今回は2017年7月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
コデイン類に関する内容が主なものとなりますが、その他にもルボックスの慎重投与やスチバーガとクレストールの併用注意など把握しておくとよいかと考えられるものがいくつかあります。
- ①コデイン類及びトラマドールを含有製剤【重要な基本的注意】
- ②ジフルカン(フルコナゾール)【重大な副作用】
- ③ルボックス/デプロメール(フルボキサミンマレイン酸塩(小児の強迫性障害の効能を有する製剤))【慎重投与】
- ④タプロスミニ(タフルプロスト)【取り扱い上の注意】
- ⑤コソプトミニ(ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン)【取扱い上の注意】
- ⑥ミドリンM(トロピカミド)【副作用】
- ⑦フスコデやカフコデなど今まで重大な副作用の項目に「呼吸抑制」がなかったコデイン製剤【重大な副作用】
- ⑧ロペミン(ロペラミド)【過量投与一部改訂】
- ⑨スチバーガ(レゴラフェニブ)【併用注意】
- ⑩イトリゾール(イトラコナゾール)【併用禁忌】
- ⑪ジフルカン(フルコナゾール)【併用禁忌】
①コデイン類及びトラマドールを含有製剤【重要な基本的注意】
重要な基本的注意に下記の3点が追記となりました。1と2に関しては2019年中には禁忌となります。また、2に関しては疼痛時における鎮痛などの効能を持つ製剤のみ追記となっています。
1.「12歳未満の小児には投与しないこと」
2.「18歳未満の扁桃摘除術後又はアデノイド切除術後の鎮痛には使用しないこと」【疼痛時における鎮痛などの効能を持つ製剤のみ】
3.「18歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者には投与しないこと」
これは、2017 年 4 月、米国食品医薬品局(FDA)がコデイン類及びトラマドールを含有する医薬品について、添付文書のContraindications(禁忌)に 12歳未満の患者への使用を追記し、また、Warnings(警告)に12~18 歳の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、重篤な肺疾患等を有する患者への使用は推奨しない旨の記載を追記することを勧告したことが理由となっています。
なお、 コデイン類の18 歳未満の扁桃摘除術又はアデノイド切除術後の疼痛緩和への使用は従来よりContraindications(禁忌)となっています。
「重篤な呼吸抑制があらわれるおそれがあるので、12歳未満の小児には投与しないこと
「重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがあるので、18歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者には投与しないこと
<鎮痛の効能がある製剤>
「重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがあるので、18歳未満の扁桃摘除術後又はアデノイド切除術後の鎮痛には使用しないこと。
薬剤師の対応
今後、コデイン含有製剤の処方で上記に該当する場合は疑義照会対象となります。
12歳未満だけでなく、18歳未満の場合も条件によっては疑義照会対象となるため注意が必要です。そのなかでも特に「18歳未満の肥満」は遭遇する可能性があるので留意しておく必要があるかと思います。
疼痛時における鎮痛などの効能を持つ製剤
疼痛時における鎮痛などの効能を持つ製剤としては下記の薬剤があげられます。
・コデインリン酸塩錠・散
・ジヒドロコデインリン酸塩散
・トラマール注
②ジフルカン(フルコナゾール)【重大な副作用】
重大な副作用に薬剤性過敏症症候群が追記となりました。
初期症状として発疹、発熱がみられ、更に肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
なお、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く、投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。」
③ルボックス/デプロメール(フルボキサミンマレイン酸塩(小児の強迫性障害の効能を有する製剤))【慎重投与】
慎重投与に「女児」が追記となりました。6~11 歳の女性患者では他の群(6~11 歳の男性、12~17 歳の男性女性)と比べ、AUCがおよそ3〜4倍となります。
「女児〔11歳以下の女性では、男性及び12歳以上の女性と比較して本剤のAUC及びCmaxが増大する。」
