
2023年5月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はACE阻害薬・ARBの妊娠に対する注意記載の強化が重要な内容となりますが、そのほかにもエクロックゲルの新形状ボトルの発売や避妊が必要な薬剤に具体的な避妊期間が明記されたことなども認識しておく必要があります。
①ACE阻害薬・ARB・ラジレス・エンレスト【生殖能を有する者】
「生殖能を有する者」の項目に下記が追記されました。
従来より「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」は禁忌であり、投与しないよう注意喚起されていますが、いまだ妊娠中にこれらの医薬品を継続し、胎児・新生児への影響が疑われる症例が報告されていることから注意記載が強化されました。
これにより、妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあることなどを患者に説明することが明記されました。
<生殖能を有する者 妊娠する可能性のある女性>
妊娠していることが把握されずアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシン II 受容体拮抗剤を使用し、胎児・新生児への影響(腎不全、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡等)が認められた例が報告されている。
本剤の投与に先立ち、代替薬の有無等も考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。
(1)本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。
(2)次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。
・妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。
・妊娠が判明した又は疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。
・妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。
薬剤師の対応
従来より注意喚起されている内容であるため薬剤師の対応としては従来とそれほど変わりません。妊娠可能な年代に処方されるケースは近年ではほとんど見ませんが、もし処方された場合は下記の対応が必要となります。
・現在妊娠していないことの確認
・今後の妊娠希望の有無の確認
・妊娠した場合は胎児に影響する可能性があることの説明
・万一妊娠した場合は速やかに医師に申し出ること
なお、「将来的に妊娠する可能性がある」という患者の場合は、医師から妊娠注意についての話をされていなければ疑義照会をしたほうがよいでしょう。
②メサラジン製剤(ペンタサ、アサコール、リアルダ)【重大な副作用】
「重大な副作用」に「中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、薬剤性過敏症症候群」が追記となりました。
③ノベルジン【重大な副作用】
「重大な副作用」に「胃潰瘍」が追記となりました。
④エクロックゲル【適用上の注意】
従来のアプリケーター付きボトル(ボトルに付属している塗布用のアプリケーターにポンプ1押し分のゲルをのせてアプリケーターを持って脇に塗り広げる)に加えて、ひねると1回分の薬液が出てくる「ツイストボトル」が発売されました。
処方箋上では医師がどちらのボトルで処方したいのか判別がつかないので、特に患者が医師から指定を受けていなければ薬局側で選択して問題ないかと思います。もし、処方箋上にコメントでボトルのタイプ指定の記載があればそれに従います。
なお、アプリケーター付きボトルでは20gと40gの2種が販売されていますが、ツイストボトル40gボトルしか販売されていないので20g処方の場合にはツイストボトルでは調剤できません。
⑤セララ錠(エプレレノン)【併用禁忌】
併用禁忌にミネブロ(エサキセレノン)が追記となりました。
なお、ミネブロ側の添付文書では従来から併用禁忌となっています。
⑥イコサペント酸エチル製剤【その他の注意 臨床使用に基づく情報】
その他の注意の臨床使用に基づく情報に下記が追記されました。
これは海外で販売されているイコサペント酸エチル製剤で実施した臨床試験で、プラセボ群と比較してイコサペント酸エチル群で心房細動又は心房粗動の発現が有意に高いとの報告があることから追記されました。
<その他の注意 臨床使用に基づく情報>
本剤と同一有効成分(4g/日)を含有する製剤の海外臨床試験において、心房細動又は心房粗動のリスク増加が認められたとの報告がある。
⑦トレシーバ注(インスリンデグルデク)【妊婦】
「妊婦」の項目で従来では「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。本剤を妊婦に投与した臨床試験成績は得られていない」とされていたものが下記へと変更になりました。
これは、1型糖尿病合併妊婦を対象とした海外臨床試験(EXPECT試験)の結果が得られたことからの改訂となります。
<妊婦>
妊娠した場合、あるいは妊娠が予測される場合には医師に知らせるよう指導すること。
妊娠中、周産期等にはインスリンの需要量が変化しやすいため、用量に留意し、定期的に検査を行い投与量を調整すること。通常インスリン需要量は、妊娠初期は減少し、中期及び後期は増加する。
⑧タモキシフェン錠【生殖能を有する者】
生殖能を有する者に記載されている避妊が必要な期間が従来では「本剤投与中及び投与終了後一定期間」といった期間の目安が不明瞭だった記載が、下記のように具体的な期間が明記されました。
<生殖能を有する者>
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後9カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。また、ホルモン剤以外の避妊法を用いること。
男性には、本剤投与中及び最終投与後6カ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること
⑨ラゲブリオカプセル(モルヌピラビル)【生殖能を有する者】
生殖能を有する者に記載されている避妊が必要な期間が従来では「本剤投与中及び投与終了後一定期間」といった期間の目安が不明瞭だった記載が、下記のように具体的な期間が明記されました。
<生殖能を有する者>
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後4日間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。
⑩アクテムラ皮下注シリンジ・オートインジェクター【適用上の注意】
「適用上の注意」に家庭での保存方法及び冷蔵庫から取り出し室温保存した場合の使用可能な保存条件が追記されました。
<適用上の注意 薬剤交付時の注意>
患者が家庭で保存する場合は、本剤は外箱に入れた状態で、凍結を避け、冷蔵庫内で保存すること。
やむを得ず室温(30℃以下)で保存する場合は、14日以内に使用すること。
14日以内に使用しない場合は、再度冷蔵保存(2〜8℃)することも可能だが、室温での保存は累積14日を超えないこと。
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