新薬承認情報【2023年春】

新薬承認情報【2023年春】

2023年春の新薬承認品目と効能追加品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました

アポハイドローションやコムレクス耳科用液は処方が出る可能性があるので認識しておいたほうがよいかと思います。

また、薬局では調剤することはないながらも、巻き爪矯正に使うリネイルゲルや人工妊娠中絶に使うメフィーゴパック、経鼻インフルエンザワクチンのフルミスト点鼻液、5種混合ワクチンのゴービックなど薬剤師として知っておいたほうがよいものも多くなっています。

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①エンタイビオ皮下注108mgペン/シリンジ(ベドリズマブ)

「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能とするベドリズマブ液体製剤の充填済みペン製剤又はシリンジ製剤です。

すでに発売しているエンタイビオ点滴静注用製剤による潰瘍性大腸炎の寛解導入療法で改善を認めた後の維持療法として、切り替えの選択が可能となります。

現時点では自己注射は承認されていないので、処方ででることはありません。

<用法及び用量>
通常、成人にはベドリズマブ(遺伝子組換え)として1回108mgを2週間隔で皮下注射する。

<用法及び用量に関連する注意>
本剤は、ベドリズマブ(遺伝子組換え)の点滴静注製剤を2回以上投与し治療反応が認められた場合に、点滴静注製剤の次の投与予定日から切り替えて投与を開始すること

②アポハイドローション(オキシブチニン)

「原発性手掌多汗症」を効能とするポラキスと同成分のローション製剤です。

エクリン汗腺に発現するムスカリン受容体に対する抗コリン作用により抑汗作用を示すとされ、原発性手掌多汗症に対し保険適用として効能を有するのは日本初となります。名称の由来はありません。

薬価単位がgであるため、1本4.5mL⇒4.32gとなりますが、現状では実物にg数の表記がないため、わかりにくくなっています。

なお、1本(4.32g)が1週間分に該当するので、新薬制限で2024年5月末日までは2本(8.64g)14日分が限度となります。

用法及び用量

寝る前に5プッシュ分を目安に出して、左右の手のひらに均等に塗り広げ、起床後に洗い流します。

就寝中も含め、起床後に手を洗うまでの間は、塗った箇所以外(目など)に触れないようにする必要があり、万一目に入った場合は、すぐに水で洗い流すこととされています。

<用法及び用量>
1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布する。

<用法及び用量に関連する注意>
1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分を目安とすること。

外用薬だが禁忌などの注意事項が内服と同様

アポハイドローションは外用薬ですが、血中濃度が内服製剤を超す可能性があるためか、禁忌や重要な基本的注意が内服製剤と同様になっているので禁忌の見落としに注意する必要があります。

なお、 授乳婦が禁忌でないことや、重要な基本的注意に胃腸の運動抑制による消化器症状の注意記載がある点など、一部内服製剤と異なる部分もあります。

また、「抗コリン作用を有する薬剤」は併用注意となっており、内服製剤であるポラキスも併用注意となります。

③リネイルゲル(アセチルシステイン)

「巻き爪矯正の補助」を効能とする、爪に塗布しやすく水や湯で洗い流しやすい1回使い切りの水性ゲル剤です。本剤には単独使用で巻き爪を矯正する効果はなく、医療機器である爪矯正具と併用する必要があります。

なお、自費診療であり、病院来院時に塗布するため薬局で調剤することはないかと思います。

アセチルシステインは去痰作用のムコフィリン吸入液やアセトアミノフェン中毒の解毒剤であるアセチルシステイン内用液と同じ成分となります。

爪のケラチンに含まれるシスチンのジスルフィド結合を還元して開裂し、爪の微細構造や強度に影響を与えることで爪を軟化させ、更に本剤除去後に爪が再硬化することから再硬化時にも爪矯正具を併用することにより、爪矯正具を外した後の巻き爪の矯正に持続的な効果を発揮すると考えられています。

名称の由来は「健康な爪の状態に戻す」という意味から命名されています。

④オンボー皮下注100 mgオートインジェクター/シリンジ(ミリキズマブ)

「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能とする大腸粘膜の炎症に関与するサイトカインであるIL-23のp19サブユニットを標的とした潰瘍性大腸炎の治療薬として世界で初めての抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤です。

