2025年6月分 DSUのまとめ

2025年6月分 DSUのまとめ

2025 年6月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

今回はドンペリドンの妊娠禁忌が解除されたことやヒドロクロロチアジド含有製剤・ナトリックス錠(インダパミド)の「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する注意が追記されたこと、セララの併用禁忌追加などが重要な内容となります。

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①ヒドロクロロチアジド含有製剤・ナトリックス錠(インダパミド)【重要な基本的注意】

「重要な基本的注意」と「重大な副作用」に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する注意が追記されました。

なお、ヒドロクロロチアジドについては重大な副作用の項の急性近視、閉塞隅角緑内障については従来より記載されています。

重要な基本的注意>
急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出があらわれることがあるので、急激な視力の低下や眼痛等の異常が認められた場合には、直ちに眼科医の診察を受けるよう、患者に指導すること


<重大な副作用>
急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出(いずれも頻度不明)
急性近視(霧視、視力低下等を含む)、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出があらわれることがある。

薬剤師としての対応

今回の改訂で重要な基本的注意に「患者に指導すること」と明記されたため、今後は服薬指導の際に急激な視力の低下や眼痛などが見られる場合はすぐに眼科に受診するように伝える必要があります。

ヒドロクロロチアジド含有配合剤

ナトリックスは後発品がないのでわかりやすいですが、ヒドロクロロチアジドは単剤のヒドロクロロチアジド錠よりも配合剤のほうが処方頻度が高く、商品名だけだと含有に気づかずに指導が漏れてしまう可能性があるため注意する必要があります。

・エカード配合錠(カデチア):テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド
・ミコンビ配合錠(テルチア):配合錠バルサルタン・ヒドロクロロチアジド
・コディオ配合錠(バルヒディオ):バルサルタン・ヒドロクロロチアジド
・プレミネント配合錠(ロサルヒド):ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド
・コディオ配合錠(バルヒデュオ):バルサルタン・ヒドロクロロチアジド
・ミカトリオ配合錠:テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド

②アセタゾラミド(ダイアモックス)【重要な基本的注意

「重要な基本的注意」と「重大な副作用」に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する注意が追記されました。

重要な基本的注意は前述同様ですが、重大な副作用については詳しく記載されています。

<重要な基本的注意>
急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出があらわれることがあるので、急激な視力の低下や眼痛等の異常が認められた場合には、直ちに眼科医の診察を受けるよう、患者に指導すること。

<重大な副作用>
急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出(いずれも頻度不明)

薬剤性緑内障の治療に本剤を使用した海外症例において、視力低下、閉塞隅角緑内障の増悪、脈絡膜滲出があらわれたとの報告がある。また、白内障手術前後の眼圧調整等に本剤を使用した海外症例において、急性近視(霧視、視力低下等を含む)、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出があらわれたとの報告がある。

急激な視力の低下や眼痛等の異常が認められた場合には、本剤に起因する可能性も考慮した上で、本剤に起因すると疑われるときは本剤を中止するなど適切な処置を行うこと。

③セララ錠(エプレレノン)【併用禁忌】

ブイフェンド(ボリコナゾール)、ノクサフィル(ポサコナゾール)が併用注意から併用禁忌に変更されました。相手薬側の添付文書も今回同様に改訂されています。


セララとの相互作用の試験データはないものの、ブイフェンド、ノクサフィルはCYP3Aを強く阻害することが知られており併用した場合にエプレレノンの血漿中濃度が著しく上昇し、副作用の発現リスクが高まることが懸念されることから変更となったようです。

なお、イトラコナゾールは従来から併用禁忌となっています。

④アデムパス(リオシグアト)【併用禁忌解除】

従来併用禁忌であったイトラコナゾール、ブイフェンド(ボリコナゾール)が併用注意に変更されました。

⑤ドンペリドン【妊娠禁忌解除】

従来禁忌であった妊娠が有益投与に変更となりました。

これにより、従来は必須であった服薬指導時の妊娠していないことの確認は必須ではなくなり、妊娠している場合でも医師に妊娠を話したうえでの処方であれば疑義照会は不要となると考えられます。
(妊娠確認は必須ではなくなりますが、妊娠可能な年齢であれば情報の更新の意味合いもあるので確認したほうがよいかと思います)

なお、今回の妊婦禁忌解除は本剤の催奇形性リスクがなくなったわけではなく、本剤服薬後に妊娠が発覚した場合の不要な人工妊娠中絶の回避を目的としたものであり、妊婦又は妊娠している可能性のある女性への本剤の使用を広く認めるという主旨の改訂ではないことに留意する必要があるとされているためこの部分は認識しておく必要があります。

