2021年初春の効能追加情報をまとめました。
今回はそれほど処方される頻度が多いものではありませんが、処方がある薬局では認識しておく必要があります。
また、イグザレルトについては小児効能追加に伴い、特殊な製剤である「イグザレルトドライシロップ小児用」も発売されるので「特殊であること」は認識しておいたほうがよいかと思います。
①オルミエント錠(バリシチニブ)
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であるオルミエント錠に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の効能が追加となりました。
経口のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤といえばリウマチの薬ですが、アトピーにも使われるようになったことは認識しておいたほうがいいかもしれません。
少し前に発売された軟膏のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であるコレクチム軟膏はアトピー性皮膚炎の効能なので、内服でも使われるようになってくるのはわかる気がします。
最適使用推進ガイドライン対象
今回追加されたオルミエントの効能は最適使用推進ガイドラインの対象であり、ガイドライン中で当該医薬品の使用に係る患者及び医療機関等の要件、考え方及び留意事項が示されているため、専門医以外での使用はないかと思います。
なお、最適使用推進ガイドライン対象となった薬剤は今まで点滴静注や皮下注の薬剤だったので、内服薬というのは今回が初めてな気がします。
また、 最適使用推進ガイドライン以外に下記のような保険適用上の留意事項も示されています。
(1)オルミエント錠2mg 及び同錠4mgについては、最適使用推進ガイドラインに従い、有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間、国内臨床試験の結果 等から本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに、 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件を満たす医療機関で使用するよう十分留意すること。
ヤヌスキナーゼ阻害剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について 保 医 発 1225 第 3 号 令和2年 12 月 25 日
(2)アトピー性皮膚炎 本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。なお、本製剤の継続投与に当たっては、投与開始時の情報を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
1)次に掲げる医師の要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設(「施設要件ア」又は「施設要件イ」と記載)
ア 医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の 臨床研修を行っていること。
イ 医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有 していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療 の臨床研修を行っていること。
2) 本剤投与前の抗炎症外用薬による治療の状況(「前治療要件ア」又は「前治 療要件イ」と記載)
ア 成人アトピー性皮膚炎患者であって、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン で重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)や カルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6カ月以上行っている。
イ 成人アトピー性皮膚炎患者であって、ステロイド外用薬やカルシニューリ ン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用若しくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難。
3)疾患活動性の状況として、次に掲げるすべての項目の数値
ア IGA スコア
イ 全身又は頭頸部の EASI スコア
ウ 体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)
②リムパーザ錠(オラパリブ)
リムパーザ錠に下記の3つの効能が追加となりました。
●「相同組換え修復欠損を有する卵巣癌におけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法」
●「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」
●「BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵癌における白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法」
扱いがある薬局では、卵巣癌や乳がん以外にも去勢抵抗性前立腺癌や膵癌の用途でも使われるようになったことは認識しておいたほうが良いかと思います。
③ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)
ガーダシルにヒトパピローマウイルス6、11、16及び18型の感染に起因する「肛門癌(扁平上皮癌)及びその前駆病変(肛門上皮内腫瘍(AIN)1、2及び3)」の予防の効能が追加となりました。これは男女ともに効能となります。
また、従来も効能としてはあった「尖圭コンジローマ」が、男性にも使用可能となりました。
従来は女性しか使いませんでしたが、今回の効能追加により男性にも使用されるようになりました。
<効能又は効果>
ヒトパピローマウイルス6、11、16及び18型の感染に起因する以下の疾患の予防
○子宮頸癌(扁平上皮癌及び腺癌)及びその前駆 病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2及び3 並びに上皮内腺癌(AIS))
○外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2及び3並びに腟上皮 内腫瘍(VaIN)1、2及び3
○肛門癌(扁平上皮癌)及びその前駆病変(肛門 上皮内腫瘍(AIN)1、2及び3)
○尖圭コンジローマ
<用法及び用量>
9歳以上の者に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内 に注射する。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、 3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種する。
④ビムパット錠・ドライシロップ(ラコサミド)
「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」の効能が追加となりました。
⑤イグザレルト錠・細粒分包(リバーロキサバン)
小児の「静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制」の効能が追加され、小児適応を持つ唯一の非ビタミンK拮抗経口抗凝固剤(NOAC)となりました。ドライシロップ小児用も承認されました。
従来からある剤形の錠剤・細粒分包では小児は体重30kg以上が対象となりますが、ドライシロップ小児用では2.6kg~30kgも対象となっています。
また、OD錠が2021年1月に発売になっているのでOD錠の処方で気づかずに普通錠を調剤知ってしまう過誤に注意が必要です。
イグザレルトドライシロップ小児用
薬剤師として認識しておくことは「イグザレルトドライシロップ小児用」は特殊な製剤のため、実際に処方が出た場合は調整方法や払い出し方法、処方の書き方が適切かなどを確認する必要があるということです。
用法・用量も複雑で、調整方法も「ドライシロップ」ですが、分包するのではなく、1瓶ごとに1名の患者に交付し、容器に水を加え、均一に懸濁されるまで60 秒以上振り混ぜて調製する製品であり、小分けしない設計になっています。
調製後のシロップ剤は、毎回10 秒以上振とう後、計量用ピペットを用いて1 回量を量りとることされています。調製日から14 日が使用期限となります。
イグザレルトドライシロップ小児用の払い出し
瓶ごと払いだす製剤と聞くと、ジフルカンドライシロップのように瓶で渡さなければならないのに、薬価は「瓶」ではなく、「mL」となっていて、処方量(mL)によっては薬局が赤字になるという欠陥製剤かと心配になりますが、製薬会社に確認したところ薬価も「瓶」で通っているのでその心配はないようです。
ただし、まだ販売はしていため変更となる可能性もあるので、実際に処方に遭遇した時点で再度払い出し方法については製薬会社に確認したほうが良いかと思います。
⑥ノベルジン錠(酢酸亜鉛)
錠剤以外の新しい剤形として顆粒が追加となりました。
錠剤である従来から「体重30kg 未満の小児」の効能はありましたが、顆粒の剤形追加に伴って、体重30kg 未満の小児」における用法・用量がより細かくなりました。
小児に使用されている薬局は添付文書などで最新の用法用量を確認しておく必要があります。
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