これは、ルボックス/デプロメールで8歳以上の小児の「強迫性障害」に対する効能が追加となったことに伴う改訂となります。
④タプロスミニ(タフルプロスト)【取り扱い上の注意】
アルミピロー包装開封後の期限が従来では、添付の遮光用投薬袋に入れて2~8℃で保存し、「6ヶ月」でしたが、「1年」に延長されました。
「アルミピロー包装開封後は、添付の遮光用投薬袋に入れて2~8℃で保存し、1年以内に使用すること。室温で保存した場合には、1ヵ月以内に使用すること。
なお、アルミピロー包装を開封した製品から先に使用すること。」
⑤コソプトミニ(ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン)【取扱い上の注意】
アルミピロー包装開封後の期限が新設されました。
「アルミピロー包装開封後は、添付の遮光用投薬袋に入れて室温で保存し、1年以内に使用すること。
なお、アルミピロー包装を開封した製品から先に使用すること。」
⑥ミドリンM(トロピカミド)【副作用】
副作用に「眼刺激」が追記となりました。
以前よりミドリンMは痛み、刺激感、しみることが報告されていましたが、添付文書の副作用の項目には記載がありませんでした。今回の改訂でようやく反映されたようです。
⑦フスコデやカフコデなど今まで重大な副作用の項目に「呼吸抑制」がなかったコデイン製剤【重大な副作用】
重大な副作用に「呼吸抑制」が追加となりました。
「呼吸抑制があらわれることがあるので、息切れ、呼吸緩慢、不規則な呼吸、呼吸異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
なお、ジヒドロコデインリン酸塩による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する。」
⑧ロペミン(ロペラミド)【過量投与一部改訂】
[過量投与]が一部改訂となり、「QT延長、重篤な心室性不整脈」が追記となりました。
「徴候、症状:外国で、過量投与により昏睡、呼吸抑制、縮瞳、協調異常、筋緊張低下、傾眠、尿閉等の中毒症状が報告されている。また、腸管壊死に至る麻痺性イレウスにより死亡に至った例、QT延長、重篤な心室性不整脈が報告されている。」
「処置:中毒症状がみられた場合にはナロキソン塩酸塩を投与する。本剤の作用持続性に比べ、ナロキソン塩酸塩の作用は短時間しか持続しないので、必要な場合にはナロキソン塩酸塩を反復投与する。また、QT延長のリスクがあるため、心電図異常に注意すること。」
⑨スチバーガ(レゴラフェニブ)【併用注意】
併用注意にクレストール(ロスバスタチン)が追加となりました。クレストール側の添付文書はまだ反映されていないため注意が必要です。
クレストールのAUCがおよそ4倍となるため、疑義照会対象となるかと思います。
「BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン等)〔臨床症状・措置方法:ロスバスタチンとの併用により、ロスバスタチンのAUC及びCmaxはそれぞれ3.8倍及び4.6倍増加した。
左記薬剤を併用する場合には、患者の状態を慎重に観察すること。 機序・危険因子:In vitro試験において、本剤はBCRP を阻害することが示されている。
代替薬(BCRPの影響が少ないスタチン)
スチバーガにはクレストール以外のスタチン系薬剤は記載がありませんが、実際にどのスタチンが代替として適しているか(BCRPの基質とならないスタチンか)はスチバーガの製薬会社もわからないとのことでした。
スチバーガではありませんが、同様にBCRP を阻害するグラジナ錠ではリピトール、クレストール、ローコール、リポバスが併用注意となっています。
これはグラジナの併用により、腸管のBCRPが阻害されることが理由となります。(薬剤によってはCYP3A阻害も関与する)
リバロに関しては、グラジナと併用した場合でもAUCの増加率が少なくグラジナと併用注意ではありません。
ただ、実際にリバロがBCRPの基質になるかどうかは製薬会社も検討していないので不明ですが、今のところBCRPに関連する報告はない、とのことでした。
このことから、個人的には現時点ではリバロが代替として挙げられるかと考えています。
⑩イトリゾール(イトラコナゾール)【併用禁忌】
併用禁忌にブリリンタ(チカグレロル)が追加となりました。なお、ブリリンタ側の添付文書には以前から記載されています。
⑪ジフルカン(フルコナゾール)【併用禁忌】
併用禁忌にC型慢性肝炎の治療薬であるジメンシー配合錠、スンベプラカプセルが追加となりました。
なお、ジメンシー配合錠、スンベプラ側の添付文書には以前から記載されています。
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