新薬承認情報【2021年秋】

新薬承認情報【2021年秋】

2021年秋の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。

品目数はそれほど多くありませんでしたが、軟膏ながら避妊が必要とされるアトピー性皮膚炎を効能とするモイゼルト軟膏は薬剤師として認識しておいたほうがよいかと思います。

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①モイゼルト軟膏(ジファミラス)

「アトピー性皮膚炎」を効能するホスホジエステラー ゼ 4(PDE4)阻害剤の外用製剤です。

1%と0.3%の規格があり、成人は1%ですが、小児(2歳以上)は0.3%だけでなく、 症状に応じて1%製剤も使用することができます。

<用法及び用量>
通常、成人には1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布する。

通常、小児には0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布する。症状に応じて、1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができる。

格間違いの過誤が想定される点や偶然だと思いますが、添付文書上の用法や用法及び用量に関連する注意などが、最近小児の効能追加に伴い規格が追加になったヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤のコレクチム軟膏に似てたりします。

Moisture, Certainlyという潤いのある正常な皮膚を確実に取り戻すという意味で命名されています。

塗り薬だが避妊が必要

なお、モイゼルト軟膏は妊娠が禁忌ではありませんが、添付文書中に「妊娠可能な女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること」という記載があり、妊娠可能な女性に投薬する場合は 本剤投与中だけでなく、投与終了後も一定期間は適切な避妊を行うよう指導する必要があります。

 <特定の背景を有する患者に関する注意>
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。

 9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないことが望ましい。動物実験(雌ラット:皮下)において、臨床曝露量の263倍の曝露で、胚・胎児の死亡率高値及び胎児の心室中隔膜性部欠損が報告されている。

なお、「一定期間」というのは、添付文書やインタビューフォームには記載がなく、製薬会社の社内資料によると 、塗った場合の血中濃度半減期から2週間程度を目安とするようです。

抗がん剤以外で、妊娠が禁忌でないのに避妊するように記載のある薬剤は非常に珍しい気がします。また、塗り薬で妊娠が禁忌の薬剤はディフェリンゲルなどいくつか存在しますが、避妊指導が必要な塗り薬はおそらく初かと思います。

妊娠可能な年齢に処方された場合の対応

ディフェリンゲルやモーラステープ、ロコアテープのように妊娠が禁忌(ロコア、モーラスは妊娠後期が禁忌)なだけで避妊についての記載がない薬剤であれば、初回説明時に現在妊娠がないことを聴取したうえで「妊娠した場合は使えないので、妊娠の予定ができたら薬が変わる可能性があるので事前に医師に申し出るように」などと説明します。

一方、 モイゼルト軟膏はこの指導に加えて、使用中と終了後2週間程度は適切な避妊を行うように指導するということになります。

モイゼルト軟膏はまだ指導せんが作成されていないようですが、このあたりの表現が今後作成される指導せんでどのようになってくるかは気になるところです。

②エフメノカプセル(プロゲステロン)

本邦初の「更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制」を効能とする経口天然型黄体ホルモン製剤です。 世界100ヵ国以上で販売されていようです。

食事の影響を受けるため「就寝前」の用法となっています。

また、運転など「避ける」ではありませんが、運転など「注意」の記載として「傾眠状態や浮動性めまいを引き起こすことがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分説明すること」とされています。

エフメノ(F-meno)は、英語の「女性」を意味する female ならびに「閉経」 を意味する menopause を組み合わせて命名されています。 

<用法・用量>
卵胞ホルモン剤との併用において、以下のいずれかを選択する。

・ 卵胞ホルモン剤の投与開始日からプロゲステロンとして100mgを1日1回就寝前に経口投与する。

・ 卵胞ホルモン剤の投与開始日を1日目として、卵胞ホルモン剤の投与15日目から28日目までプロゲステロンとして200mgを1日1回就寝前に経口投与する。これを1周期とし、以後この周期を繰り返す。

③サイバインコ錠(アブロシチニ)

「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能とする経口JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤です。

経口JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤といえばリウマチの薬というイメージですが、オルミエントやリンヴォックも最近、アトピー性皮膚炎の効能追加となりました。一方、この新薬のサイバインコ錠はリウマチの適応はありません。

なお、オルミエントやリンヴォック同様に サイバインコ錠も最適使用推進ガイドラインの対象であり、ガイドライン中で当該医薬品の使用に係る患者及び医療機関等の要件、考え方及び留意事項・保険適用上の留意事項などが示されているため、専門医以外での使用はないかと思います。

CYP2C19阻害薬との相互作用に注意

併用禁忌ではなく、併用注意ですが、強いCYP2C19阻害薬(フルコナゾール、フルボキサミン、チクロピジンなど)と併用投与する場合には、 サイバインコ側の用量上限が半量程度に制限されます。

そのため、 サイバインコの使用量によっては実質、強いCYP2C19阻害薬の併用ができない場合があるため注意が必要です。自店で上記の強いCYP2C19阻害薬の採用がある場合や今後サイバインコ錠を扱う場合は認識しておいたほうがよいかと思います。

CYP3Aとの相互作用で用量が制限される薬剤はそれなりにありますが、 CYP2C19阻害薬でこのような記載はわりと珍しいかもしれません。

なお、少し教育よりの話になりますが、ここででてきているフルコナゾール、フルボキサミン、 チクロピジンはCYP2C19 だけでなく、他のCYPも阻害するのでこういった一部の添付文書の記載のみで「フルコナゾール、フルボキサミン、 チクロピジンはCYP2C19だけ阻害する」と認識してしまうのは危険なので注意が必要です。

④ステルイズ水性懸濁筋注シリンジ(ベンジルペニシリンベンザチン水和物)

梅毒(神経梅毒を除く)を効能とする持続性ペニシリン製剤です。

日本の従来の梅毒の治療では2~12週(病期により治療期間が異なる)の長期のペニシリン内服が必要でしたが、 ステルイズでは早期梅毒には単回投与、後期梅毒の場合でも週に1回、計3回の投与で治療を完了できるようになります。

海外では以前から本薬筋注製剤が梅毒治療の第一選択とされています。

内服ではなく、筋注なのでステルイズ自体は調剤薬局で調剤することはありませんが、従来、内服治療で調剤薬局にきていたような梅毒患者は、ステイルズが発売することで病院で治療を完結できるため、今後は梅毒患者が調剤薬局にくる頻度は減少する可能性があります。

このように梅毒の治療の流れが変わる可能性があることは薬剤師として認識しておいたほうが良いかと思います。

新薬DSU等の解説
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