2022年1月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。
今回はベルソムラやロナセンの併用禁忌追加やプロトピック軟膏の警告削除が大きな改訂内容かと思います。
①ベルソムラ(スボレキサント)【併用禁忌】
併用禁忌にノクサフィル錠(ポサコナゾール)が追加となりました。
もともとベルソムラの併用禁忌に記載のあった「CYP3Aを強く阻害する薬剤」の部分に追記されました。ノクサフィル錠側でも整合性をとるために同様の内容が今回改訂となっています。
なお、イトリゾールやブイフェンドはもともとベルソムラの併用禁忌に記載があります。
<併用禁忌>
CYP3Aを強く阻害する薬剤
イトリゾール(イトラコナゾール)
ノクサフィル(ポサコナゾール)
ブイフェンド(ボリコナゾール)
クラリスロマイシン
ノービア(リトナビル)
ビラセプト(ネルフィナビル)
②ロナセン錠、テープ(ブロナンセリン)【併用禁忌】
前述のベルソムラ同様に併用禁忌にノクサフィル錠(ポサコナゾール)が追加となりました。当たり前ですが、ロナセンテープでも同様に改訂されています。
もともと併用禁忌に記載のあった「CYP3Aを強く阻害する薬剤」の部分の「アゾール系抗真菌剤」の部分に追記されました。他のアゾール系抗真菌剤はもともと併用禁忌に記載があります。
ノクサフィル錠側でも整合性をとるために同様の内容が今回改訂となっています。
なお、少し教育よりの話となりますが、アゾール系薬剤のうち、フロリードゲル経口用やオラビ錠口腔用は剤形が通常の内服と異なるため併用禁忌を見落としやすい製剤であるため注意が必要です。
<併用禁忌>
CYP3A4を強く阻害する薬剤
アゾール系抗真菌剤
イトリゾール(イトラコナゾール)
ブイフェンド(ボリコナゾール)
フロリード、オラビ(ミコナゾール(経口剤、口腔用剤、 注射剤))
ジフルカン(フルコナゾール)
プロジフ(ホスフルコナゾール)
ノクサフィル(ポサコナゾール)
③プロトピック軟膏【警告削除】
0.03%小児用製剤の再審査が終了し最新の知見に基づき「発がんリスク」に関する記載が変更となりました。従来「警告」に記載があった発がんリスクの記載が削除され、「重要な基本的注意」の項目に臨床使用に基づく発がんリスクに関する注意事項が記載されました。
「発がんリスクに関する内容を患者又は代諾者に対して説明し、理解したことを確認した上で使用すること」という記載内容自体は従来と変わりませんが、警告から重要な基本的注意での注意喚起になったため注意レベルとしては緩和されました。
<警告削除>
マウス塗布がん原性試験において、高い血中濃度の持続に基づくリンパ腫の増加が認められている。 また、本剤使用例において関連性は明らかではないが、リンパ腫、皮膚がんの発現が報告されている。本剤の使用にあたっては、これらの情報を患者又は 代諾者に対して説明し、理解したことを確認した上で使用すること。
<重要な基本的注意>
本剤の免疫抑制作用により潜在的な発がんリスクがある。0.03%製剤で実施された長期の国内製造販売後調査において、悪性リンパ腫、皮膚がん等の悪性腫 瘍の報告はなく、長期の海外疫学研究においても、本剤の使用による発がんリスクの上昇は認められなかった。
一方、本剤使用例において関連性は明らかでは ないが、悪性リンパ腫、皮膚がんの発現が報告されている。
本剤の使用にあたっては、これらの情報を患者 又は家族に対して説明し、理解したことを確認した上で使用すること。
<再審査結果及び添付文書改訂のお知らせより抜粋>
本剤の有効成分であるタクロリムスの注射剤や経口剤ではリンパ腫等の悪性腫瘍のリスクがあることが知られています。本剤は外用剤でありリスクは低いと考えられましたが、マウス塗布が ん原性試験の結果や因果関係は明確ではないもののリンパ腫、皮膚がんの自発報告があることから、患者又は代諾者にその説明を行い理解した上で使用していただくよう「1.警告」に記載してきました。
しかしながら、0.03%製剤の再審査において、悪性腫瘍の発現状況を追跡調査した国内製造販売後長期観察調査の結果、悪性腫瘍の報告がなかったことや、海外長期疫学研究において本剤の発がんリスク上昇が認められなかったことが明らかになったことから、悪性腫瘍のリスクが潜在的リスクであることは変わりないものの、警告欄で注意喚起を継続する必要性は低いと評価されました。
また、患者又は家族への説明内容に関しては、上記の国内製造販売後長期観察調査、 海外長期疫学研究の結果を追記することが適切と判断されました。そのため、0.1%製剤もあわせて「1.警告」の注意喚起を削除し、「8.重要な基本的注意」に最新の臨床使用情報に基づく注意事項を追記しました。
マウス塗布がん原性試験の結果については、必ずしもヒトに外挿できるとは限らないこと、上記の通り長期の臨床使用における情報が得られたことから、臨床使用における情報と同様に説明を必須とする必要性は低いと判断されたため、本項では記載はありません。ただし、「15.その他の 注意」15.2 非臨床試験に基づく情報の項には引き続き記載します。
また、「8.重要な基本的注意」に記載していた「2 年以上の長期使用時の局所免疫抑制作用(結果として、感染症を増加させたり、皮膚がんの誘因となる可能性がある)については、臨床試験成績がなく不明である。」については「長期特別調査」(3 年間)及び「治験症例の追跡調査」(10 年間)の結果、皮膚感染症及び皮膚以外の感染症の発現に経時的な上昇はみられず、上記の通りこ れらの調査を含む 3 つの長期観察調査(10 年間)で皮膚がんを含む悪性腫瘍の発現は報告されませんでした。以上の臨床成績が蓄積されたことから当該記載は削除しました。
④イムセラ・ジレニアカプセル(フィンゴリモド)
多発性硬化症治療剤であるイムセラ・ジレニアカプセルの 「重要な基本的注意」及び「重大な副作用」に血小板減少についての内容が追記されました。
<重要な基本的注意>
血小板減少があらわれることがあるため、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血液検査(血球数 算定等)を行うこと。
本剤の投与中止後に、投与開始前より重度の疾 患増悪が報告されており、投与中止後概ね 24 週までに認められている。 投与を中止する場合には、重度の疾患増悪に留意すること。
なお、もともと本剤は末梢血リンパ球を減少させる作用を有することか ら、添付文書の別の項目に「投与開始前及び投与中は血液検査(血球数算定等)を行う」という記載があったため、投与開始前及び投与中の血液検査が必要なのは従来からです。
⑤ザイティガ(アビラテロン)【併用注意】
併用注意にピオグリタゾン、レパグリニドが追加となりました。
ピオグリタゾンに関しては、添付文書中にAUCの増加率の記載があります。ザイティガとの併用で、ピオグリダゾンのAUCは46%増加したと記載されています。
<併用注意>
ピオグリタゾン又はレパグリニドと併用する場合は、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、低血糖が発現するおそれがあるため、患者の状態を十分に観察すること。
本剤の CYP2C8阻害作用により、これらの薬剤の代謝が阻害され る。
<ピオグリタゾン>
健康成人にCYP2C8の基質であるピオグリタゾンを本剤1,000mgと併用投与したとき、ピオグリタゾンのAUCは46%増加し、その活性代謝物であるM-Ⅲ、M-ⅣのAUCはそれぞれ10%減少した。(外国人データ)
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