効能追加情報【2021年秋】

効能追加情報【2021年秋】

今回は2021年秋の効能追加情報をまとめました。

通常、効能追加情報は品目が少なく、まとめるのにもそれほど労力がかからないのですが、今期は効能追加品目が多く、かつメジャーな薬剤が多く、さらには注意点が多いという近年でもまれに見る大変さでした・・・。

フェントステープの小児効能追加、フォシーガ錠の慢性腎臓病、リクシアナ錠の心房細動減量用の効能追加、エンレスト錠の高血圧の効能追加などはメジャーな薬剤であるため、処方のない場合でも、すべての薬剤師が認識しておいたほうが良いかと思います。

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①フェントステープ(フェンタニルクエン酸塩)

「がん疼痛の効能」に対して、小児の効能が追加となりました。なお、「慢性疼痛の効能」では小児の効能は追加となっていません。

また、成人の場合は がん疼痛の効能かつ0.5mgの規格に限り、他オピオイドからの切り替えでなくとも、ファーストで使用できますが、小児の場合には他オピオイドからの切り替えでないと使用できません。

もちろん、成人の場合も「慢性疼痛の場合」や「がん疼痛でも0.5mg規格以外」では他オピオイドからの切り替えでないと使用できません。

用量は下記のように年齢によって異なります。また、添付文書の後半に記載があり見落としやすいのですが、「薬剤貼付時の注意」に 「本剤を剥がす可能性がある患者には、手の届かない部位に貼付することが望ましい。」という内容も追記されています。

<小児効能>
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛(ただし、 他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)

〇中等度から高度の疼痛を伴う各種がん  

<小児用量>
他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えて使用する。
通常、小児(2歳以上)に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に 貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替えて使用する。

初回貼付用量は本剤貼付前に使用していたオピオイド鎮 痛剤の用法及び用量を勘案して、6歳以上の場合は、0.5mg、 1mg、2mg、4mg、6mgのいずれかの用量を選択し、2歳以上6 歳未満の場合は、0.5mg、1mg、2mgのいずれかの用量を選択する。
その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。

②ウプトラビ錠(セレキシパグ)

従来の効能である肺動脈性高血圧症に加えて、「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」の効能が追加となりました。

③フォシーガ錠(ダパグリフロジン)

「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」の効能が追加となりました。なお、前年の2020年11月には「慢性心不全」の効能が追加となっています。

効能のかっこ内にも記載されていますが、末期腎不全又は透析施行中の患者は効能の対象ではありません。なお、末期腎不全の基準は「eGFRが15mL/min/1.73m2未満」が該当します。下記のガイドラインより)

参考日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018

また、 糖尿病に対しては5mgが開始量ですが、慢性心不全や慢性腎臓病の効能の場合は開始量が10mgとなります。ただし、1型糖尿病の患者に慢性心不全又は慢性腎臓病の治療として投与する場合は5mg開始となります。

④リンヴォック錠(ウパダシチニブ)

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤 のリンヴォック錠に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」  の効能が追加となりました。

リンヴォック錠は8月に 「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」の効能が追加となったばかりですが、また効能追加となったようです。  

ちなみに同じ系統のオルミエント錠では、すでに今年の春ごろにこの効能が追加となっています。ただし、オルミエント錠では小児の効能はありませんでしたが、今回のリンヴォック錠では年齢と体重制限はあるものの、小児の効能もあるため、小児で処方される場合も出てくるかと思います。

オルミエント同様にリンヴォックもこの効能では最適使用推進ガイドラインの対象であり、ガイドライン中で当該医薬品の使用に係る患者及び医療機関等の要件、考え方及び留意事項・保険適用上の留意事項などが示されているため、専門医以外での使用はないかと思います。


経口のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤といえばリウマチの薬ですが、アトピーにも使われるようになったことは認識しておいたほうがいいかもしれません。

少し前に発売された軟膏のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であるコレクチム軟膏はアトピー性皮膚炎の効能なので、内服でも使われるようになってくるのはわかりやすい流れな気がします。

⑤リクシアナ錠15mg(エドキサバン)

「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」の効能(以下心房細動と省略します)に減量用(減量基準あり)として15mg用量が使用可能となりました。

従来15mgの投与量は下記の限られた用途であり、実際に使用例の多い心房細動では15mgをワルファリンに切り替える場合の減量併用の用途でしか使用できませんでしたが、今回の改訂により心房細動の効能では「出血リスクが高い高齢の患者では、年齢、 患者の状態に応じて1日1回15mgに減量できる」ようになりました。

なお、これは15mg規格のみであるため、「30mg 0.5錠」をこの用途で使うことはできません。

<従来の15mg規格の用途>
・ 本剤からワルファリンに切り替える場合の、減量併用の用途

 〈下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制〉
・腎機能低下患者への減量考慮の用途
・ P糖蛋白阻害作用を有する薬剤を併用する場合の減量考慮の用途

<用法・用量>
<非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制>
通常、成人には、エドキサバンとして以下の用量を1日1回経口投与する。
 体重60kg以下:30mg
 体重60kg超:60mg なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。

また、出血リスクが高い高齢の患者では、年齢、患者の状態に応じて1日1回15mgに減量できる。

減量考慮基準を満たす場合でも必ず減量しなければいけないわけではない

なお、「出血リスクが高い高齢の患者では、年齢、患者の状態に応じて1日1回15mgに減量できる」という 15mgへの具体的な減量基準は後述の「用法及び用量に関連する注意」のように細かく記載がありますが、あくまで「考慮」であり減量必須という記載でないため、減量する医師もいるし、しない医師もいるという認識となるかと思います。

