2022年11月分 DSUのまとめ

業務多忙により、製薬会社に確認する時間が捻出できなかったため提供が遅れていました。2022年11月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

パルモディアの腎機能障害の禁忌削除やレキサルティの「用法及び用量に関連する注意」の記載の明確化はすべての薬剤師が認識しておいたほうがよいかと思います。

2022年11月分 DSUのまとめ
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①ロキソニン(ロキソプロフェン)【重大な副作用】

重大な副作用に「急性汎発性発疹性膿疱症」が追加となりました、

急性汎発性発疹性膿疱症は従来から重大な副作用として記載のあった中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群などと並ぶ重症型の薬疹であり、これらに追記されるかたちでの改訂となります。

添付文書中には具体的な症状の記載はありませんが、患者向医薬品ガイドには下記の症状が記載されています。実際の説明としては、初回服薬指導の際にルーチンで行うアナフィラキシーと薬疹症状の説明でカバーできるかと思います。

<患者向医薬品ガイド>
急性汎発性発疹性膿疱症:発熱、皮膚が広い範囲で赤くなる、ところどころに小さな膿をともなう発疹が出る

②パルモディア(ペマフィブラート)【禁忌削除】

従来禁忌であった「血清クレアチニン値が 2.5mg/dL 以上又はクレアチニンクリアランスが40mL/min 未満の腎機能障害のある患者」が禁忌から外れて緩和されました。

また、「用法・用量に関連する使用上の注意」に記載されている低用量開始基準も改訂され、その場合の最大用量も明記されました。

パルモディアはもともと類薬を参考に腎機能障害患者に対する注意事項を設定されていたようですが、腎機能障害患者を対象とした製造販売後臨床試験で高度腎機能障害患者での曝露量が軽度から中等度の腎機能障害患者と比較して高くはないことが確認されたことなどから今回の改訂に至ったようです。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症があらわれることがあるので、投与にあたっては患者の腎機能を検査し、eGFRが30mL/min/1.73m2未満の場合は低用量から投与を開始するか、投与間隔を延長して使用すること。
また、最大用量は1日0.2mgまでとする。

③リウマトレックス(メトトレキサート)【重大な副作用】

重大な副作用に「進行性多巣性白質脳症(PML)」が追加となりました。

<重大な副作用>
進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
本剤投与中及び投与終了後は患者の状態を十分に観察すること。意識障害、認知機能障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、構音障害、失語等の症状があらわれた場合は、MRI による画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

④イトリゾール(イトラコナゾール)【重大な副作用・重要な基本的注意】

重大な副作用に「低カリウム血症」が追加となりました。また、これに伴い「重要な基本的注意」に、「定期的に血中電解質検査を行うこと」という文言が追記されたため、今後は定期的な血中電解質検査が必要となりました。

<重要な基本的注意>
低カリウム血症があらわれることがあるので、定期的に血中電解質検査を行うこと。

また、併用禁忌に新薬のケレンディア(フィネレノン)が追記となりました。ケレンディア側の添付文書には以前より記載されています。

⑤ハルシオン(トリアゾラム)【併用注意】

併用注意に非小細胞肺癌の薬剤であるジカディア錠(セリチニブ)が追記となりました。

ハルシオンは最近CCDS(各国の添付文書を作成する際に基準としている製品情報文書)が改訂され、強い CYP3A阻害剤との併用が禁忌となったので、CYP3Aを強く阻害するセリチニブはCCDS上の解釈では併用禁忌となるかと思いますが、製薬会社に確認したところ、セリチニブは代替薬に変更するのが困難な薬剤であるため併用注意となっているようでした。

そのため、併用注意ではあるものの「治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、セリチニブとの併用は避け代替の治療薬への変更を考慮すること」という記載で、他の併用注意よりもやや強い表現になっているのかと思います。

<併用注意>
・臨床症状・措置方法
治療上の有益性が危険性を上回る場合を除き、セリチニブとの併用は避け、代替の治療薬への変更を考慮すること。

・機序・危険因子
セリチニブが代謝酵素(CYP3A4)を阻害することにより、本剤の代謝が阻害される。

薬剤師の対応

ジカディア側の製薬会社もハルシオン側の製薬会社もどちらも具体的なAUCの増加率のデータはないとのことなので対応に迷うところですが、疑義照会はしたほうがよいかもしれません。

少なくとも、ジカディアをすでに服用中で新規でハルシオンが処方されたような場合は、変更が容易なので変更を意図した疑義照会を行うのがよいかと考えています。

逆にハルシオンを服用中で新規でジカディアが出る場合は注意喚起の意味合いも含めて疑義照会を行うか、疑義照会は行わずに患者に対しての注意説明にとどめるか(フォローアップしたほうがよいです)は迷うところです。