医師によっては従来通りメトクロプラミドを優先して使うということは十分あると思います。

<特定の背景を有する患者に関する注意 妊婦>
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

動物実験(ラット)で臨床用量の約65倍の投与量(体表面積換算)で骨格、内臓異常等の催奇形作用が報告されている。

ドンペリドンとメトクロプラミドの違い

今回の改訂によりドンペリドンの妊娠禁忌が解除されました。
ドンペリドンとメトクロプラミドの大きな違いであった部分が緩和されましたが下記の添付文書上の違いは引き続き残るので認識しておく必要があります。

ドンペリドンはプロラクチノーマ(プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍)が禁忌

ドンペリドンはプロラクチノーマ禁忌のため、少なくとも併用薬としてカバサール錠(カベルゴリン)やパーロデル錠(ブロモクリプチン)などの併用がある場合はプロラクチノーマでないかを確認する必要があります。

割と見落としがちな禁忌項目なのでドンペリドン処方時に限らず、カバサール錠(カベルゴリン)やパーロデル錠(ブロモクリプチン)などの併用がある場合にはプロラクチノーマでないかを確認しておき、プロラクチノーマであった場合や新患アンケートにプロラクチノーマの記載があった場合などは薬歴の申し送りなどのわかりやすい部分に「プロラクチノーマのためドンペリドン禁忌」などと記載しておくことをお勧めします。なお、スルピリドやチアプリドもプロラクチノーマが禁忌です。

メトクロプラミドはプロラクチノーマ禁忌ではありませんがプロラクチン値上昇の副作用はあります。

メトクロプラミドは褐色細胞腫・パラガングリオーマが禁忌

メトクロプラミドは褐色細胞腫・パラガングリオーマが禁忌となります。
疾患が判明したら腫瘍を摘出する場合が多いですが、手術待ちのようなケースもあるかと思います。

少なくとも大きな病院の内分泌化などからα遮断薬を含む高血圧薬が出ている場合などはこれらの疾患でないかを確認する必要があります。

また、添付文書上は褐色細胞腫又はパラガングリオーマの「疑いのある患者」という記載のため一見すると、β遮断薬のように確定診断されて治療開始していれば禁忌から除外される印象もありますが、製薬会社に確認したところ禁忌に該当するとのことでした。

なお、ドンペリドンは添付文書に禁忌の記載がないが、褐色細胞腫のガイドライン上にもメトクロプラミドと作用機序が同じであるため使用には注意を要するとされているため、疑義照会対象としたほうがよいかと思います。

手術済みの場合

製薬会社に確認したところ、手術済み(褐色細胞腫が取り切れていれば)であれば禁忌に該当しないようでしたが、歯切れが悪かったのでこのような例に遭遇した場合は再度製薬会社に禁忌に該当しないかを確認して対応するのが良いかと思います。

なお、手術済みでも再発・転移する例が1~2割前後知られているようです。

手術後は術後再発のチェックのために、定期的な画像検査や採血などを行いますが、これらを最後に受けたのはいつかの確認や再発の自覚症状(高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感など)がでていないことの確認も必要です。

ちなみにアトモキセチンのように既往歴を含めて禁忌の薬剤もあります。

⑥ジカディア錠(セリチニブ)【併用禁忌】

併用禁忌に「ベネクレクスタ錠(ベネトクラクス)(再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫の用量漸増期」が追加となりました。

なお、ベネクレクスタ側の添付文書も今回改訂となっています。

⑦マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド)【重要な基本的注意】

重要な基本的注意に同成分の肥満症の新薬であるゼップバウンド皮下注アテオスと併用しない旨が追記されました。

<重要な基本的注意>
本剤はチルゼパチドを含有しているため、ゼップバウンド等他のチルゼパチド含有製剤と併用しないこと。

⑧ゼビアックスローション・油性クリーム(オゼノキサシン)

従来、「特定の背景を有する患者に関する注意の小児等」に記載されてた「13歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していない」という記載が「乳低出生体重児、新生児、乳児を対象とした臨床試験は実施していない」に変更となりました。

これにより、今までよりも低い年齢からの処方例が増えるかもしれません。

<特定の背景を有する患者に関する注意  小児等 >
乳低出生体重児、新生児、乳児を対象とした臨床試験は実施していない。

⑨エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)【生殖能を有する者】

「生殖能を有する者」の項目の避妊についての記載が従来の「一定期間」という曖昧な記載が改訂され具体的な避妊期間が明記されました。

<生殖能を有する者>
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。

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