ボルタレン錠の服薬指導

ボルタレンの服薬指導今回はフェニル酢酸系の鎮痛・抗炎症剤ボルタレン錠の服薬指導をまとめました。ボルタレンは非ステロイド性抗炎症剤の中では、インドメタシンと並んで鎮痛効果、抗炎症効果が優れており、また鎮痛効果の発現が速く、投与後30分以内に効果が発現するとされています。

また、効能・効果として関節リウマチ、変形性関節症などの慢性疾患から、歯痛などの歯科領域、急性上気道炎などの急性疾患まで、幅広い適応症が認められています。
服薬指導難度

ボルタレン錠は主に以下の特徴があります。
① 小児の発熱には原則使用しない
② トリアムテレンが併用禁忌
③ 妊娠は全期間禁忌
④肝障害に関する説明が必要
⑤運転に関する注意が必要
⑥錠剤が小さく服用しやすい

以下で詳しく説明します。

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ボルタレン錠の服薬指導で確認すること

① 消化性潰瘍の有無【禁忌】

消化管への直接刺激作用及びプロスタグランジン合成阻害作用による胃酸に対する胃・十二指腸粘膜防御能の低下等で、現在起こっている消化性潰瘍を悪化させることがあるため禁忌に設定されています。

②喘息の有無【アスピリン喘息禁忌】

アスピリン喘息の場合は禁忌となるので、喘息がある場合にはアスピリン喘息でないかを確認する必要があります。

なお、アスピリン喘息を否定する場合は、必ず「喘息発症後」のロキソニンやボルタレンなどの「アスピリン喘息誘発性の強い解熱鎮痛薬」の服用歴と副作用の有無を聴取します。

カロナールやCOX2選択性の薬剤、PL顆粒などは誘発性が弱いため、副作用なしに服用できてもアスピリン喘息を否定できないため注意が必要です。

③妊娠の有無【禁忌】

妊婦に本剤を投与し、胎児又は新生児に影響があったとする報告があったため禁忌に設定されています。妊娠後期だけでなく全期間が禁忌となるため注意が必要です。一方、授乳に関しては比較的安全とされる薬剤です。

④肝障害・腎障害・血液異常・心不全・高血圧【重篤な場合禁忌】

いずれも重篤な場合が禁忌となります(何を持って重篤とするかは記載がないため非常に抽象的な表現です)。全ての患者に対してこれら5つを聞くかどうかは判断が分かれるところです。

というのも、「重篤」な場合は多くの場合併用薬として使用している薬剤から各疾患を疑うことができるため、併用薬を聞くことで事足りるという考え方もあります。なお、禁忌の設定理由としては以下の通りです。

肝障害と血液障害に関しては、ボルタレンでまれに肝障害・血液障害が報告されており、重篤な肝障害・血液の異常のある患者に副作用として発現した場合、重篤な転帰をとる可能性があるため設定されています。

血液障害とはいったい何をさすのかは記載がありませんが、個人的には重大な副作用欄に「再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少」の記載があるのでこれらを示しているのかと考えています。

腎障害に関しては、末期腎不全患者では腎プロスタグランジンの作用によりかろうじて腎血流が維持されている場合があり、このような患者にボルタレンを投与する場合、腎血流量が低下し急性腎不全を起こすおそれがあるため設定されています。

心不全に関しては、Na・水分貯留は前負荷増大、血管拡張作用の抑制は後負荷増大となるため、重篤な心不全のある患者では症状を悪化させるおそれがあるため設定されています。

高血圧に関しては、プロスタグランジン合成阻害作用に基づく腎血流低下等によりNa・水分貯留(浮腫)をきたし、プロスタグランジンの血管拡張作用を抑制するため、重篤な高血圧症のある患者では血圧をさらに上昇させるおそれがあるので設定されています。

⑤小児の発熱でないか(小児のウイルス性疾患でないか)【重要な基本的注意】

ライ症候群の報告があるため、アスピリン同様に本剤を小児のウイルス性疾患の患者に投与しないことが原則とされています。なお、なお、アスピリンは疫学調査を記載の根拠としており、一方、ジクロフェナクは症例報告の集積による記載となっています。

