2022年春の新薬承認品目のなかから薬局薬剤師に関係がある薬剤の概要をまとめました。
品目数はそれほど多くなく、おそらく調剤頻度もそれほど多くはないかと思いますが、クラリスロマイシンとの相互作用がある薬剤もあるため薬剤師として認識しておいたほうがよいかと思います。
①カログラ錠(カロテグラストメチル)
「中等症の潰瘍性大腸炎(5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な場合に限る)」を効能とする世界初の経口投与可能なα4インテグリン阻害剤です。
炎症性細胞表面に発現するα4β1インテグリンとα4β7インテグリンのどちらにも作用し、潰瘍性大腸炎患者様の大腸粘膜病変部位に認められる炎症性細胞の過度な集積・浸潤を抑制することにより、抗炎症作用を発揮すると考えられています。
投与期間制限がある
効能は異なりますが、他のインテグリン拮抗薬であるナタリズマブにおいてPML(進行性多巣性白質脳症 )の発現が報告されています。
カログラでもPML発現リスクを低減するため、「維持療法のために投与しないこと」され、投与期間は6ヵ月までとし、6ヵ月以内に寛解に至った場合はその時点で投与を終了することとされています。
また、妊婦は禁忌であり、 妊娠可能な女性には本剤投与中及び投与終了後一定 期間は適切な避妊を行うよう指導することとされています。
②ケレンディア錠(フィネレノン)
「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く」を効能とする非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド拮抗薬です。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬による治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与することとされています。
また、eGFRが60mL/min/1.73m2 以上か、未満かで開始用量が異なっており、投与後も血清カリウム値及びeGFRを測定し、その値によって用量調節基準があります。
<用法及び用量>
通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。・eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mg
・eGFRが60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。
ちなみに、10mg錠と20mg錠の規格がありますが、生物学的同等性は示されていないため、20mgを投与する際には10mg錠を使用しないことされているので注意が必要です。
Cardio、Renal、Diabetesから命名されています。
クラリスロマイシンなどと併用禁忌
なお、ケレンディアはCYP3A4により代謝されるため、クラリスロマイシンなどが併用禁忌となります。
新薬との相互作用は当面は新薬側の添付文書にしか記載がないため、片方だけ(クラリスロマイシン側)しか見ていないと見落としてしまうため注意が必要です。
③ジスバルカプセル(バルベナジン)
「遅発性ジスキネジア」を効能とするVMAT(小胞モノアミントランスポーター)2阻害剤です。中枢神経系の前シナプスにおいて、モノアミンの貯蔵及び遊離のために細胞質から シナプス小胞へのモノアミンの取込みを制御しているVMAT2を選択的に阻害することで、遅発性ジスキネジアにおける治療効果を発揮すると考えられています。
強いCYP3A阻害剤もしくは強いCYP2D6阻害剤を使用している場合はジスバルの最大用量が制限されます。そのため、使用している用量によってはクラリスロマイシンなどが実質使用できなくなるため見落としに注意が必要です。
<用法及び用量に関連する注意>
以下の患者では、活性代謝物の血漿中濃度が上昇し、QT延長等の副作用を発現するおそれがあるため、本剤40mgを1日1回投与とし、増量を行わないこと。
・遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)
・中等度以上の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラス:B又はC)
・強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン等)を使用中の患者
・強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を使用中の患者
なお、中程度以上のCYP2D6阻害剤と中程度以上のCYP3A阻害剤の両方を使用中の患者は本剤との併用は避けること、とされています。
ジスキネジアをバルベナジンで治療するから命名されています。
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