リピディルの服薬指導

リピディルの服薬指導
今回は1日1回投与のフィブラート系高脂血症治療剤であるリピディルの服薬指導をまとめました。

リピディルはフィブラート系の中でも肝臓に対する副作用があり肝障害が禁忌という特徴がある薬剤です。また、 クレアチニンクリアランスが40mL/min未満が禁忌となるため、服薬指導の際に腎機能障害の有無を確認する必要があります。

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リピディルの概要

リピディルは従来は微粉化されたフェノフィブラート製剤であるリピディルのカプセル製剤が販売されていました。

その後2011年にフェノフィブラートを固体分散体化し吸収性を高めて小型化した錠剤が発売され、現在はリピディル錠53.3mg及びリピディル錠80mgが販売されています。(リピディルカプセル67及びリピディルカプセル100とそれぞれ生物学的に同等)

服薬指導難度

効能

高脂血症(家族性を含む)

用法・用量

「1日1回106.6mg~160mgを食後経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜減量する。1日160mgを超える用量は投与しないこと」とされていますが、用法・用量に関連する使用上の注意には細かい投与開始量の記載があるため注意が必要です。

「総コレステロール及びトリグリセライドの両方が高い高脂血症」の場合

1日投与量を106.6mgより開始することされており、高血圧、喫煙等の虚血性心疾患のリスクファクターを有し、より高い治療目標値を設定する必要のある場合には1日投与量を159.9mg~160mgとすることと記載されています。

「トリグリセライドのみが高い高脂血症」や「肝機能検査に異常のある患者又は肝障害の既往歴」のある患者、「血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満の場合」

このような場合は1日投与量を53.3mgより開始することとされています。なお、クレアチニンによる開始量の減量は減量のかわりに投与間隔を延長して使用するという選択肢も記載されています。

名前の由来

「Lipid(脂質)に対する Ideal(理想的な)agent(薬剤)」をイメージし文字を合成して英名で「LIPIDIL」、日本名でリピディルと命名されています。

リピディルの服薬指導で確認すること

①肝障害の有無【禁忌】

臨床試験や市販後においてにおいてAST、ALT及びγ-GTP等の肝機能検査値の異常、黄疸、肝炎等の肝障害が報告されています。そのため「肝障害のある患者」は肝障害を悪化させることがあるため、程度に関わらず禁忌となっています。

一方、「肝機能検査値の異常」は禁忌ではなく、慎重投与となります。この「肝障害」と「肝機能検査値の異常」の違いは何かを製薬会社に確認したところ、肝機能検査値の異常はAST、ALT及びγ-GTPなどが高い状態であり、これにビリルビン、アルブミン、血液凝固能異常など加わってくると肝障害とみなされ禁忌となるとのことでした。(添付文書上明記されているわけではないのであくまで参考情報としたほうがよいでしょう)

つまり、AST、ALTが多少異常値を示していても、ビリルビン、アルブミン、血液凝固能異常などが正常であれば医師の判断により投与できるということでしょう。

薬剤師の対応としては患者に対して「肝臓が悪いと言われたことがあるか」を確認をし、該当する場合は具体的な検査値の確認を試みます。ただ、具体的な検査値まで把握している患者は多くはないので、実際は肝臓が悪いと言われたことがある患者には肝障害禁忌でない他のフィブラート系に変更するのが現実的な対応だと思います。

②胆のう疾患の有無【禁忌】

胆のう疾患に関しては胆石症が報告されており、禁忌となっています。クロフィブラートが「胆石又はその既往歴のある患者」が禁忌という記載に対してこのリピディルは「胆のう疾患のある患者」という記載となっており、胆のう炎や胆管炎など胆のう疾患全般で禁忌となってしまうことに注意が必要です。

一方、「胆石症の既往」に関してはクロフィブラートでは禁忌ですが、リピディルでは慎重投与となります。

③腎機能検査の有無【用法用量に関連する使用上の注意】

「投与にあたっては患者の腎機能を検査し」という記載かあるため、実施していないようであれば疑義照会対象となるかと思いますが、製薬会社に確認したところ、この記載は「投与前に腎機能検査をしなければならないというわけではない」、とのことでした。

「投与にあたっては患者の腎機能を検査し」の解釈の仕方ですが、この回答に従うのであれば、腎機能検査の有無の確認は不要となります(実際はコレステロールを測る際に血清クレアチニンも測定している病院が多いかと思います)。

ただ、個人的にはこの文言では「投与の際は腎機能検査をする」と読み取れるので、同じような解釈の方は自身で一度製薬会社に確認することをおすすめします。

急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症があらわれることがあるので,投与にあたっては患者の腎機能を検査し,血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の場合には投与を中止し,血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満の場合は53.3mgから投与を開始するか,投与間隔を延長して使用すること.

