられた。

Calciphylaxis 診断基準(案)

厚生労働省難治性疾患克服研究事業 「Calciphylaxis の診断・治療に関わる調査・研究」班では、以下の臨床症状 2項目と皮膚病理所見を満たす場合、または臨床症状 3 項目を満たす場合 calciphylaxis と診断される。

【臨床症状】
1. 慢性腎臓病で透析中、または糸球体濾過率15 mL/min以下の症例。
2. 周囲に有痛性紫斑をともなう、2ヶ所以上の皮膚の有痛性難治性潰瘍。
3. 体幹部、上腕、前腕、大腿、下腿、陰茎に発症する、周囲に有痛性紫斑をともなう皮膚の有痛性難治性潰瘍。

【皮膚病理所見】
皮膚生検は、可能な場合に実施する。臨床症状の2項目を満たす場合、他の疾患との鑑別困難な場合は、特に皮膚生検を行うことを推奨する。

特徴的な皮膚生検所見は下記の通りである。
皮膚の壊死、潰瘍形成とともに、皮下脂肪組織ないし真皮の小〜中動脈における、中膜、内弾性板側を中心とした石灰化、および、浮腫性内膜肥厚による内腔の同心円状狭窄所見を認める。
注) 特に潰瘍、紫斑が極めて強い疼痛をともなうことは重要な症状である。

薬剤師の対応

「有痛性紫斑を伴う」皮膚潰瘍であるため、従来の服薬指導で「あざ」に関する説明をしていれば、今回の改訂により特に追加で説明することはないかと思いますが、「あざ」とともに「潰瘍」の部分も伝えるのであれば「皮膚のあざやただれ」といった表現になるかと思います。

2.併用注意追加

併用注意の「パロキセチン、フルボキサミン」の記載がグループ名である「選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)」に変更となり、また、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)」が併用注意に追加となりました。

これにより、パロキセチンとフルボキサミン以外のSSRIであるジェイゾロフト(セルトラリン)も併用注意となります。

また、ブリリンタ(チガログレル)、エフィエント(プラスグレル)も併用注意に追加されました。

③イナビル(ラニナミビル)【重大な副作用・重要な基本的注意】

重大な副作用に「気管支攣縮、呼吸困難」が追加となり、【重要な基本的注意】にもこれに関する注意が記載されました。

これは本剤との関連性が否定できない気管支攣縮、呼吸困難等の呼吸器症状を発現した症例が報告されたことが理由となっています。

この内容は従来では「リレンザ」で指摘されてきた内容ですが、今後はイナビルでも注意が必要となります。

<重大な副作用>
「気管支攣縮、呼吸困難があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。」

<重要な基本的注意>
インフルエンザウイルス感染症により気道過敏性が亢進することがあり、本剤投与後に気管支攣縮や呼吸機能の低下がみられた例が報告されている。
気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患等の慢性呼吸器疾患の患者では、患者の状態を十分に観察しながら投与すること。

④チャンピックス(バレニクリン)【警告削除】

下記の警告が削除となりました。

「禁煙は治療の有無を問わず様々な症状を伴うことが報告されており、基礎疾患として有している精神疾患の悪化を伴うことがある。

本剤との因果関係は明らかではないが、抑うつ気分、不安、焦燥、興奮、行動又は思考の変化、精神障害、気分変動、攻撃的行動、敵意、自殺念慮及び自殺が報告されているため、本剤を投与する際には患者の状態を十分に観察すること。」

これは海外の大規模臨床試験EAGLES試験の結果で、プラセボ投与群、ニコチン代替療法投与群及びブプロピオン投与群と比較し、本剤投与群において精神神経系事象の発現に有意な上昇は認められず、精神神経系事象は投与群にかかわらず精神疾患の既往がある患者においてより多く発現していたことから【警告】の削除となりました

なお、【警告】は削除されましたが、それ以外の本剤の添付文書本文の記載に変更はありません。精神神経系に関する注意喚起については国内副作用の状況等を踏まえ「慎重投与」及び「重要な基本的注意」の項において引き続き記載され注意喚起されています。

⑤カナグル(カナグリフロジン)

インスリン製剤又はGLP-1受容体作動薬との併用に関する製造販売後臨床試験が終了し、これに伴い【重要な基本的注意】の項目の「本剤とインスリン製剤又はGLP-1受容体作動薬との併用における有効性及び安全性は検討されていない」の記載が削除されました。

⑥テネリア(テネリグリプチン)

テネリアのインスリン製剤との併用に関する製造販売後臨床試験が終了し、これに伴い【重要な基本的注意】の項目の「本剤とインスリン製剤との併用投与の有効性及び安全性は検討されていない」の記載が削除されました。

⑦トランコロンP(メペンゾラート・フェノバルビタール)【併用禁忌】

併用禁忌に 「ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル」「エルバスビル」「グラゾプレビル」「チカグレロル」「オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル」「リルピビリン・テノホビル ジソプロキシル・エムトリシタビン」「ダルナビル・コビシスタット」「アルテメテル・ルメファントリン」「エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル」「エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド」が追記となりました。

なお、この新たに併用禁忌に追記された薬剤を薬効別にすると以下のとおりです。これはトランコロンPに配合されている「フェノバルビタール」の相互作用であり、すでに相手側の薬剤の添付文書の併用禁忌にはフェノバルビタールの記載がされています。

C型肝炎治療薬
・ジメンシー配合錠(ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル)
・エレルサ錠(エルバスビル)
・グラジナ錠(グラゾプレビル)
・ヴィキラックス配合錠 オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル

HIV感染症治療薬
・プレジコビックス配合錠 (ダルナビル・コビシスタット)
・スタリビルド配合錠 (エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル)
・ゲンボイヤ配合錠(エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド)

抗血小板薬
・ブリリンタ錠(チカグレロル)

抗マラリア薬
・リアメット配合錠(アルテメテル・ルメファントリン)

注意点

トランコロンPよりも、フェノバールのほうが処方頻度が高い印象がありますが、フェノバールの添付文書はまだ改訂されておらず、上記の併用禁忌が反映されていないため、見落とさないように注意が必要です。

DSU等の解説
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