代替薬について

なお、ハルシオンの代替薬についてですがベルソムラはNGです。

ベルソムラの添付文書上の併用禁忌である「CYP3Aを強く阻害する薬剤」にジカディアは薬剤名が明記されていませんが、ベルソムラの製薬会社によると現状、CYP3Aを強く阻害する薬剤をすべて網羅できているとは言えない状況であるため、明記されていない薬剤でもCYP3Aを強く阻害する薬剤は併用禁忌として扱うよう回答しているとのことでした。

そのため薬剤名の記載がなくとも、強くCYP3A阻害する薬剤であるセリチニブ(ジカディア)やコビシスタットもベルソムラとは併用禁忌となります。

マイスリーやアモバン、ルネスタもCYP3Aで代謝されるので「ジカディア側の添付文書」では併用注意に該当しますが、ハルシオンよりは影響が少ない(ハルシオンと比べて添付文書上の併用注意の表現が緩い)と考えられるので代替薬となりえるかと思います。ロゼレムも併用注意ですが代替薬としてあげられるかと思います。

デエビゴはCYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤との併用は用量がデエビゴの用量が2.5mgに制限されます。そのため2.5mgなら代替薬候補となります。

まとめると下記です。

・マイスリー、アモバン、ルネスタ、ロゼレム
⇒併用注意だがハルシオンより併用注意の表現が緩く影響が少ないと考えられる。

・デエビゴ⇒2.5mgならOK。増量不可。
・ベルソムラ⇒明記されてないが併用禁忌なので×

⑥レキサルティ【用法及び用量に関連する注意】

「用法及び用量に関連する注意」に記載されていたCYP2D6 阻害剤という記載が「強いCYP2D6阻害剤」という阻害強度の程度が追記され明確な記載になりました。

従来の記載ではCYP2D6阻害剤の強度にかかわらず、レキサルティの用量を制限する必要があったため、今回の改訂により、中等度や弱いCYP2D6阻害剤が該当しなくなったことは大きな緩和であり非常に有益な改訂かと思います。

なお、強いCYP2D6阻害剤やCYP3A4阻害剤を併用する場合は従来通り下記の用量制限が必要なため、すでに制限用量を超える用量でレキサルティを服用中している場合は、実質的に強いCYP2D6阻害剤やCYP3A4阻害剤の使用ができなくなるのでこの内容はすべての薬剤師が認識しておく必要があります。

このような場合には疑義照会して阻害薬を変更する対応が妥当ですが、代替が難しい場合はレキサルティを記載の用量に減量するかを疑義照会する対応となるかと思います。

本剤と強いCYP2D6阻害剤(キニジン、パロキセチン等)及び/又は強いCYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を併用する場合及びCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、以下の表を参考に用法及び用量の調節を行うこと。

強いCYP2D6阻害剤又は強いCYP3A4阻害剤のいずれかを併用1回1mgを1日1回
CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者
強いCYP2D6阻害剤及び強いCYP3A4阻害剤のいずれも併用1回1mgを2日に1回又は1回0.5mgを1日1回*
CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者が強いCYP3A4阻害剤を併用

*「1回0.5mgを1日1回」は0.5mg規格があるOD錠のみ

強いCYP2D6阻害剤とはなにか

強いCYP2D6阻害剤については添付文書中には「キニジン、パロキセチン等」という記載でキニジン、パロキセチン以外は「等」に入ってしまっていますが、製薬会社にも確認しましたがテルビナフィンも該当します。

CYP2D6阻害剤についてはシナカルセトなど一部の薬剤では強弱がどの資料を参考にするかで変わってきますが、レキサルティの製薬会社はFDAを参考にしているようで、シナカルセトは中等度なので該当しないとのことでした。

FDAページを見てメジャーなものを抜粋すると下記のようになりますが、少なくともシナカルセトは今後強いCYP2D6阻害剤として扱われる可能性もあると感じるので、実際に併用に遭遇した場合には情報の更新がないかを再度製薬会社に確認したほうがよいかと思います。

強いCYP2D6阻害剤⇒キニジン、パロキセチン、テルビナフィン
・中等度CYP2D6阻害剤⇒アビラテロン、シナカルセト、デュロキセチン、ミラベクロン
・弱いCYP2D6阻害剤⇒アミオダロン、セレコキシンブ、シメチジン、クロバザム、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン

DSU等の解説
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