減量基準というよりも、減量考慮基準となります。

そのため、個人的には「減量考慮基準を満たす患者で、15mgへ減量されていない」場合でも疑義照会が必要というわけではないかと思っています。

もし、疑義照会をする場合は減量の「提案」をするような疑義照会となるかと思います。

減量できる対象に注意が必要

一方で、処方で15mgへ減量処方が出た場合には減量考慮基準を満たしている必要があるため、明らかに減量考慮基準を満たしていない場合は疑義照会が必要になるかと思います。

用法及び用量の部分には「出血リスクが高い高齢の患者では、年齢、患者の状態に応じて1日1回15mgに減量できる。」との記載があるので、一見すると医師の裁量で減量可能と思ってしまいますが、製薬会社によると下記の「用法及び用量に関連する注意の7.3」部分の記載に該当しなければ減量対象とはならず、「効能外」となってしまうとのことでした。

なお、年齢の部分は「目安」との記載なので80歳以上でなくとも医師の裁量でよいようです。

これらの部分は添付文書に明確な記載がない部分であるため、実際に遭遇した場合には疑義照会をする前に再度製薬会社に「用法及び用量に関連する注意の7.3の減量考慮基準を満たしていないと減量できないんでしたっけ?」などと確認したほうが良いかと思います。

<用法及び用量に関連する注意 7.3>
高齢の患者(80歳以上を目安とする)で、以下のいずれも満たす場合、治療上の有益性と出血リスクを考慮して本剤投与の適否を慎重に判断し、投与する場合には本剤 15mgを1日1回経口投与することを考慮すること。

 ●次の出血性素因を1つ以上有する。
・ 頭蓋内、眼内、消化管等重要器官での出血の既往 
・低体重(45kg以下)
・ クレアチニンクリアランス15mL/min以上30mL/ min未満
・ 非ステロイド性消炎鎮痛剤の常用 
・抗血小板剤の使用 

●本剤の通常用量又は他の経口抗凝固剤の承認用量では出血リスクのため投与できない。 

減量時の過誤に注意

今までずっと30mgを使用してた患者が、この改訂のタイミングで15mgに減量となる可能性があるので、減量処方となったにも関わらず、DOと勘違いしてしまう過誤が想定されるので、この改訂のタイミングで15mgに減量となる可能性があることはすべての薬剤師が認識しておく必要があります。

なお、余談ですがリクシアナはもともと効能によって禁忌や減量基準などが異なる薬剤であるため、添付文書の記載が極めて読みにくい薬剤です。そのため、記載内容をあらかじめ把握していないと、実際に対応する際に混乱してしまうため、実際の添付文書を見ておいたほうが良いかと思います。

⑥デカドロン錠(デキサメタゾン)

  「全身性ALアミロイドーシス」  の効能が追加となりました。

⑦ヒュミラ皮下注シリンジ・ペン(アダリムバブ)

潰瘍性大腸炎(成人)では、維持療法における40mgを2週に1回の用法及び用量に加えて、40mgを毎週1回又は80mgを2週に1回皮下注射することが可能となりました。

また、小児の潰瘍性大腸炎患者においても自己注射が可能となりました。

⑧エンレスト錠100mg・200mg(サクビトリルバルサルタン)

 1年前に発売した慢性心不全の新薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるエンレストに「高血圧症」の効能が追加となりました。「高血圧症」  の効能は100mg・200mg規格のみであるため、50mg規格は「高血圧症」の効能はありません。

なお、「過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと」と記載されています。

下記のように心不全とは用法・用量が異なるため注意が必要です。

<慢性心不全>
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。

忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。
1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。
なお、忍容性に応じて適宜減量する。

 <高血圧症>  
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mg1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。

用量の注意点

慢性心不全では「適宜減量」の記載があるので一見すると「1回150mg」の投与量もよいかと思ってしまいますが、慢性心不全の場合は、1回投与量は50mg、100mg又は200mgのいずれかにする必要があり、1回150mgは効能の対象外となるとのことでした。

この部分は添付文書に明確な記載がない曖昧な部分であるため、実際に遭遇した場合には疑義照会をする前に再度製薬会社に「慢性心不全の場合は1回150mgは効能の対象外となるんでしたっけ?」などと確認したほうが良いかと思います。

また、高血圧症では「適宜増減」ですが、前述したとおり50mg規格は「高血圧症」  の効能がないため使用できません。

「50mg錠と100mg錠又は200mg錠の生物学的同等性は示されていない」旨の記載が削除となった

なお、今回、効能以外の部分も一部改訂されています。

従来、添付文書に記載されていた「50mg錠と100mg錠又は200mg錠の生物学的同等性は示されていないため、100mg以上の用量を投与する際には50mg錠を使用しないこと」という部分は、50mg錠と100mg錠の生物学的同等性が確認されたため、100mg以上の用量を投与する際に50mg錠を使用しない旨の記載は削除されました。

ただし、前述のとおり、高血圧の効能に対しては50mg規格は使用できません。

⑨アジルバ錠(アジルサルタン)

小児の効能が追加となりました。また、これに伴い「顆粒」の剤形も発売となります。

<小児の用法・用量>
通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgの1日1回経口投与から開始する。

なお、年齢、体重、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgとする。

DSU等の解説
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