効能追加情報【2022年春】

効能追加情報【2022年春】

今回は2022年春の効能追加情報をまとめました。

今期は不妊治療において使用されている医療用医薬品が保険適用になったため、多くの品目で効能追加となっています。薬剤名部分を色付きマーカーにしている薬剤は優先して把握しておいたほうがよいです。

なお、効能追加は通常先発医薬品のみであり、ジェネリック製剤は遅れて効能追加となるので、ジェネリックで効能が追加になるまでは新しい効能での用途でジェネリックを調剤してしまうのはNGであるため注意が必要です。

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①ネオーラル (シクロスポリン)

「細胞移植に伴う免疫反応の抑制」の効能が追加となりました。

これは再生医療等製品 「サクラシー」の細胞移植において、免疫反応抑制、炎症抑制のため必要に応じてシクロスポリンやシクロホスファミドを併用することが適当とされ、 それに合わせる形でネオーラルの効能が追加となりました。

サクラシーは「角膜上皮幹細胞疲弊症における眼表面の癒着軽減」を効能とする再生医療等製品です。

患者自身より採取した口腔粘膜上皮細胞を羊膜基質上に播種・培養して製造した培養自己口腔粘膜上皮細胞シートであり、角膜上皮幹細胞疲弊症に伴う眼表面の角膜及び結膜の癒着を解除し瘢痕組織を除去した後、露出した眼表面に「サクラシー」を移植することで口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、眼表面の異常を修復することを目的としています。

なお、今回効能追加となった「細胞移植に伴う免疫反応の抑制」に関する用法及び用量については、ネオーラル側の添付文書には具体的な記載がないため、「サクラシー」の添付文書(医療用医薬品ではなく、再生医療等製品の添付文書から検索)を確認する必要があります。

②エンドキサン錠(シクロホスファミド)

上記同様に「細胞移植に伴う免疫反応の抑制」の効能が追加となりました。

やはりエンドキサン側の添付文書には具体的な記載がないため、「サクラシー」の添付文書を確認する必要があります。

③ ジセレカ錠(フィルゴチニブ)

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤のジセレカに「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法 (既存治療で効果不十分な場合に限る)」 の効能が追加となりました。

タリージェ錠(ミロガバリン)

従来の「末梢性神経障害性疼痛」から「神経障害性疼痛」に効能が変更となりました。

これは中枢性神経障害性疼痛患者を対象とした臨床試験の結果より、中枢性神経障害性疼痛に関する有効性が確認されたことで、変更となりました。

これにより、末梢性に限らず中枢神経の損傷や障害によって生じる痛みにも使用可能となりました。

④フェマーラ錠(レトロゾール)

  「生殖補助医療における調節卵巣刺激」 の効能が追加となりました。

<用法及び用量(生殖補助医療における調節卵巣刺激)>
通常、成人にはレトロゾールとして1日1回2.5mgを月経周期3日目から5日間経口投与する。

十分な効果が得られない場合は、次周期以降の1回投与量を5mgに増量できる。

⑤スプレキュア点鼻(ブセレリン)

生殖補助医療における卵胞成熟 の効能が追加となりました。

<用法及び用量(生殖補助医療における卵胞成熟)>
左右の鼻腔に各々1 噴霧投与を 1 回投与(1 回あたりブセレリンとして計 300µg)とし、通常、採卵の 34~36 時間前に 2 回投与するが、患者の反応に応じて、投与回数は 1 回~4 回の範囲で適宜調節する。

クロミッド錠(クロミフェン)

乏精子症における精子形成の誘導の効能が追加となりました。従来の効能では女性が対象でしたが、この効能は男性が対象となります。

男性にも使われるということは薬剤師として認識しておいたほうが良いかと思います。

〈乏精子症における精子形成の誘導〉
通常、クロミフェンクエン酸塩として1回50mgを隔日経口投与する。

⑦ル・エストロジェル(エストラジオール) 

下記の効能が追加となりました。
〇生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
〇凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期 

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
通常、ル・エストロジェル1又は2プッシュ(0.9又は1.8g、エストラジオールとして0.54又は1.08mg 含有)を1日1回、21~28日間、両腕の手首から肩までの広い範囲に塗擦し、投与期間の後半に黄体ホルモン剤を併用する。


