今回は2017年3月後半分の効能追加情報のなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はタミフルドライシロップの新生児、乳児の場合の用法用量追加やソバルディのジェノタイプ3~6に対する効能追加、ノベルジンの低亜鉛血症の効能追加など比較的濃い内容となっています。
なお、オゼックス細粒のマイコプラズマ肺炎に対する効能追加に関しては下記の記事をご参照ください。
①タミフルドライシロップ(オセルタミビル)
新生児、乳児の場合の用法用量が追加となりました。これは2016年12月ごろに公知申請対象となった(以前の記事でご紹介しています)ものが今回正式に添付文書に反映されたかたちになります。
これに伴い「小児等への投与」の項目も下記のように改訂されています。
新生児、乳児の場合:1回3mg/kg(ドライシロップ剤として100mg/kg)を1日2回5日間、用時懸濁して経口投与する。
小児等への投与
国内外の臨床試験において、低出生体重児又は2週齢未満の新生児に対する使用経験が得られていないことから、副作用の発現に十分注意すること
薬剤師の対応
1歳以上の小児の用量では1回2mg/kg(ドライシロップ剤として66.7mg/kg)であるため、1歳未満のほうがKgあたりの用量が大きくなるため注意が必要です。
例えば体重が10Kgの場合、1歳以上であれば1日製剤量が1.3gとなりますが、1歳未満であれば2.0gとなります。
用量の設定根拠
この1歳未満の用量は、欧米で承認されている1歳未満の用法用量がこの3mg/kgであることや、薬物動態で民族差が認められていないことなどから設定されています。
なお、欧米の添付文書でも「2週齢未満の新生児または在胎36週未満の早産児」に対するタミフルの有効性と安全性は確立されていないとされています。
予防投与の注意点
今回の改訂の新生児、乳児の用量追加はあくまで治療に用いる場合であり、予防投与の場合には乳児でも従来通りの用量となるため注意が必要です。
もし乳児(新生児)で予防投与の場合に「1回3mg/kg」で処方がきた場合は疑義照会対象となります。
②ソバルディ錠400mg(ソホスブビル)
「セログループ1(ジェノタイプ1)またはセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」の効能が追加となりました。
従来はジェノタイプ2に対する効能が承認されており、12週投与となります。
今回の追加効能は、ジェノタイプ3~6にも使えるようにするもので、24週投与で用いられます。これによりジェノタイプ1以外には使用できるようになりました。
なお、今回の追加効能も、リバビリン製剤のレベトールカプセルもしくはコペガス錠と併用することとなっています。
ジェノタイプ3~6について
日本のC型肝炎ウイルスジェノタイプ3の感染患者は約2800人、ジェノタイプ4~6は極めて少数とされています。
ジェノタイプ3に対しては日本エイズ学会、日本肝臓学会などから開発要望があり、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での評価を受け、開発要請された経緯があるようです。
ソバルディ錠400mg(一般名:ソホスブビル)の保険適用に関するご注意
今回の効能追加をうけて日本肝臓学会は「セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しない患者」が「セログループが判定不能」の症例を意味するわけではないと以下のように注意喚起しています。
本年3月3日、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、ソバルディ錠400mg(一般名:ソホスブビル)の製造販売承認事項一部変更について了承され、3月24日(金)に薬事承認、保険適用となりました。
この結果、「セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しない患者」を対象に効能が追加されました。
しかし、対象は、ジェノタイプ3、 4、 5、 6のC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変であり、「セログループが判定不能」の症例は、必ずしもジェノタイプが3、4、5、6とは限りません。
対象外の症例に関する対応は、肝炎診療ガイドライン作成委員会で検討し、「C型肝炎治療ガイドライン」に掲載いたします。以上の事情を勘案して、慎重に対応するようにお願い申し上げます。
③レベトールカプセル・コぺガス錠200mg(リバビリン)
ソバルディ同様に「セログループ1(ジェノタイプ1)またはセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」が効能追加となりました。
前述のとおりソバルディ錠との併用となります。
④ノベルジン(酢酸亜鉛水和物)
「低亜鉛血症」の効能が追加となりました。なお、低亜鉛血症の適応を持つ既存薬は日本にありません。
従来の効能であるウィルソン病では用法が「空腹時(食前1時間以上または食後2時間以上あける)」ですが、「低亜鉛血症」では「食後」となっています。また1日の投与回数や用量も異なっており、低亜鉛血症のほうが低用量となっています。
食後となっている理由については、英国における亜鉛製剤の添付文書で食後に服用するように記載されており、消化器症状を避けるため、食後投与とされているようです。
低亜鉛血症
通常、成人及び体重30kg以上の小児では、亜鉛として、1回25~50mgを開始用量とし1日2回経口投与する。通常、体重30kg未満の小児では、亜鉛として、1回25mgを開始用量とし1日1回経口投与する。
血清亜鉛濃度や患者の状態により適宜増減するが、最大投与量は成人及び体重30kg以上の小児では1日150mg(1回50mgを1日3回)、体重30kg未満の小児では75mg(1回25mgを1日3回)とする。
なお、いずれの場合も、食後に投与すること。
プロマックの亜鉛含有量
なお、従来より適用外で使用されるケースの多いプロマックは、錠剤1錠(顆粒1包0.5g)中に「亜鉛」を16.9mg含みます。
通常用量であればこれを1日2回服用するため、1日の「亜鉛」摂取量は33.8mgとなります。
⑤シンポニー皮下注(ゴリムバブ)
「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の改善及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能が追加となりました。
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