同時承認された点滴静注製剤による導入療法終了4週後から、維持療法として切り替えて使用されます

1回200mgを4週間隔で皮下投与しますので、「1回2本」という珍しい用量となります。

現時点では自己注射は承認されていないので、処方ででることはありません。

<用法及び用量>
ミリキズマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤による導入療法終了4週後から、通常、成人にはミリキズマブ(遺伝子組換え)として1回200mgを4週間隔で皮下投与する。

⑤ウゴービ皮下注 SD(セマグルチド)

オゼンピック皮下注、オゼンピック皮下注SD、リベルサス錠と同一成分の肥満症を効能とする週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬です。名称の由来はありません。

セマグルチドを含有しているため、他のセマグルチド含有製剤やその他の GLP-1 受容体作動薬等の GLP-1 受容体に対するアゴニスト作用を有する薬剤と併用しないこととされています。

最適使用推進ガイドライン対象品目であるため、気軽に処方できる薬剤ではなさそうです。

規格が5つあり、過誤に注意が必要です。

<効能又は効果>
肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。

・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する 
・BMIが35kg/m2以上

<用法及び用量>
通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射する。

その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。

⑥ドプテレット錠(アバトロンボパグ)

「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」を効能とする経口投与可能な低分子のトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬です。

造血幹細胞から巨核球への増殖及び分化を促進し、血小板数を増加させるとされています。

<用法及び用量>
通常、成人には、アバトロンボパグとして以下の用量を1日1回、5日間食後に経口投与する。

投与開始前の血小板数が40,000/μL以上50,000/μL未満:40mg
投与開始前の血小板数が40,000/μL未満:60mg

<用法及び用量に関連する注意>
本剤の投与は観血的手技の施行予定日の10~13日前を目安に開始すること。

本剤を再投与した場合の有効性及び安全性は検討されていない。特に、血小板数が50,000/μL未満に低下していない患者では他の治療法を選択すること。

⑦コムレクス耳科用液1.5 %(レボフロキサシン)

「外耳炎、中耳炎」を効能とし、「本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、肺炎桿菌、エンテロバクター属、セラチア属、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属」を適応菌種とした高濃度のレボフロキサシン点耳剤です。

オフロキサシン製剤との比較試験はされていませんが、オフロキサシンの耳科用液の濃度が0.3%であることを考えると、オフロキサシンの約 2 倍の抗菌活性を示すレボフロキサシン1.5%というのは効果がありそうな気がします。なお、使用方法については従来の点耳製剤と同様です。

慢性中耳炎(Chronic Otitis Media)のCOMとLevofloxacinの LEXを組み合わせ『COMLEX』と命名されています。

⑧メフィーゴパック(ミフェプリストン・ミソプロストール)

「子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の者に対する人工妊娠中絶」を効能とする1剤目(ミフェプリストン錠1錠)を経口投与し、その36~48時間後の状態に応じて2剤目(ミソプロストールバッカル錠4錠)をバッカル投与するよう、2剤を同梱したパック製剤である。名称の由来はありません。

母体保護法指定医師(以下、指定医師)のみが使用できる薬剤であり、登録された病院でのみ使用できるため、薬局で調剤することはありません。

プロゲステロン受容体拮抗薬であり、プロゲステロンによる妊娠の維持を阻害する作用及び子宮頸管熟化作用を有するミフェプリストンとプロスタグランジンE1誘導体であり、子宮頸管熟化作用や子宮収縮作用を有するミソプロストールの順次投与による人工妊娠中絶法は、WHOから推奨されている人工妊娠中絶法の一つであり、海外ではその有効性及び安全性が確認され、広く使用されている人工妊娠中絶法とされています。

⑨フルミスト点鼻液(弱毒生インフルエンザウイルス(A型・B型))

「インフルエンザの予防」を効能とする国内初の経鼻インフルエンザワクチンです。発売時期は2024年度の秋冬シーズンとなる予定です。

<用法及び用量>
2歳以上19歳未満の者に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧する。

⑩ゴービック水性懸濁注シリンジ(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルスb型混合ワクチン)

「百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎及びインフルエンザ菌b型による感染症の予防」を効能とする「Hib ワクチン」+「テトラビック」を混合した5 種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)です。

5 種類の混合ワクチンであることから「5(ゴ)」と製造販売元の略称「BIKEN」の語頭によりゴービックと命名されています。

新薬DSU等の解説
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