小児は15歳未満とみなすと思われますが、ウイルス性疾患については、小児の発熱にウイルスが関連しないことを確定することは困難なため、水痘、インフルエンザを含む発熱性疾患全般で小児への解熱目的の使用は原則禁忌となる可能性が高いと考えられます。

⑥併用薬の有無【トリアムテレン併用禁忌】

本剤とトリアムテレンとの併用で急性腎不全があらわれたとの報告があり併用禁忌に設定されています。腎プロスタグランジン合成阻害作用がトリアムテレンの腎障害を増大すると考えられています。

トリアムテレンなんてもう使わない、と感じるかもしれませんが、稀な疾患ではあるものの、リドル症候群ではトリアムテレンは第一選択薬となります。

⑦併用薬の有無【ニューキノロン併用注意】

非ステロイド性抗炎症剤とニューキノロン系抗菌剤との併用による痙攣のリスクがあるため設定されています。ボルタレンのようなフェニル酢酸系薬剤やロキソニン、ブルフェンのようなプロピオン酸系薬剤は特に注意が必要とされています。

併用する場合はてんかんなどの痙攣性疾患の有無を確認し、痙攣性疾患がある場合は少なくとも他の系統の薬剤に変更するか、抗炎症作用がなくてもよいのであればカロナールなどに変更したほうがよいと思います。

⑧併用薬の有無【リチウム ・ジゴキシン・メトトレキサート併用注意】

本剤の腎プロスタグランジン合成阻害作用により、これらの薬剤の腎クリアランスの低下により血中濃度を上昇させることがあるため設定されています。特にメトトレキサートに関してはジクロフェナクナトリウム製剤との併用例で、血中濃度が上昇し、中毒を生じた報告もあります。

併用する場合には再度該当の薬剤の副作用を説明するなどの対応を行ったほうがよいでしょう。リチウムとメトトレキサートに関してはメーカーにより指導せんが存在するので利用するのがよいと思います。ジゴキシンに関しては指導せんがないと思うのでジゴキシン中毒の症状(脈の異常、消化器、眼、精神神経系症状)を説明します。

ボルタレン錠の服薬指導で伝えること

① 過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等の注意【重要な基本的注意】

解熱作用を有する消炎鎮痛解熱剤(特に注射剤及び坐剤)を、特に高熱を伴う小児及び高齢者又は消耗性疾患の患者に投与した場合、体温調節機能が十分に作動しないために過度の体温下降が起こりやすく、それに伴う虚脱等があらわれることが報告されているため設定されています。

これはショックの副作用に関する説明のため、個人的には呼吸困難なども合わせて患者に説明したほうがよいと思います。なお、ショックは、IgE抗体を介する即時型(I型)アレルギーに基づくものと、解熱時の発汗で生じた循環血液量の減少による作用に基づくものの2つのタイプが考えられています。

②肝障害の注意【重要な基本的注意】

劇症肝炎等の重篤な肝障害が報告されているため設定されています。発熱、食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、そう痒、発疹、黄疸等の薬物性肝障害の初期症状の発現に注意し、連用する場合は定期的に肝機能検査を行うことが望ましいとされています。

③運転などに関する注意【重要な基本的注意】

本剤投与中に眠気、めまい、霧視を訴える患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように十分注意すること、と記載があります。

添付文書の記載では抗ヒスタミン薬の記載とは異なり眠気などがでたら避けるように、ということなので症状がでなければ運転は可能となります。

④食後に服用すること【用法】

空腹時の投与は避けさせることが望ましいとされているため、なるべく食後に服用することを説明します。

服薬指導薬歴例

S)抜歯の痛み
O)潰瘍・喘息なし妊娠なし・肝・腎障害なし・併用なし
A)眠気、めまい、目のかすみがでる場合は運転など避けるよう説明。万一、呼吸困難、過度の体温下降、四肢冷却、発疹、黄疸、異常なだるさなどがでる場合はすぐ受診指示。胃に負担がかかる場合があるのでなるべく食後に服用するよう説明。
P)歯痛状態確認

薬剤別服薬指導
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