④腎機能障害の有無【クレアチニンクリアランスが40mL/min未満禁忌】2019年11月改訂

中等度以上の腎機能障害が禁忌となります。

なお、「中等度以上の腎機能障害」とは添付文書には目安として「クレアチニン値が2.5mg/dL以上」と記載されているので誤解されがちですが、製薬会社に確認したところクレアチニンクリアランスやeGFRが中等度以上の腎機能障害も禁忌に該当するとのことでした。

そのため、クレアチニンクリアランスが50未満やeGFRが60未満であれば疑義照会する必要があります。

2019年11月に腎障害の禁忌項目が改訂となり、従来の「中等度以上の腎機能障害のある患者(目安として血清クレアチニン値が 2.5mg/dL 以上)」から「血清クレアチニン値が 2.5mg/dL 以上又はクレアチニンクリアランスが 40mL/min 未満の腎機能障害のある患者」に変更となり、クレアチニンクリアランスの具体的な値が明記されました。

従来の「中等度以上の腎機能障害」では少なくともクレアチニンクリアランスが50を切ってた場合は疑義照会対象と考えられましたが、今回の改訂で40と明記されるようになったため、実際には禁忌がやや緩和されたと捉えられます。

なお、添付文書には「血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満の場合は減量又は投与間隔の延長等を行うこと」とありますが、この血清クレアチニン値であれば、多くの場合クレアチニンクリアランスが40を切るので禁忌に該当してしまうかと思います。

<禁忌>
血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上又はクレアチニンクリアランスが40mL/min未満の腎機能障害のある患者

<用法用量に関連する使用上の注意>
急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症があらわれることがあるので,投与にあたっては患者の腎機能を検査し,血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の場合には投与を中止し,血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満の場合は53.3mgから投与を開始するか,投与間隔を延長して使用すること

⑤HMG-CoA還元酵素阻害剤の併用の有無【重要な基本的注意】2018年10月改訂

従来では腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者にスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤を併用するのは原則禁忌、原則併用禁忌でしたが、2018年10月の改訂で「原則禁忌」から「重要な基本的注意」に注意喚起が移行となり、「原則併用禁忌」から「併用注意」に移行となりました。

原則禁忌から外れたものの、腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に、併用する場合には、治療上やむを得ないと判断される場合であり、やむを得ず併用する場合には、定期的に腎機能検査等を実施し、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の発現、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止することとされています。

該当する場合は、従来の原則禁忌のように、ルーチンでの疑義照会はいらないかと思いますが、医師によっては腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる場合は併用を避ける医師もいるかと思います(腎機能検査値に異常が認められる場合はクレアチニンクリアランスの禁忌に該当する例のほうが多いかもしれませんが)。

<重要な基本的注意>
腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に,本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること.急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい.

やむを得ず併用する場合には,本剤を少量から投与開始するとともに,定期的に腎機能検査等を実施し,自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現,CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること.

⑥投与日数の確認

AST,ALT,γ-GTP,LDH,ALPの上昇,黄疸,並びに肝炎があらわれることがあるので,肝機能検査は投与開始3カ月後までは毎月,その後は3カ月ごとに行うことと記載がされています。

そのため、長期処方で検査の予定がない場合は疑義照会の対象となります。なお、これはフェノフィブラートカプセル製剤の臨床試験における肝機能検査値異常や市販後に報告された肝機能検査値異常や黄疸、肝炎等の多くが投与開始3カ月以内に認められたことから設定されています。

⑦妊娠・授乳の有無【禁忌】

妊婦、産婦、授乳婦を対象とした臨床試験は実施されておらず、安全性が確立していません。また、動物実験で、妊娠中期以降の投与により、出生児の体重増加抑制や、乳汁中への移行がみられるため禁忌となっています。

リピディルの服薬指導で説明すること

①横紋筋融解症の副作用

筋肉痛,脱力感、尿の色が赤褐色になるなど認められた際はすぐに受診するよう説明します。添付文書上は筋肉痛,脱力感の記載はありますが、尿の色に関しては記載がありませんが、「尿が赤褐色になる」は重要な症状のため説明しておくとよいでしょう。

②肝障害の副作用

肝機能障害があらわれることがあるので,異常が認められた場合にはすぐに受診するよう説明します。具体的な症状に関しては添付文書上には黄疸程度しか記載がありませんが、倦怠感、吐き気、発疹・かゆみなども併せて説明するとよいでしょう。

③食後服用を守ることの説明

リピディルは空腹時に投与すると吸収が悪くなるため食後に投与することを説明します。

インタビューフォームに記載されている食事の影響試験の結果では空腹時投与でCmaxがおよそ半分に、AUCは2割ほど低下しています。

リピディルの服薬指導薬歴例

S)中性脂肪が高い
O)肝・腎悪いといわれたことない。胆のう疾患なし。併用なし。
A)万一筋肉痛,脱力感、尿の色が赤褐色、黄疸、倦怠感、吐き気、発疹・かゆみなど出る場合はすぐに受診するよう指示。なるべく食後を守ること説明。
P)副作用確認

薬剤別服薬指導
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