今回は2017年夏分の新薬承認品目のなか、薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。
帯状疱疹を効能とする1日1回でクレアチニンクリアランスによる用量調節の必要がない「アメナリーフ」が最もインパクトがありますが、フィブラート系薬剤のパルモディアなども承認されています。
①パルモディア錠(ペマフィブラート)
「高脂血症(家族性を含む)」を効能とするフィブラート系薬剤です。「LDL-コレステロールのみが高い高脂血症に対し、第一選択薬とはしないこと」とされています(LDL-コレステロール低下療法のエビデンスが最も豊富な薬剤はスタチン系薬剤であるため)。
選択的 PPARα modulatorとして作用を発現することより 「PARα mod」より文字を取り、PARMODIA と命名されています。
ベザフィブラートに比べ、胆石が禁忌であったり、投与前の腎機能検査、定期的な肝機能検査などが必要で制限が強い印象があります。(ただし、ベザフィブラートは高齢者に対しては腎機能について定期的に臨床検査等が必要とされます。)
・本剤は肝機能及び肝機能検査値に影響を及ぼすことがあるので、投与中は定期的に肝機能検査を行うこと。
・腎機能障害を有する患者において急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症があらわれることがあるので、投与にあたっては患者の腎機能を検査し、血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の場合には投与を中止し、1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満の場合は減量又は投与間隔の延長等を行うこと。
・本剤投与中にLDL-コレステロール値上昇の可能性があるため、投与中はLDL-コレステロール値を定期的に検査すること
②オルミエント錠(バリシチニブ)
「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を効能とするヤヌスキナーゼ(JAK)1およびJAK2に選択性を有する1日1回のJAK阻害剤です。
類薬としてはゼルヤンツがあります。
③ アメナリーフ錠(アメナビル)
「帯状疱疹」を効能とする1日1回(1回2錠)の新規作用機序の経口抗ヘルペスウイルス薬です。単純疱疹には適応がありません。
原則として7日間使用することとされており、これは臨床試験において、本剤1回400mgを1日1回7日間投与で十分な有効性が示されたことより、投与期間の目安として記載されているようです。
また、主に糞中に排泄されるため、腎機能による薬物動態への影響が小さく、クレアチニンクリアランスに基づく用量調節は不要とされています。
この点は、バルトレックスが処方された患者の服薬指導の際に、腎機能障害があると言われているが、検査値がわからないという場合の代替薬として提案できるので、薬剤師としても嬉しい薬剤かと思います。
本剤は、原則として7日間使用すること。改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること。
作用機序
新規作用機序の アメナリーフは、ヘルペスウイルスDNAの複製に必須の酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することで、二本鎖DNAの開裂及びRNAプライマーの合成を抑制し、抗ウイルス作用を示すようです。
一方、これまで本邦で承認された経口抗ヘルペスウイルス薬はすべて核酸類似体であり、デオキシグアノシン三リン酸と競合的に拮抗してウイルスDNAの複製を阻害することで抗ウイルス作用を示します。
このように、 アメナリーフは、既存薬の経口抗ヘルペスウイルス薬と作用機序が異なるため、交差耐性を示さないと考えられています。
④カナリア配合錠(テネリグリプチン+カナグリフロジン)
テネリア(DPP-4阻害剤)とカナグル(SGLT2阻害剤)の配合剤です。DPP-4阻害剤とSGLT2阻害剤の配合剤は国内初となります。
⑤ビプレッソ徐放錠(クエチアピン)
セロクエルと同成分の「双極性障害におけるうつ症状の改善」を効能とする1日1回就寝前とし、食後 2 時間以上あけて経口投与する徐放性製剤です。
空腹時に比べ食後投与で、AUCはあまり変わりませんが、Cmaxがおよそ2倍程度になるようです。
双極性障害及びうつ症状の英語表現の語感(それぞれ Bipolar Disorder 及び Depression)を参考に命名されています。
⑥ジャドニュ顆粒分包(デフェラシロクス)
「輸血による慢性鉄過剰症(注射用鉄キレート剤治療が不適当な場合)」を効能とするエクジェイド懸濁用錠と同成分の顆粒剤です。EXJADE(デフェラシロクス懸濁用錠)の JADE に新剤型であることから、NEW(NU)を加え、JADENU と命名されています。
エクジェイドは懸濁用錠であるため、懸濁の手間や空腹時投与の必要がある(バイオアベイラビリティが食事の影響を受けるために)こと及び懸濁液の食味の悪さが継続的な鉄キレート療法の障害になっていることから、服薬の利便性を考慮し、水に懸濁することなくそのまま服用可能なジャドニュ顆粒が開発されたようです。
顆粒剤のバイオアベイラビリティは食事の影響を受けないため食事の摂取にかかわらず投与可能とされています。
エクジェイド懸濁用錠とジャドニュ顆粒の用量比較
エクジェイド懸濁用錠と比べ、ジャドニュ顆粒はデフェラシロクスのバイオアベイラビリティが高められた製剤であり、エクジェイドとジャドニュ顆粒の用量(mg)はそのまま「=」ではなく、懸濁用錠 1,500mgと顆粒剤 900mgが生物学的に同等であることが証明されています。
そのため、エクジェイドの用量の3/5がジャドニュ顆粒の用量であるため注意が必要です。
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