〈凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期〉
通常、ル・エストロジェル2~10プッシュ(1.8~9.0g、エストラジオールとして1.08~5.40mg含有)を1日1回、両腕の手首から肩、腹部、大腿部及び腰部の広い範囲に塗擦し、子宮内膜の十分な肥厚が得られた時点で、黄体ホルモン剤の併用を開始して、妊娠8週まで本剤の投与を継続する。

⑧ジュリナ錠(エストラジオール)

下記の効能が追加となりました。
〇生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
〇凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
通常、エストラジオールとして 1 日 1 回 0.5 又は1.0mg を 21~28 日間経口投与し、投与期間の後半に黄体ホルモン剤を併用する。

〈凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期〉
通常、エストラジオールとして 1 日 0.5~4.5mgを経口投与し、子宮内膜の十分な肥厚が得られた時点で、黄体ホルモン剤の併用を開始して、妊娠 8 週まで本剤の投与を継続する。なお、1 回投与量は 2.0mg を超えないこと。

⑨ディビゲル(エストラジオール)

  下記の効能が追加となりました。

●生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整、
●凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
通常、ディビゲル1mg(エストラジオールとして1mg含有)1包(1.0g)を1日1回、21~28日間、左右いずれかの大腿部もしくは下腹部に、約400cm2の範囲に塗布し、投与期間の後半に黄体ホルモン剤を併用する。

〈凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期〉
通常、ディビゲル1mg(エストラジオールとして1mg含有)2~4包(2.0~4.0g)を1日2回左右いずれかの大腿部もしくは下腹部に、1包あたり約400cm2の範囲に塗布し、子宮内膜の十分な肥厚が得られた時点で、黄体ホルモン剤の併用を開始して、妊娠8週まで本剤の投与を継続する。

⑩エストラーナテープ0.72 mg、0.36 mg(エストラジオール)

下記の効能が追加となりました。 規格により追加となった効能が異なります。

○エストラーナテープ 0.72mg:生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
○エストラーナテープ 0.36mg、0.72mg:凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
通常、エストラジオールとして 0.72mg を下腹部、臀部のいずれかに貼付し、21~28日間、2日毎に貼り替え、投与期間の後半に黄体ホルモン剤を併用する。

〈凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期〉
通常、エストラジオールとして 0.72~5.76mg を下腹部、臀部のいずれかに貼付し、2 日毎に貼り替え、子宮内膜の十分な肥厚が得られた時点で、黄体ホルモン剤の併用を開始して、妊娠8週まで本剤の投与を継続する。

⑪ジェミーナ配合錠(レボノルゲストレル・ エチニルエストラジオール)

生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整の効能が追加となりました。

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
1日1錠を毎日一定の時刻に、通常、14~28日間連続経口投与する。

⑫ルナベル配合錠LD・ULD(ノルエチステロン・エチニルエストラジオール)

生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整の効能が追加となりました。

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
1日1錠を毎日一定の時刻に、通常、14~21日間経口投与する。

⑬ヤーズフレックス配合錠(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール ベータデクス)

  生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調 整の効能が追加となりました。

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
1 日 1 錠を、通常、14~28 日間連続経口投与する。

⑭ヒスロン錠(メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)

 下記の効能が追加となりました。

〇生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
〇調節卵巣刺激下における早発排卵の防止

殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整〉
メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして、通常成人1日2.5~15mgを1~3回に分割経口投与する。

〈調節卵巣刺激下における早発排卵の防止〉
メドロキシプロゲステロン酢酸エステルとして、通常、月経周期2 ~ 5日目より1日10mgを1又は2回に分割経口投与する。患者の状態により1日5mgまで減量できる。

⑮デュファストン錠(ジドロゲステロン)

下記の効能が追加となりました。

〇生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整
〇調節卵巣刺激下における早発排卵の防止

〈生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の整〉
ジドロゲステロンとして、通常成人1日 5~15mg を1~3 回に分割経口投与する。子宮内膜症には 1 日5~20mg を経口投与する。

〈調節卵巣刺激下における早発排卵の防止〉
ジドロゲステロンとして、通常、月経周期 2~5 日目より 1 日 20 ㎎を 1 又は 2 回に分割経口投与する。

⑯バイアグラ錠・シアリス錠

勃起不全による男性不妊の治療を目的で処方された場合にのみ、保険適用の対象となりました。これに伴い薬価基準収載され薬価が設定されました。

従来の用途では保険適用にならず、保険適用の対象となるのは勃起不全による男性不妊の治療を目的として一般不妊治療におけるタイミング法において用いる場合であり、【令和4年3月25日 保医発0325第7号 厚生労働省保険局医療課長通知「不妊治療で使用される医薬品の保険給付上の取扱いについて」】の要件を満たした場合に限り算定できるとされています。

