今回は2014年5月に発売された去勢抵抗性前立腺癌治療剤であるイクスタンジカプセルの服薬指導をまとめました。
抗がん剤であり、薬価も高いので難しい薬剤だと思われがちですが、実際は禁忌や重要な基本的注意の項目が少なく、指導内容が簡単な薬剤かと思います。
イクスタンジカプセルの概要
服薬指導難度
効能
去勢抵抗性前立腺癌
用法・用量
通常、成人にはエンザルタミドとして160mgを1日1回経口投与する。
規格が40mgであるため、1回4カプセルとなります。
名前の由来
「Extend Life, Anti-Androgen」に由来しています。
指導せん
無くてもそれほど支障がないかと思いますが「イクスタンジを服用される方患者へ」というタイトルで2種類存在しています。その他の副作用である高血圧、便秘、疲労、食欲減退、悪心などを説明する場合には下記の2番目の指導せんは用意しておいてもよいかと思います。
1.けいれん発作に関する指導せん
イクスタンジの服用中にけいれん発作がまれに起こることがあります」という記載とともに、意識障害や筋肉のこわばり、つっぱりといった痙攣の症状の記載や痙攣が起きたときの対応(「顔を横に向け、安静にして、けいれん発作が治まるのを待ちましょう」、「けいれん発作が治まらない時は、すみやかに病院を受診しましょう」)が記載されています。
2.一般的な内容の指導せん
薬効の説明や噛まないで、などの一般的な内容の記載や下記の症状があらわれた場合は医師や薬剤師にご相談ください、といった記載があります。
● 全身がだるい ● むかむかする
● 血圧が高い ● 便秘
● 食欲がない ● けいれん発作
● 出血しやすい(歯ぐきの出血・鼻血等)
イクスタンジの服薬指導で確認すること
①てんかんなどの痙攣性疾患の有無【慎重投与】
禁忌ではないことや、この有無に関わらず、痙攣の副作用の説明は行うため、この聴取により対応が変わることはあまりないかと思いますが、もし痙攣性疾患がある場合かつ医師に伝えていない場合には、一応疑義照会はしたほうがよいかもしれません。
疑義照会する場合は患者に痙攣や発作頻度を聴取したうえで行うのがよいでしょう。下記のような話し方がよいかと思います。
疑義紹介例
「イクスタンジの処方頂いているのですが、この患者さん、先生に伝えていないようなのですが、てんかんで治療されてまして、併用禁忌ではなく、併用注意であるため、処方が変わらないとはおもいますが、念のためご連絡をと思いまして。現在発作頻度はまれで最後の発作が10年前と言ってます」
②併用薬の確認【併用注意】
ワルファリン
併用によりワルファリンの効果減弱の可能性があるため確認します。
本剤の定常状態でワルファリンを投与したとき、CYP2C9の基質である S -ワルファリンの AUCinf 及び Cmax はワルファリン単独投与時と比べそれぞれ 0.44 倍及び 0.93 倍に低下した。
ワルファリンは光学異性体(S-ワルファリン、R-ワルファリン)のラセミ体ですので実際の影響は上記より軽くなる可能性がありますが、注意は必要かと思います。
ワーファリンの作用増強であれば、出血の注意を促すことができますが、減弱の場合には症状での注意喚起は難しいかと思います。医師側が注意し、併用後ある程度の期間でINRを測定するのが、現実的かと思います。
場合によっては、ワーファリンを処方している医療機関に連絡しワーファリンと併用注意であるイクスタンジが他病院から新たに処方されたことと、これにより次回受診日を早める必要があるか(医師側よりINRを早めの段階で測定したい場合)を確認する、といった対応も検討します。
オメプラゾール
併用によりオメプラゾールの効果減弱の可能性があるため確認します。AUCが半分以下になる可能性があるので該当する場合は疑義照会したほうがよいかと思います。
代替薬としてはCYPの関与が少ないパリエットがよいかと思います。
本剤の定常状態でオメプラゾールを投与したとき、オメプラゾールの AUCinf 及びCmax はオメプラゾール単独投与時と比べそれぞれ 0.30 倍及び 0.38 倍に低下した。本剤の併用により、これらの薬剤の作用を減弱させるおそれがある。
イクスタンジの服薬指導で伝えること
①痙攣の説明【重要な基本的注意】
痙攣が現れることがあるので説明をします。患者に対してはいきなり痙攣の副作用を伝えると、警戒されてしまう可能性があるので、前述のてんかんなどの痙攣性の病気の有無の聴取し、その流れで説明するのがよいかと思います。
痙攣発作があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること
②高血圧、便秘、疲労、食欲減退、悪心などの説明【その他の副作用】
重大な副作用ではありませんが、比較的発現頻度の高い副作用(高血圧、便秘、疲労、食欲減退、悪心など)は説明しておいてもよいかと思います。説明する場合は前述の指導せんを使うと便利かと思います。
これらの副作用発現時は程度により、継続、減量、中止のいずれかの対応となるので医師に相談するように説明します。
③運転注意の説明【重要な基本的注意】
痙攣発作があらわれることがあるので運転などに注意するよう説明します。
イクスタンジ服薬指導薬歴例
S)前立腺がん
O)痙攣性疾患なし、併用なし
A)万一痙攣があらわれる場合は受診指示。運転など注意すること説明。高血圧、便秘、疲労、食欲減退、悪心など見られる場合は医師に相談するよう説明。
P)状態確認
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