2024年9月分 DSUのまとめ

2024年9月分 DSUのまとめ

2024年9月分のDSUのなかから薬局薬剤師に関係がありそうな薬剤を抜粋してまとめました。

今回はメジャーな薬剤での大きな改訂はそれほどありませんでしたが、アゼルニジピンの併用禁忌・併用注意追加は把握しておいた方がよいかと思います。

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①バルプロ酸ナトリウム【その他の注意(臨床使用に基づく情報)】

「その他の注意」の「臨床使用に基づく情報」に、本剤に曝露した父親の児における神経発達症に関するリスクについての報告の記載が追記されました。

ただし、別の研究ではリスクの増加は認められないとする報告もあるので、現時点でははっきりした結論はでていません。

<その他の注意(臨床使用に基づく情報)>
本剤との因果関係は明らかではないが、北欧で実施された観察研究において、受胎前の3ヵ月間に本剤に曝露した父親の児は、ラモトリギン又はレベチラセタムに曝露した父親の児と比較して、神経発達症リスクの増加を示唆する報告がある(調整ハザード比1.50[95%信頼区間:1.09-2.07])。

一方で、てんかんを有する父親を対象とした海外で実施された観察研究において、受胎前の120日間に本剤に曝露した父親の児は、本剤に曝露していない父親の児と比較して、統計学的に有意な神経発達症リスクの増加は認められないとする報告もある。

下記のデパケンの使用上の注意改訂のお知らせの改訂理由部分も参考になります。

<デパケン 使用上の注意改訂 改訂理由より引用>
令和6年8月27日付厚生労働省医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安通知)に基づき、「その他の注意」の「臨床使用に基づく情報」の項を改訂しました。

EMA(European Medicines Agency:欧州医薬品庁)のPRAC(Pharmacovigilance Risk
Assessment Committee:ファーマコビジランス・リスク評価委員会)の評価結果に基づき、本剤に曝露した父親の児における神経発達症に関する海外疫学調査文献の評価が行われました。

北欧観察研究文献1)において、受胎前の3ヵ月間に本剤に曝露した父親の児における神経発達症リスクの増加が示唆されました。ただし、本研究においては、適応症による交絡の可能性、対照群よりもバルプロ酸群でフォローアップ期間が長い等、研究の限界があることを考慮し、欧州ではさらなる検討のため新たな試験の実施が求められています。

一方、海外観察研究(JAMA NetwOpen. 2024; 7: e2414709文献2))において、受胎前の120日間に本剤に曝露したてんかんを有する父親の児では、統計学的に有意な神経発達症リスクの増加は認められませんでした。

以上より、現時点では本剤を投与した父親の児の神経発達症の発症リスクに関する評価は確立していないものの、父親曝露による児の神経発達症リスク増加の可能性が否定できないため、「その他の注意」の項を改訂して情報提供を行うこととしました。

薬剤師の対応

今回の改訂は特に男性側に避妊が必要といった内容ではなく、報告の結論も出ていないので、こちらから患者に伝える必要はないかと思います。

もし、患者が自分で調べてこの情報を知って不安になって質問してきた場合は、リスクの増加は認められないとする報告もあることを伝えて、不安なようであれば医師にも相談するよう伝える対応が良いかと思います。

②タリージェ錠(ミロガバリン)【重大な副作用】

「重大な副作用」に腎機能障害が追加となりました。

③アゼルニジピン【併用禁忌・注意】

もともとアゾール系薬剤は多くのものが併用禁忌でしたが、ノクサフィル(ポサコナゾール)も併用禁忌に追加となりました。ノクサフィル側の添付文書も今回同様に改訂されています。

また、併用注意にネイリン(ホスラブコナゾール)が追記されました。

ネイリンは併用禁忌ではなく併用注意ですが、併用によるアゼルニジピンのAUCの増加は約3倍と予測されている(使用上の注意改訂のお知らせに記載あり)のでネイリン服用中に新規でアゼルニジピンが処方された場合は疑義照会して他のCa拮抗剤に変更したほうがよいかと思います。

アゼルニジピン服用中にネイリンが処方された場合

アゼルニジピン服用中にネイリンが処方された場合はネイリンの代替となる内服薬が事前に血液検査が必要とされるテルビナフィンしかないため対応が難しくなります。

アゼルニジピンの用量と現在の血圧がどの程度か、血液検査をしているか、アゼルニジピン処方病院とネイリン処方病院が異なるかなどを確認したうえで下記のいずれかの対応になるかと思います。

①ネイリン処方医に疑義照会して、クレナフィンなどの外用剤(もしくはテルビナフィン内服)に変更すかどうか確認する。

②アゼルニジピン処方医に疑義照会して、「血圧が低くなりすぎるようであれば受診してもらう」か「現時点でアゼルニジピンの服用量を減らす(現在の残薬を半割して飲んでもらうなども検討)」・「受診してもらい他のCa拮抗剤に変更する」などを確認する。

③疑義照会はせずに血圧が低くなりすぎるようであれば受診してもらう。

<併用注意>
本剤の作用が増強されるおそれがある。
必要があれば本剤を減量又は中止、あるいはこれらの薬剤の投与を中止すること。

④パルモディア錠【重大な副作用】

「重大な副作用」に「肝機能障害、黄疸」が追加となりました。

⑤マンジャロ皮下注アテオス【生殖能を有する者】

「生殖能を有する者」の項目に具体的な避妊期間が追記されました。
なお、従来から「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には本剤を投与せず、インスリン製剤を使用すること」という記載はされています。

<生殖能を有する者>
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後 1 ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること

⑥ヨウ化カリウム【併用禁忌】

併用禁忌に「セララ(エプレレノン<高血圧症>)、ミネブロ(エサキセレノン)が追記になりました。なお、相手薬側では従来より記載されています。

上記の薬剤と併用禁忌であることはカリウム補給の効能であるアスパラカリウム錠などは分かりやすいですが、ヨウ化カリウムもカリウム製剤として併用禁忌に記載されていることは見落としがちなので注意が必要です。

なお、セララを慢性心不全に使用する場合は併用禁忌ではなく併用注意となります。

DSU等の解説
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