2022年12月分 DSUのまとめ

2022年12月分 DSUのまとめ

2022年12月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

ロケルマの併用注意にタクロリムスが追記されたことやアモキシシリンの重要な基本的注意の改訂、ニューロタンの併用注意に「グレープフルーツジュース」が追加されたことなどは認識しておく必要があります。

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①ヒドロクロロチアジド【重大な副作用】

重大な副作用に「急性呼吸窮迫症候群」が追加となりました。もともと重大な副作用に記載されていた間質性肺炎や肺水腫の項目に追記される形での改訂となります。

<重大な副作用>
間質性肺炎、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群:
間質性肺炎、肺水腫があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
また、ヒドロクロロチアジド服用後、数分から数時間以内に急性呼吸窮迫症候群が発現したとの報告がある。

②エベレンゾ(ロキサデュスタット)【重大な副作用・重要な基本的注意】

重大な副作用に「中枢性甲状腺機能低下症」が追加となりました。

また、これに伴い「重要な基本的注意」に、「本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査(TSH、遊離T3、遊離T4)を行うなど、患者の状態を十分に観察する」旨が追記されました。

<重大な副作用>
中枢性甲状腺機能低下症(頻度不明)
血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)が正常範囲内又は低値を示す中枢性甲状腺機能低下症があらわれることがある。
症状や徴候があらわれた場合には、必要に応じて投与の中止、甲状腺ホルモン製剤の投与などの適切な処置を行うこと。

<重要な基本的注意>
本剤投与中に中枢性甲状腺機能低下症があらわれることがあり、投与開始後約 2 週間であらわれたとの報告もある。本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査(TSH、遊離T3、遊離T4)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。

なお、添付文書中には具体的な症状の記載はありませんが、患者向医薬品ガイドには下記の症状が記載されています。

<患者向医薬品ガイド>
中枢性甲状腺機能低下症:疲れやすい、まぶたが腫れぼったい、寒がり、体重増加、いつも眠たい、便秘、かすれ声、脱毛

③アモキシシリン【重大な副作用・重要な基本的注意】

重大な副作用に「アレルギー反応に伴う急性冠症候群」が追加となりました。

また、これに伴い「重要な基本的注意」に、もともと記載のあったショックに対する問診の注意が、ショック、アナフィラキシー、アレルギー反応に伴う急性冠症候群も含んだ内容として注意喚起され、「抗生物質によるアレルギー歴は必ず確認すること」とより強い表現に変更されました。

<重大な副作用>
アレルギー反応に伴う急性冠症候群
アレルギー反応に伴う急性冠症候群があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

<重要な基本的注意>
ショック、アナフィラキシー、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の発生を確実に予知できる方法はないが、事前に当該事象の既往歴等について十分な問診を行うこと。
なお、抗生物質によるアレルギー歴は必ず確認すること。

薬剤師の対応

もともと薬剤師であれば抗生剤では、「アナフィラキシーの注意説明」と「副作用歴の再確認」の両方を行っているかと思いますが(もし今までスルーしていた薬剤師は必ず実施することをお勧めします)、アモキシシリンの場合はアナフィラキシーの注意説明の際に胸の痛みなどの急性冠症候群の症状も追加して伝えたほうがよいかもしれません。

なお、教育よりの話となりますが「アナフィラキシーの注意説明」はほとんどすべての薬剤の初回服薬指導の際は行いますが、「副作用歴の再確認」は抗生剤以外にも禁忌項目に交差過敏症がある薬剤(ザイザルやデザレックス、アタラックス、モーラステープなど)でも行う必要があります。

④ニューロタン(ロサルタン)【併用注意】

CYP3A4によっても代謝されることが追記され、また、併用注意に「グレープフルーツジュース」が追加となりました。通常であれば「CYP3A4阻害作用によるグレープフルーツジュースとの相互作用はAUC増大による薬効増強」ですが、これは薬効減弱です。

これはロサルタンの薬効が、未変化体のロサルタンよりも活性代謝物であるカルボン酸体のほうが活性が強く、CYP3A4阻害作用により未変化体のロサルタンのAUCは増大するが、活性代謝物への代謝が阻害されて薬効により寄与する活性代謝物であるカルボン酸体のAUCは減少するため、薬効減弱となります。

製薬会社に確認したところ、グレープフルーツジュースとの併用でロサルタンのAUCが1.2倍、活性代謝物であるカルボン酸体のAUCが0.8倍とのデータがあるようでした。

<相互作用>
本剤は、薬物代謝酵素チトクロームP450 2C9(CYP2C9)及び3A4(CYP3A4)により活性代謝物であるカルボン酸体に代謝される。


<併用注意>
・臨床症状・措置方法
降圧作用が減弱されるおそれがある。本剤の投与中はグレープフルーツジュースの摂取は避けること。

・機序・危険因子
グレープフルーツジュースに含まれる成分のCYP3A4阻害作用によりロサルタンの活性代謝物の血中濃度が低下するため、本剤の降圧作用が減弱されるおそれがある。

薬剤師の対応

併用注意に追記となっため服薬指導時に避けることを伝える必要がありますが、変動率が2割程度なので個人的には「グレープフルーツ以外のフラノクマリン類を多く含む果物を避けることなどの厳密な指導」は患者から聞かれない限りは不要かと思います。

⑤ロケルマ【併用注意】(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)

併用注意に「タクロリムス(経口剤)」が追加となりました。

ロケルマとタクロリムスの非徐放性製剤の併用投与により、タクロリムスのAUC及びCmaxはそれぞれ63%及び71%に低下したと報告されたことから改訂となったようです。

タクロリムスのAUCが4割程度減弱は見過ごせないので、用法がかぶる場合は記載通り2時間ずらすことを検討したほうがよさそうです。

なお、現状ではタクロリムス側の添付文書にはまだこの改訂が反映されていないため見落としに注意が必要です。

<併用注意>
・臨床症状・措置方法
タクロリムス(経口剤)の作用が減弱する可能性がある。
タクロリムスの投与が必要な場合には、本剤投与の少なくとも2時間前又は2時間後に投与すること。

・機序・危険因子
本剤との併用によりタクロリムスの血漿中濃度が低下したとの報告がある。その機序は明らかではないが、本剤による胃内pHの上昇に起因すると考えられる。

<薬物相互作用>
本剤とタクロリムスの非徐放性製剤の併用投与により、タクロリムスのAUC及びCmaxはそれぞれ63%(90%信頼区間:56%~71%)及び71%(90%信頼区間:65%~77%)に低下した(外国人データ)。

⑥ドボベット軟膏・ゲル・フォーム(カルシポトリオール水和物・ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)【用法及び用量に関連する注意】

用法及び用量に関連する注意に従来あった「4 週間を超えて投与した際の有効性及び安全性は確認していない。本剤による治療にあたっては経過を十分に観察することとし、漫漫然と使用を継続しないこと」という記載が製造販売後調査結果等を基に下記ように変更されました。

<用法及び用量に関連する注意>
本剤による治療にあたっては経過を十分に観察した上で、使用開始後 4 週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と使用を継続しないこと。

DSU等の解説
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