要件については通知に処方する医師の要件などを含んだ7項目が記載されています。どのような要件があるかは、一度は目を通しておくとよいと思います。(参考部分をご参照ください)

項目のうち下記の2項目は薬剤師として覚えておく必要があるかと思います。
保険で処方されているにもかかわらず、処方量が4錠を超えていたり、備考欄に保険診療である旨の記載がない場合は疑義照会対象となるかと思います。

また、保険適用となったのは先発品のみであるため、ジェネリック製剤にも適用となるまでは、ジェネリックに変更することはNGであり、処方がジェネリックで出ている場合は疑義照会して先発品に変更する必要があります。

薬価基準の一部改正に伴う留意事項について(一部抜粋)

5) 本製剤の投与にあたっては、その数量は、1回の診療につき、タイミング法における1周期分に限り、かつ、4錠以下であること。

7)本製剤を保険診療において処方する場合、処方箋の備考欄に、保険診療である旨を記載すること。

従来の用途の場合は薬価がつかない

薬価収載されたので勘違いしやすいですが、この薬価はあくまで保険適用の場合のものであり、保険適用でない従来の用途の場合にはこの薬価対象外であるため、従来通り薬局が値段を決めることとなります。

バイアグラは包装が2種類となるので複雑

個人的には必要性に疑問がありますが、薬価収載に伴いバイアグラでは従来の「薬価基準未収載品の包装」に加えて、「医療保険適用品の包装」が6/27に発売する予定のようです。

製薬会社に確認したところ、外箱のみの違いのようで、外箱の表示部分に「医療保険適用品」といったシールが張られた製品のようです。

この製品の発売前は、既存の薬価基準未収載品を保険診療でも使用することができますが、「医療保険適用品」の包装の発売後は用途に応じて下記のように包装を使い分ける必要があり、どちらの用途でも処方が出るなら、両方の包装を在庫しておく必要があるとのことでした。

<医療保険適用品発売前
・既存の「薬価基準未収載品」を保険処方でも使用可能

<医療保険適用品発売後
・保険処方⇒医療保険適用品を使用する
・自費処方⇒薬価基準未収載品を使用する

ただし、保険処方が来た場合に薬価基準未収載品が余っている場合は払い出せるが、次回注文の際は医療保険適用品を注文するようにとのことでした。

このあたりの部分は、販売後に変動する可能性があるので、実際に処方が来た際に製薬会社に確認することをお勧めします。

なお、シアリスは特に新たな包装をださないので、既存品でどちらの処方にも対応できます。

参考
不妊治療で使用される医薬品の保険給付上の取扱いについて(令和4年3月25日保医発0325第7号)

⑰プロゲステロン経腟製剤

「生殖補助医療における黄体補充」を効能とする下記のプロゲステロン経腟製剤も、不妊症治療保険適用にともない薬価基準収載されました。


・ルテウム腟用坐剤
・ウトロゲスタン腟用カプセル
・ルティナス腟錠
・ワンクリノン腟用ゲル

⑱ロゼックスゲル(メトロニダゾール)

「酒さ」の効能・効果が追加になりました。

従来の効能は「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」であったため調剤頻度は少なかったかと思いますが、今後は「酒さ」の用途として、クリニックの皮膚科から処方されてくる可能性があることは認識しておいたほうが良いかと思います。

外用薬ですが、メトロニダゾール内服製剤と同様に妊娠3ヵ月以内は禁忌であり、アルコールは併用注意に記載されているので飲酒は避けるよう指導する必要があります。

なお、これはゲル製剤特有の注意点ですが、紫外線照射により不活性体に転換され、効果が減弱することがあるので、日光等による紫外線曝露を避けることとされています。

⑲リンヴォック錠(ウパダシチニブ)

ヤヌスキナーゼ阻害薬のリンヴォックに「既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎」の効能が追加となりました。

なお、同時期に添付文書も改訂になっており、グレープフルーツが併用注意に追記されたので、今後はグレープフルーツを避けるように指導する必要があります。

⑳ツートラム錠(トラマドール)

従来の効能である「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な慢性疼痛における鎮痛」に加えて、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」の効能が追加となりました。

DSU等の解説
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